この論文は The Official G.Altshuller foundation の許可に基づいて掲載されたものです。(下記のURLはファウンデーションのサイトにリンクされています。書誌詳細はページ末尾)
This paper was published with the permission of the Official G.Altshuller foundation: www.altshuller.ru/world/eng/index.asp.
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模範的方法のリストは技術者が日常的に使う一種のハンドブックです。といっても、独特のハンドブックで、技術者はこのリストを基礎とし、新しい技術・特許に関する出版物を参考にして自分で補充してゆかなくてはなりません。
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訳注1:一般的な日本語訳は英語からの再訳で「40の発明原理」とされています。ここではロシア語の語義に近い訳語をあてました。なお、模範的方法のリストには複数のバージョンがあります。アルトシューラ・ファウンデーションのサイトに掲載されている本バージョンはアルトシューラの初期の主著『発明のアルゴリズム』の1973年版に掲載されているものです。
例
USA特許No.2859791。12の独立した部分に分かれているタイヤ。
タイヤを部分に分けたのは信頼性を向上させるためです。しかし、このように大胆な改良が採用された理由はそれだけではありません。分割は現代の工業製品の進化に見られる主要な傾向の1つなのです。
追加の例
発明者証No.168195[訳注2]。円弧状のカッティング・エッジがついたエキスカベータのバケット。特異点:交換に要する時間を短縮し、作業を容易にするためにカッティング・エッジを取り外し式にし、かつ、いくつかに分割する。
発明者証No.184219。鉱山での装薬による岩盤の連続破砕の方法。特異点:岩を細かく破砕するために装薬を小単位に分けて表層の連続破砕を行う。
訳注2:この文書では例として多数の発明者証の内容が紹介されていますが、下記のウェブサイト(旧ソ連特許データベースサイト)で原文が確認できます;
同ウェブサイトでは、上部の灰色の欄に発明者証の番号を入力し、右の 「Поиск(検索)」ボタンを押すと、関連ページが一覧表示されるようになっています。
ただし、当ページで紹介している発明者証番号を入力しても、当該の書類を同ウェブサイトで見つけられない場合もあります。
例
発明者証No.153533。X線防護具。特異点:X線撮影の際に患者の頭、肩帯、脊椎、脊髄、生殖腺を電離放射線から保護するために、例えば胸部の撮影の際には、当該部位に対応するX線を不透過性のバリヤーで防ぐ。
このアイデアが合理的なことは明らかです。
この発明は照射によって最も深刻な悪影響を受ける部分を取り出してその部分を覆っています。この特許の申請は1962年に行われましたが、必要かつ実施が容易な発明ですから、はるかに早い時期に申請されてもよかったはずです。
私たちは様々な物体を捉える際に、習慣的に一体でお互いに引き離すことの出来ないまとまりとして見てしまっていることがあります。例えばヘリコプターというまとまりには燃料タンクが含まれています。実際、普通のヘリコプターは燃料を運ばないわけにはゆきません。
しかし、決まったコースを飛行するヘリコプターでは燃料を地上に置いておくことも可能です。電動ヘリコプターでしたら、エンジンの替わりにモーターを使うわけですから燃料タンクは不要です。
発明者証No.257301では〈タンク〉に相当するものが人間から取り外されています。(図9[訳注3]参照)
抽出の原理:以前、坑内の緊急救護隊員は冷却装置を背負って動き回っていましたが、現在は冷却装置は身につけるのではなく別置き式になっています。
訳注3:図の番号は原文のママです(『発明のアルゴリズム』1973年版の図番です)。
追加の例
