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はすにらみTRIZ

オープンタスク

閑話休題

2015年のオープンタスク

12月のオープンタスク (2) : パスワード

インターネットが普及し、それを通じたサービスを利用する機会がますます増えています。大変便利なのは確かですが、利用する上でひとつ問題になるのが大抵のサービスでパスワードの設定を求められることです。頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。

パスワードのイメージ記憶のためには、あらゆるサービスで同一のパスワードを設定するのが最も簡単ですが、それではセキュリティ上の問題があります。あるサービスでパスワードが漏れてしまうと、他のすべてのサービスでもそれを悪用される危険が出てきます。

かといってそれぞれに別のパスワードを設定すると、すべてのパスワードを記憶するのが大変ですし、サービスごとにどのパスワードにしたのかも覚えておかなくてはなりません。

記憶しやすく、かつ、安全性の高いパスワードを考えるのも立派なオープンタスクです。下記の本には、この点で納得のいく方法が紹介されています。もちろんこの本で紹介されている以外にも良い方法があるかもしれません。

考えてみてください。

武山知裕『個人情報 そのやり方では守れません』青春新書インテリジェンス、2013年 より

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12月のオープンタスク (1) : 誤解

1960年代の中ごろのことです。心理学教授のカーネマンは空軍の飛行教官に行動修正の理論とその飛行訓練への応用について講義することになりました。彼は、前向きな行動に報酬を与えることは効果を上げるが、失敗を罰することはそうでないことを丁寧に説明しました。ところが、飛行教官たちの意見は次のようなものでした。 飛行訓練

  • 「私は見事な操縦をした訓練生を褒めてきましたが、すると次回は決まって悪くなります。一方、下手な操縦をした訓練生は怒鳴りつけてきましたが、おしなべて次回は操縦が改善されます。ですから、教授の説明は私の経験と合致しません。」

動物実験の結果は報酬は罰よりもうまくいくことをはっきりと証明していますし、飛行教官の経験は真実だと思われます。

教授はこの矛盾について考え、教官が自分の経験とカーネマンのとなえる理論とが一致しないと考える背景には1つの誤解があることに気づきました。その発見は教授ダニエル・カーネマンが2002年にノーベル経済学賞を受賞することになる研究のきっかけになったと言われます。

さて、教授が発見した教官たちの誤解とはどんなことでしょうか。

レナード・ムロディナウ著、田中三彦訳『たまたま:日常に潜む「偶然」を科学する』ダイヤモンド社、2009年、pp.12–14 より

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11月のオープンタスク (2) : 伊能忠敬の工夫

伊能忠敬は「寛政12年(1800年)から文化13年(1816年)まで、足かけ17年をかけて全国を測量し『大日本沿海輿地全図』を完成させ、日本史上はじめて国土の正確な姿を明らかにした」ウィキペディアより)ことで有名ですが、今回は忠敬が測量を正確に行うために用いた工夫についての出題です。

測量は海岸線や街道の曲がり角などの目印となる地点を選び、2つの地点間の距離およびそれを結ぶ線の北からの角度(方位角)をひとつひとつ計測していくかたちで行いました。これを道線法と呼びますが、この方法はどこまでも繰り返していくと、小さな誤差が積み重なり、最終的には大きな誤差が出てしまうという欠点があります。そこで、要所要所で天文観測を行ったり、遠くの山の観測を行うなどして誤差を修正する作業を行うのですが、その他にももうひとつ、目印となる場所選びにも工夫が凝らされました。

目印とする場所をどのように選べば、観測の誤差に気づき、修正することができるでしょうか? 100%の正確性を期すのは大変困難なことですから、ここでは、実質的に十分な正確性を得るために有効な方法を考えてみてください。三角点のイメージ

山岡光治『地図の科学:なぜ昔の人は地球が楕円だとわかった? 航空写真だけで地図をつくれないワケは!?』サイエンス・アイ新書、2010年、pp.42–43 より

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11月のオープンタスク (1) : 家畜になった動物とならなかった動物

牛家畜は人間の社会で大きな役割を果たしてきました。とりわけ大型哺乳類の家畜(主要な5種:羊、ヤギ、牛、豚、馬。マイナーな9種:ヒトコブラクダ、フタコブラクダ、ラマ/アルパカ、ロバ、トナカイ、水牛、ヤク、バリ牛、ガヤル)は人類の歴史に甚大な影響を与えました。