鳥がエンジンや機体に衝突して大きな航空機事故の原因となることがあります。USAでは飛行場から鳥を追い払う方法について数多くの特許があります(機械仕掛けのかかし、ナフタリンの散布、などなど)。最も効果があったのは驚いて鳴く鳥の声を録音しておいて大音量で放送する方法でした。
鳥から鳴き声を取り出すという解決策はもちろん日常的な発想ではありません。しかし、抽出の原理としては典型的な適用例です。
例
発明者証No.256708。鉱山の切り羽の粉塵を抑える方法。特異点:切り羽で発生した粉塵が換気の流れに乗って坑内に拡散することを抑えるために水で細かい霧を発生させることと通常サイズの散水とを併用する。その際、コーン状に発生させた霧の周囲を散水の水滴で覆うようにする。
発明者証No.280328。米粒の乾燥法。特異点:米粒のひび割れを減らすために乾燥する前に米粒を大きさによって分別し、大きさごとに別の基準によって乾燥する。
部分的性質の原理は様々な機械の進化の歴史の中に見てとることができます。機械は徐々に部分に分かれ、各部それぞれについて最適の状態が形成されてきました。
最初の蒸気機関はシリンダーだけで、それがボイラーとコンデンサーの役割も果たしていました。シリンダーの中に直接水を入れます。火を使ってシリンダーを熱すると水が沸騰し、蒸気がピストンを押し上げます。すると火床を取り除き、シリンダーの中に冷水をまきます。蒸気が凝結して、大気の圧力でピストンが下がります。
次の世代の発明家が蒸気機関のシリンダーからボイラーを分離することを思いつきました。これによって燃料消費が大きく減少しました。
しかし、ボイラーで作られた蒸気は相変わらずシリンダーの中で凝結させていて、これが燃料の膨大な浪費につながっていました。次の一歩が必要です。シリンダーからコンデンサーを分離させることです。
このアイデアを発見し実行したのはジェイムス・ワットです。彼は次のように話しています:
あらゆる観点から検討した結果、私は次の結論に到達しました——完全な蒸気機関とするにはシリンダーの温度は入ってくる蒸気と同じ高温に常に保たれていなくてはならない。しかし、真空を作るには蒸気を30度以下にして凝結させなくてはならない——
グラスゴー近郊でのことでした。私は半日程散歩に出かけました。素晴らしい天気でした。蒸気機関について考えながら、旧い洗濯屋の傍らを通ってゲルダの家に近づいたとき、頭にアイデアが浮かびました。蒸気には流動性があるのだから何も無い所に向かって流れようとする。シリンダーと空気を薄くした容器との間に道をつけてやれば、蒸気はその容器に流れてゆく。そうすればシリンダーを冷やす必要は無くなる。ホフハウスに行きつく前に私の頭の中ではすべて決着がついていたのです。
『厳密な学としての創造性』、1979、p.85、ではこの方法を次のように規定しています:
多くの機械は初めて作られた時点では対称形をしています。これが機械というものの伝統的な形なのです。このため、対称形であることに関連して何らかの問題があって、対称を崩すことによってその問題を解決できる場合があります。
例
2つの口金の位置をずらした万力。通常のものと異なり、長尺の部品を縦方向に固定することが可能です。
自動車の2つの前照灯は全く同一の条件で役割を果たしているわけではありません。助手席側は明るく遠くを照らすことが必要ですが、運転席側は対向車の運転者の眼をくらませないように配慮が必要です。条件が異なっているのに長い間左右の前照灯に全く同じものが取り付けられていました。左右の前照灯を非対称にするアイデアが採用されたのは比較的最近のことです。運転席側は25m程度先の道を照らしますが、助手席側はこれよりずっと遠くを照らすようになっています。
USA特許No.3435875。非対称形のタイヤ。歩道の縁石と接触した場合の耐性を改善するためにサイドウォールの一方の側の強度を高くしてある。
発明者証No.242325。固体原料を側面から投入する鋳鉄溶解用電気炉。特異点:連続溶解を可能とするために底面が非対称に形作られ、原料投入口に向かって深く、広くなっている。(図10)
非対称の原理:電気炉の電極。原料を連続して投入できるように、投入口に近いところに空間が出来るように中央から外れた位置に電極が取り付けられている。
例
発明者証No.235547。ローターとアームからなるロータリー・エキスカベータの作業装置。特異点:凍土を掘削する際の負荷を軽減するために、土を加熱するためのバーナーが付けられている。バーナーは、例えば、ローターの両側の側面に取り付ける。(図11)
組み合わせの原理:ロータリー・エキスカベータで作業を行う際に、従来はあらかじめ凍土を加熱するためにエキスカベータを止める必要があった。エキスカベータのローターそのものにバーナーを取り付けた。
発明者証No.134155。沈没船内の空気だまりに取り残された人々を救出するために用いる潜水装置。特異点:潜水士による救出作業を容易にするために、潜水具は1つあるいは2つの潜水ヘルメットあるいはマスクとなっていて潜水士の潜水服に接続して空気を取り入れるためのホースとカップリングが取り付けられている。(図12)
組み合わせの原理が使われているもう1つの例
例
日本では石油精製能力をもったタンカーの建造が計画されました。これにより、原油の輸送中に精製を行うことが可能になります。
発明者証No.160100。タバコの葉などの原料を乾燥機まで水の流れに乗せて運ぶ搬送装置。特異点:搬送中に葉を洗浄し、葉の色出しをするため80–85℃に加熱した水で搬送する。
発明者証No.264466。誘電体基盤上に円筒形の薄膜をおきその上に記憶媒体を形成させたメモリー。特異点:記憶媒体の構造を簡素化するために薄膜自体に書き込み読み取りが出来る機能を持たせる。
例
発明者証No.186781。半波長単位の部品をつなぎ合わせて作る超音波凝縮装置。特異点:装置の長さを短くし、かつ、強度を得るために半波長分の部品を円筒形に作り、お互いに入れ子にする。(図13)
入れ子の原理:コンパクトな超音波凝縮装置。1と2は円筒になっている。
発明者証No.110596。粘度の異なる複数の石油製品を水に浮くフローティング容器内で保管・搬送する方法。特異点:粘度の高い製品の温度を低下させずに保管するために、フローティング容器中の粘度の高い製品を入れるセクションを、粘度の低い製品を入れるセクションの中に入れ子で配置する。
発明者証No.272705。タンクと左右の計量スクリューからなる施肥装置。特異点:施肥を行う幅を調整するために左右の計量スクリューはそれぞれ2つの部分に分かれて2つが入れ子になるようになっている。(図14)
もう1つの〈入れ子〉:左右の計量スクリューの間の幅を調整するために、つなぎ目を入れ子にする構造にしてある。
例
発明者証No.187700。油井掘削時に発射・爆破装置を降ろしたり引き上げたりする方法。特異点:発射・爆破のコストを下げ、作業を容易にするために、装置を降ろす際には自重によって自由落下するようにし、地上に挙げる際には装置に組み付けたジェットエンジンの力で上げるようにする。
巨大な発電用タービンを作った際にベアリングにかかるローターの荷重を最小限に引き下げる方法が検討されました。強力な電磁石を組み込んで磁力によってローターの荷重を相殺するという解決策が発見されました。
時によって、求められるのが逆の課題ということがあります。重量の不足を補う課題です。坑内で使用する電気機関車を開発する際には明らかな矛盾に直面します。牽引力を大きくするためには機関車の自重を大きくする必要があります。しかし、列車の総重量を減らすためには機関車をできるだけ軽くしなくてはなりません。レニングラード鉱山大学のグループはこの技術的矛盾を取り除き、機関車の生産性を1.5倍引き上げる装置を開発しました。動輪に強力な電磁石を取り付けて車輪とレールとを結びつける磁場を発生させるのです。車輪とレール間のグリップは大幅に向上する一方で、機関車の重量はむしろ軽くなりました。
『厳密な学としての創造性』、1979、p.86、ではこの方法を次のように規定しています:
事前反作用の原理
例
発明者証No.84355。タービンのディスクは加熱した半加工素材の段階でパレットに乗せて回転させます。加熱された素材は冷えるに従って縮小します。しかし(まだ展性を失っていない間は)回転による遠心力によって素材はプレスによって引き延ばすような力を受けます。十分に冷えると、素材の中に縮もうとする応力が生じます。