しかし、上に挙げた14種以外には人々が20世紀までに家畜にした大型哺乳類がいなかったように、全ての野生動物から家畜を作ることができたわけではありません。ラマとアルパカと売り子のイメージある研究によればアフリカ大陸のサハラ砂漠以南の地域には家畜化可能な哺乳類(ここでは、平均的な体重が100ポンド以上の草食性または雑食性の陸生哺乳類と定義されています)が51種も生息していたのに、そこに住んでいた人々はそれらの動物からただ一種の家畜を作り出すこともありませんでした。特に意外なのは、親類筋に当たる動物がユーラシア大陸では家畜化されたのに、この地域では家畜にならなかった例が多数あることです。

トナカイこのように、野生動物が家畜化されたり、されなかった理由は何でしょうか。ジャレド・ダイアモンドという学者は「家畜にすることができた野生動物には6つの特徴がある。そのうちの1つでも欠けていた動物は家畜化されなかった。」という趣旨の説明をしています。ダイアモンドの挙げる6つにこだわる必要はありませんが、合理的な理由を幾つでも、考えてください。

注:

  1. 人々は野生の動物を飼育し、餌や交配をコントロールしながら選別的に繁殖させて、自分たちに役立つ動物を作り出してきました。ここでは、そうして作られた動物を家畜と定義します。例えば、飼いならした野生の象は家畜とは考えません。
  2. ここでは、大型哺乳類の家畜化についてだけ考えてください。
  3. 家畜化された動物の内の主要な5種について言えば、これらの動物がユーラシア大陸からサハラ砂漠以南のアフリカ地域に伝わった時にはこの地域の人々も事情の許す限り速やかに家畜として飼育し始めていますので、家畜化された・されなかった理由が人々の文化の違いにあったと考えることはできません。また、数千年のスパンの歴史について考えることになりますので、その地域の人々が近辺に生息していた動物について十分な知識を持っていなかったという理由も除外してください。

ジャレド・ダイアモンド著、倉骨彰訳『銃・病原菌・鉄』上、草思社文庫、2012年、pp.289–325 より

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10月のオープンタスク (2) : 地球の大きさ

アレクサンドリア市街数学や天文学は随分古い時代から驚くほど研究が進んでいたことはよく知られています。例えば古代バビロニアでは紀元前2000年前後にすでにかなり正確な円周率が使われていました。また、古代ギリシアには、すでに太陽の周りを地球が回るあるいは地球は丸いと唱える学者もいました。実際、紀元前2–3世紀にギリシア科学の中心地だったエジプトのアレクサンドリアのある学者は約15%の誤差で地球の大きさを算出しています。

当時の状況を想定して複雑な装置を一切用いずに地球のおおよその大きさを算出する方法を提案してください。もちろん、アレクサンドリアの学者と違う方法でもかまいません。

池内了『知識ゼロからの科学史入門』幻冬社、2012年 他より

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10月のオープンタスク (1) : 歴史的建造物

易しすぎるかもしれませんが、アルトシューラが取り上げている問題を1つ紹介します。問題が作られた1980年代の技術を前提とした答えも考えてみてください。

街の中の塔のイメージ街の中心部に古い石の塔が建っています。ところが最近、塔の下の地盤が沈下している恐れがあることがわかりました。実際に塔が沈下しているのか確認したいと思います。

測量器を使って確認するには地盤沈下を起こしていない硬い地盤が必要です。ある期間をおいて2度測量して比較しその間に沈下が進んでいないか確かめることになります。塔から約300m離れた公園の中に低い岩山があってそこの地盤はしっかりしていることが確認されていますから、この岩山を基準として沈下を確認したいと思います。しかし問題があります。塔の立っている広場は高い建物に囲まれているため、基準とした岩山からは塔が見えないので測量器が使えません。

塔が沈下しているか否かどうやって確認したらいいでしょうか?

Альтшуллер Г.С. Найти идею. Введение в теорию решения изобретательских задач.— Новосибиpск: Наука, 1991 (2-е издание), с. 157.(G.S.アルトシューラ『アイデア発見:TRIZ入門』、1991年(第2版)、p.157)より

9月のオープンタスク (2) : タカvs.スズメバチ

スズメバチの巣のイメージアジアに広く住むツマアカスズメバチというスズメバチがいます。働きバチの体長は約2センチ、生息範囲を急激に拡大しつつある、養蜂業に大きな被害をもたらす、人を刺す事故も多発するなど危険な生物です。高い木の上に長さ1m以上ともなる唾で固めた頑丈な巣を作ることが多く、駆除しにくいこともこのスズメハチの困った点です。