プレストレス・コンクリートの技術は全てこの原理に基づくものです。引き延ばし応力のかかる環境でコンクリートが良い性能を示すようにあらかじめ引き固めておくわけです。建設産業において機械産業よりも進んだ方法が使用されている例はこれ以外にも多数あります。機械産業で事前応力の仕組みが使用されている例はまだ極めてまれです。しかし、この原理を応用することによって大きな成果が得られる可能性があります。
外径を大きくしないでシャフトを頑丈にするにはどうしたら良いでしょうか。これに対する回答は図15に示されています。シャフトを何本ものパイプを重ねて組み合わせた構造につくり、それぞれのパイプには規定の角度だけねじりが加えられています。別の言い方をすると、シャフトはそれが実際に使用される時に起きる変形と反対向きの変形を予め加えられていることになります。使用時に外部から加わる力は、まず、事前に加えられている変形を打ち消し、そこから初めて〈普通の状態で〉加えることになる変形の力をシャフトにかけはじめる理屈になります。コンポジットシャフトの重量は同じ強度の通常の均一素材のシャフトに比べて半分です。
事前応力の原理:コンポジットシャフトを形作っているパイプはシャフトが使用される時に生じる変形と逆の向きに予めねじられてあります。
『厳密な学としての創造性』、1979、p.86、ではこの方法の名前は次のようになっています:
先取り作用の原理
例
発明者証No.61056。様々な果樹などで枝を地面にさす挿し木を行いますが、枝に十分な養分が蓄えられていないために根付かない枝が多数あります。当該の発明では、事前に養分を含む液につけて枝に養分を補給した上で挿し木を行います。
発明者証No.162919。ワイヤーソーを用いてギプスを取り外す方法.特異点:ギプスの取り外しの際に患者が傷つくことを避け、また、取り外しを容易にするために、ギプスを付ける際に適当な潤滑剤で潤滑を施したポリエチレン製などのパイプを予めギプスの包帯の下に入れておく。パイプにワイヤーソーを入れて身体の側から外に向かってギプスを切ってゆくことが出来るので、身体に傷をつける心配がない。
この原理が使用されている面白い例。木を伐採する前に行う木質への着色法。着色料が樹皮の下にまで沁み込み、樹液によって幹全体に運ばれます。
例
発明者証No.264626。添加剤を用いて化学化合物の毒性を低下させる方法。特異点:化学品および化学品が変化して生じる物質による毒害の危険を低減させるために、当初の化学品を生産する際に添加剤を加えておく。
発明者証No.297361。植物による遮断帯を設けて森林火災の広がりを避ける方法。特異点:遮断帯をつくる植物の耐火性を高めるために植物の燃焼を遅らせる物質を、生物学的に生じさせる、あるいは化学品として、土壌に含ませるようにする。
USA特許No.2879821。自動車のタイヤに硬い金属ディスクを組み込んでおき、タイヤがパンクした際にトレッドを傷つけずに走行を続けることができるようにする。
事前対策の原理は信頼性向上以外の目的でも利用することができます。原理の特徴を示す例として次のものがあります。米国の図書館で図書の紛失が頻発する対策として、発明家エマニュエル・トリキリスは本の装丁の中に磁気を帯びた金属片を隠しておくことを発案しました。貸し出しの際には図書館員が図書を専用の装置(電気の巻き線)にかざして金属片の磁気を消去します。来館者が手続きをしないで本を持ち出そうとすると入り口に設置した磁気感応装置が帯磁した金属片に反応します。
スイスの山岳救助ステーションではクレバスに落ちた人を早期に発見するために同様の方法を用いています。現在ではスキー客やクレバスの多い地域の住人は小さな磁石を身につけています。検知装置は3メートルの積雪があっても磁石を検知するので事故発生時に遭難者の発見が容易になります。
例
発明者証No.264769。プレス金型の交換装置。この装置ではプレス機械のテーブルに組み付けた回転リングに金型を搭載するようになっている。
発明者証No.110661。コンテナを荷台に載せず、油圧装置で持ち上げて支持ブラケットに固定するタイプのコンテナ運搬車。この車はクレーンを必要とせず、また、通常より背の高いコンテナを運搬することができる。
例
発明者証No.184649。研磨性環境で振動によって金属製品を研磨する方法。特異点:研磨作業を容易にするために金属製品自体を振動させて研磨のための振動を発生させる。
発明者証No.109942。この発明は肉厚の薄い大物部品を鋳造で成型する際の難しい問題を解決している。こうした部品の鋳造では湯は上から鋳型に注入して金属の硬化は下から上に積上ってゆくことが望ましい。湯は上部から雨が降るように鋳型に流し込まれることになるが、投入時の落差は15cm以内でなくてはならない。これを越えると湯の金属が燃焼してしまう、あるいは、金属にガスが混入することになる。それでは、鋳型の高さが2−3mある場合にはどうすればよいか。鋳型の下側から湯を注入するとはじめに入れた湯がその場で硬化してしまい、鋳型の上まで上がってゆかない。
発明家はこの問題を簡単な方法で見事に解決しています:鋳型の底まで達するパイプを通して湯を流し込みます。底に湯が溜まるに従って鋳型が下がってゆくようにします。こうすることによって、湯はそこで硬化して金属になってゆく高さに次々と流し込まれることになります。
逆の原理:鋳型に湯を注入する通常のやりかたと異なり、鋳型の方が動きます。鋳型に注入される湯の方は注入された位置から移動しません。
鋳物をつくる際には、通常、金属の方が流れて動き、他方で鋳型の方は固定されています。上の例ではこれが全て反対になっています。鋳型の方が動いて、そこに注入された金属は動きません。これによって「両立不可能なことを両立させている」のです:鋳型に湯を安定して注入することと、湯を鋳型に流し込む場合と同じように金属が下から順に硬化してゆくことと。
例
ドイツ連邦特許No.1085073。パイプ同士を溶接してパイプの格子を作る装置。金属の小さな球を回転させて、それが電極の役割を果たす。
発明者証No.262045。岩盤破砕用電極を備えたトンネル掘削機の作業機。特異点:硬い岩盤を破砕する効率を高めるために、破砕用電極は絶縁された軸の回りを自由に回転する断面がくさび形になったプーリー状に作られている。
発明者証No.260874。摩耗したタイヤのトレッドなどのゴムからコードのワイヤーを分離する方法。トレッドを炭化水素中におくこと、そのトレッドを高圧の液体流で処理すること、ワイヤーを機械的にすき取ること、それを切断することを含む。特異点:効率を向上させるためにトレッドをゴムの分子間の結合が弱くなるスピードで回転させながら処理を行う。
『厳密な学としての創造性』、1979、p.87、ではこの方法に次の細目が含まれています:
c. 物体が全体として動かない場合には、動くように、移動するようにする。
例
発明者証No.317390。水泳用のゴム製ひれ足。特異点:泳ぐ早さ、距離に応じた泳ぎ方に対応してひれ先の硬さを調節できるように、ひれの内側に縦方向の空洞をつくり、その中を安定性が高く圧力をかけても体積が変化しない液体で充填する。液体にかける圧力は必要に応じて陸上あるいは水中で変化させる。
発明者証No.161247。船体が円筒形をした貨物船。特異点:満載した際の喫水を浅くできるように、船体は2つの半円筒でつくり、間をヒンジで連結して開け閉めができるようにする。
ソ連特許No.174748。自動車のメーンフレームを球形ヒンジでつながれた2つの部分でつくり、油圧シリンダを使ってフレームが左右に折れ曲がるようにする。この構造の自動車は高い走行性能をもつ。
発明者証No.162580。中に導電性の油脂が詰まったパイプを束ねたケーブルの製造方法。パイプの中に何らかの物質を入れ、それをまとめてケーブルを作り、ケーブルの完成後パイプ内の物質を取り除く。工程を容易にするためにパイプに入れる物質はパラフィンとする。ケーブル製造後は熱によってパラフィンを溶かしてパイプから流しだせば良い。
例
発明者証No.181897。薬品(例えばヨウ化銀)を用いて雹の発生源となる雲を結晶化させる雹害対策法。特異点:薬品の消費、散布コストを削減するために雲全体に散布せず、雹粒の大きい特定の部分に限定して散布を行う。