ところがツマアカスズメバチの巣を好んで攻撃するハチクマというタカがいます。ツマアカスズメバチは強い顎で敵を噛むことができますし、毒を持った針で刺して攻撃をしますが、その攻撃に対策を講じながら群れで襲って巣に傷をつけ、中の幼虫や蛹を食べてしまいます。

タカのイメージツマアカスズメバチは近年ヨーロッパでも生息域を拡大しています。日本では対馬にのみ住むとされていましたが、2015年9月に北九州市で巣が発見されたと報じられました。ツマアカスズメバチの繁殖を防ぐ意味でもハチクマに学びたいところです。

さてハチクマはどのような手段でツマアカスズメバチの攻撃から身を守り、どのようにしてハチを巣から撃退して中の幼虫や蛹を手に入れているのでしょうか。ハチクマが使っている手段を複数考えてください。スズメバチの攻撃を防ぐ身体の特徴、巣を攻撃する方法、中にはまだ詳細に解明されていない魔法めいた方法も使っていると考えられています。それぞれについて考えてください。

NHK、テレビ番組「ダーウィンが来た」、2008/09、他より

注意:写真はフリー素材サイトでそれぞれ「スズメバチ」、「タカ」と検索して見つけた写真であり、おそらくツマアカスズメバチ、ハチクマという特定の種のものではないと思われます。

9月のオープンタスク (1) : 保険のかからない客先への大口与信

あなたは大手A商社の課長です。取引先であるX国の天然資源関連企業B社は過去数年のあいだ毎年日本やアメリカの会社から大量の設備を購入してきましたが、今年も大きな引き合いを寄せてきました。X国は近年経済の状態が不安定なため日本政府の貿易保険の対象外です。このため、B社との過去の契約は全て現金決済でしたが、同社は過去の実績を背景として今年は5年の延払いでの契約を希望しています。X国は経済の基盤が弱いものの政情は安定していますし、B社の事業も安定しているように思われるため、あなたは与信したいと考えています。一般的には与信が不可能な状況でA社が与信に踏み切れば、アメリカの企業との競合上極めて有利な立場に立つことができますし、設備の仕入れ先である大手メーカーが他の商社を経由してB社と契約するおそれは無くなります。

石油のイメージとはいえ、長期の与信ですからB社から何らかの担保を出してもらわなくてはなりません。ただし、自然状態の天然資源そのものや、採掘権・伐採権などの権利を担保とすることには制度上の制約があります。

知恵を絞って、与信を実現する方法を考えてください。

管理人の経験より

8月のオープンタスク (2) : パロディーの翻訳

アリスの庭園のイメージイギリス人ルイスキャロルの書いた「不思議の国のアリス」(初版1865年)はロシアでも大変人気があります。1879年の初訳以来、何度もロシア語に翻訳され多くの人に親しまれる定訳がありました。しかし文学研究者のナターリア・ジムーロヴァは従来の翻訳では原作のもつ言葉遊びの面白さが十分に表現できていないと考えて1967年に新しい翻訳を出版しました。

それまでの翻訳が克服できなかった難しさのひとつは、イギリス人なら子供のころから知っている詩にもとづくパロディー詩の数々です。ところが、子供はもちろんのことほとんどのロシア人は元々の詩を知りませんから(従来の定訳のような)単なる翻訳ではパロデイーが成り立たないのです。この部分だけ、よく知られたロシア詩のパロディーに置き換えてしまうことも考えられますが、それでは物語のイギリスらしさが失われてしまいます。

ジムーロヴァは、どうやってこの困難を克服したと思いますか?

英語やロシア語の知識を必要としないアイデアをさがしてください。

B.ズローチン、A.ズスマン「ファンタジーの星の下での一ヶ月:創造的思考のサマースクール」、4日目問題7 および

Наталья Демурова, «О переводе сказок Кэрролла». [http://carroll.co.ua/o-perevode-skazok-kerrolla/blog.html]
(ナターリア・ジムーロヴァ「キャロルの作品の翻訳について」)より

8月のオープンタスク (1) : フリーザーバッグ

フリーザーバッグフリーザーバッグや小物部品袋などとして使われている、ポリエチレンなどで作られた密封式の袋を作る方法を提案してください。製品にするまでのアイデアが分からなくても、部分的に使えるアイデアがある場合には、それを提案してください。色については考えなくても結構です。密封部分を含めて無色透明の製品として考えてください。