発明者証No.262333。タンクと計量機構を備えた金属粉末の計量装置。特異点:計量機構に安定した量の粉末が供給されるようにするため、タンクの内部に粉末取り込み用ロートと電磁ポンプの力で粉末をロートに(過剰気味に)供給する搬送機構が組み込まれている。(図17参照)
過剰処理の原理:パイプ1から供給される粉末の量が安定するように、ロート2には過剰な粉末が供給されるようにしておく。多すぎる分はタンク3にこぼれ落ちて、ロート2には常に縁まで一杯に粉末が入っていることになる。
例
発明者証No.150938。半導体ダイオード。特異点:ダイオードの容量を増加させるために、半導体プレートの径を増加させずにpn接合と抵抗接点とを立体形状に成型する。面接合から立体接合に移行することによって従来と同じサイズのダイオードで半導体プレートの接合面を拡大することが可能となり、これによりpn接合から得られる容量が増加する。
油井掘削用のビットの改良に長期間取り組んだ有名なソ連の発明家D.キセリョフは自著『設計者の探索』の中で次のように語っています。「ビットにもベアリングにもそれぞれ決まった許容荷重があります。ですから、その数を増やすことができれば、一個あたりの荷重が減少して稼働条件が改善され摩耗を減少させることができます。私はまさにこの観点から、ベアリングの配置の仕方を様々検討していたのです。しかし、ビットのサイズや、ベアリングのボールやローラーを配置できる空間が小さいことが障害になっていました。こう考えた時に、突然解決策を発見しました。解決策は“すぐ隣の空間に”あったのです。ベアリングを並べて2層に設置すると一定の面積の中に置けるベアリングの数を増やすことができます。ベッドを上下に重ねることによって寝台車の収容人数を増やすのと同じことです。私は笑い出してしまいました。何ヶ月もむなしく捜していた解決策はこんなに簡単なことだったのです。
発明者証No.180555。鉱山の水平方向のトンネルにおけるトロッコの入れ替え自動化法。特異点:天井を補強して入れ替え線を作る必要性を無くすために、空の車両を必要に応じて90度回転させて荷を積んだ列車の上を通して移動させる。
発明者証No.259449。磁気テープ式欠陥検出装置。特異点:連続使用時間を延長するためにエンドレステープの両面に磁性体を塗布しメビウスの輪を形成させる。
発明者証No.244783。年間を通じて野菜栽培を行う温室。特異点:太陽光線による植物への照射環境を改善するために北側に凹型反射面を持ったスクリーンを設置する。
例
発明者証No.220380。フラックス層のもとでエレクトロードを低周波振動させて行う異種あるいは同種金属の振動アーク溶接法。特異点:溶接品質を向上させる目的で低周波振動に重ねて超音波による例えば20キロヘルツ程度の高周波振動をかける。
発明者証No.307896。ノコギリを使用せず、体積を変化させる用具を使って行う木材切断法。特異点:用具を木材に入れる際に必要な力を小さくするために切断される木材の固有振動数に近い振動パルスをもった用具を使用する。
USA特許No.3239283。静止摩擦によって、針、振り子など動く部品のベアリング上でのスムースな動きが妨げられることによって精密機械の感度は大きく低下する。これを避けるために、ベアリングを振動させ、装置の部品が相互の間で常に揺れ動くようにする。この振動の原動力は電動モーターが使用されることが多いが、それに伴って、装置の動きが複雑になり、また、重量も増加する。アメリカの発明家ジョン・ブローズとウィリアム・ラウベンドルファーは新しいベアリングを開発した。このベアリングのブッシュは圧電材料で作られ、両端が導電性のフォイルで覆われている。フォイルに溶接された電極に交流電流を流すことによって振動を生じさせる。
発明者証No.244272。磁場を使って空気中の埃をしずめる方法。特異点:空気に音波振動と磁場とを同時に加える。
例