  1. ヒント1.フリーザーバッグを実際に手にとって構造を観察してください。
  2. ヒント2.溶けたポリエチレンの樹脂を金型の細い隙間から押し出し、温度などを調整して金型を通る間に樹脂が固まるようにすればポリエチレンのフィルム(膜)を作ることができます。

ヘンリー・ペトロスキー『ゼムクリップから技術の世界が見える』平凡社ライブラリー、2010年、pp.128–130 より

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7月のオープンタスク (2) : 河の深さ

大河軽飛行機川幅の広い大河があります。流れは穏やかです。河の上を飛ぶ飛行機から深さを測りたいと思います。方法を提案してください。手に入りやすい道具を使ったコストの安い方法が望まれます。

Альтшуллер Г.С., Фильковский Г.Л. Современное состояние теории решения изобретательских задач, 1975
(アルトシューラ、フィルコーフスキー『TRIZの現況』)より

7月のオープンタスク (1) : ハーゲンベック動物園

野生動物を扱う商人だったカール・ハーゲンベックはそれまでにない新しい動物園を作ることを計画しました。動物たちが広い屋外で自由に生活する「無柵放養式展示」を行う世界で最初の動物園です。しかし、これには難問が1つあります。動物が逃げ出したり、猛獣が見物客を襲ったりしないようにする必要があります。大きな堀を作って人が歩き回る外部と動物の居住区とのあいだを遮断すれば良いのですが、堀の幅が広くては見物客に動物がよく見えません。高く頑丈な柵を作っても同じ問題があります。しかしカールには動物サーカスを経営した経験があり動物の能力をよく知っていたのでうまい解決策を発見しました。こうして1907年に開園したがのハンブルグ近郊に今もあるハーゲンベック動物園です。

ライオンさて、見物客が猛獣に襲われる危険なしに比較的近い距離から動物を観察できるようにした工夫とはどんなものだったでしょうか。複数のアイデアを組み合わせてください。なお、1907年にはまだ自動車は一般的な乗り物ではありませんでした。

http://www.trizland.ru/study/podcasts/casts/2573/ より

(内容に手を加えました)

6月のオープンタスク (2) : 部外者にいじられたくないネジ

ネジこれはよく知られたオープンタスクです。技術者のみなさんの中には答えをご存知の方も多いと思いますから、答えを知らない人に向けた問題です。

部外者にいじられたくないネジがあります。このニーズを背景として、次の条件を満足するネジの頭のデザインを考えてください。

  1. どんな大きさのマイナスドライバーでも緩めることができない。
  2. 頭には溝あるいは凹みがあって、専用の道具を使えば閉めたり緩めたりできる。

ヘンリー・ペトロスキー『フォークの歯はなぜ四本になったか』平凡社ライブラリー、2010年、pp.82-83 より

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6月のオープンタスク (1) : 商談と社長の呼び出し

あなたは某社の部長です。社内で取引先と重要な商談をしている最中に社長から呼び出しがありました。商談の相手はあなたが是非とも契約を結びたい取引先で、難しい条件をなんとか受け入れてもらう瀬戸際の交渉の真っ最中です。

先方の当事者は実力者の役員で気難しいことで有名です。社内の事情で商談を中断すれば、せっかく説得されかかった相手が気を変えてしまう恐れがあります。

一方、あなたの会社の社長は呼び出した社員が5分以内にやってこないと怒り出す短気な人物で、出向くのが遅くなって左遷されたと噂される部課長は枚挙にいとまありません。

さあ、どうしましょうか?

5月のオープンタスク (2) : 地球外生命との交信

宇宙地球外の知的存在に宛てて、人工的だと気づいてもらえる電磁波を発信して接触のきっかけを作りたいと思います。どんなものを送ったら良いでしょうか。

ПАРАДОКС Аэлиты, или Необходимость видеть физические противоречия и не отступать перед ними/Г.С. Альтшуллер//ТиН. — 1980, № 2. — с.29
(アルトシューラ「火星の女王のパラドックス:物理的矛盾を見つけて立ち向かおう」、『技術と科学』誌)より

2015年5月のオープンタスク (1) : 針金の直径

計測器具として使えるものがまっすぐな物差ししかない時に、細い針金の直径を計る方法を考えてください。(計測器具でない)簡単に手に入る身の回りのものは使っても構いません。

Теория и практика решения технических задач/Ревенков А.В., Резчикова Е.В. — 2-е изд. — М.: ФОРУМ, 2009. — с.17
(レヴェンコフ、レスチコーヴァ『技術問題解決の理論と実際』)より

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