発明者証No.267772。アーク溶接の状態を観察するために照明で照らす方法が知られている。しかし、照明によって固体および融けた金属はよく見えるようになるが、プラズマガス状のアークが見えにくくなってしまう(明らかに技術的矛盾です)。新たなアイデアの特異点:照明の明るさをゼロからアークの明るさ以上まで定期的に変動させる。これによって、アークそのもののと、エレクトロードの溶解や固化した金属の状態の観察とを両立させることができる。
発明者証No.302622。加熱して起電の有無により熱電対の異常を検査する方法。特異点:検査時間を短縮するために熱電対にパルス電流を流して加熱し、パルスとパルスとの間に熱による起電の有無を確認する。
例
発明者証No.126440。油井の掘削に2セットの掘削パイプを用いる方法。2–3本の油井を同時に掘削する際にはそれぞれ独立して使用する複数のシャフトと2つの掘削パイプを用いる。掘削パイプは摩耗したビットを交換するために定期的に上げ下げするが、一本で掘削している間にもう一本のビットを交換する。
発明者証No.268926。船舶による砂糖原料の輸送法。特異点:タンカーの空荷(からに)での航行を活用して輸送コストを低減する。石油製品などの液体貨物を降ろした後で内部を片付け、洗剤で処理した後に砂糖原料などを積む。
例
発明者証No.241484。ガス流のもとで行う金属素材の急速加熱法。特異点:生産性の向上と脱炭の減少のため、ガスが素材に接する全工程を通じてガス流の速度を秒速200m以上とする。
発明者証No.112889。甲板積載式木材運搬船は専用装置を用いて船体を傾斜させて荷下ろしを行う。全ての木材を水中に落とすには船体を大きく傾ける必要があるがこれには危険を伴う。本件の提案では船体を傾ける角度は小さくし、ただし急激に傾けることによって動的な力を生じさせ、小さな傾き角にもかかわらずこの力によって木材が落ちるようにする。
ドイツ連邦特許No.1134821。大径で肉の薄いプラクチック製のパイプを切断する方法。装置の特徴。パイプが変形する余裕が無いほどカッターを早く動かして切断する。
例
ソ連科学アカデミー準会員のP.バラグジンは「学者の道」(『レニングラード・アルマニャック』、1953年、No.5)という文章に次のように書いています。彼は1920年代に高周波電流を金属の加熱に使うことに取り組みました。実験の結果高周波電流では金属は表面しか加熱されないことが判りました。高周波を素材の深いところまで「追い立てる」ことはどうしても出来なかったので、実験は中止されました。その後、バラグジンはこの「否定的現象」を活用しようとしなかったことを何度も悔いることになりました。高周波を金属の焼き入れ(表面処理)に使うことは、このアイデアが実際に取り上げられるよりも何年も以前に可能だったはずなのです。
電気火花の金属加工への活用にたずさわった、もう一人の優れた発明家の運命はこれと異なった展開となりました。
B.R.ラザレンコとI.N.ラザレンコは金属の電食という問題と戦っていました。リレーの接点のところで電流が金属を〈食べて〉しまい、対策がどうにもうまくゆかないのです。硬合金を使っても超硬合金を使っても良い結果を得ることができません。コンタクトを様々な液体に浸けてみましたが、破壊が一層促進されるだけでした。
2人はあるときこの「否定的な現象」をどこかで有効に活用できることに気づきました。研究は違う方向に向かうことになったのです。彼らは1943年に金属の放電加工技術によって発明者証を得ることになりました。
発明者証No.142511。図18はジョー・クラッシャーの2つの部品の接合部を示しています。接点は鋳鉄でできていますが、球形となっているので動かすことができます。この構造の弱点は部品の先端の頚部です。通常この箇所が破損します。もちろん破損を防止する対策を講じることは可能です。しかし、この箇所をわざと〈破損させ〉たらどうでしょうか。すると接点は円筒形のブッシュに変化します。こうなるともう〈破損〉させることは不可能です(図18)。
毒を薬にの原理
発明者証No.152492。地中に埋設したケーブルが霜柱で地割れが生ずることによって損傷しないよう保護するために、前もってケーブル埋設個所の両側に狭い溝(地割れ)を掘っておきます(図19)。
埋設ケーブルを霜による地割れから保護する人工的〈地割れ〉、つまり溝
この原理自体は簡単なものです。許し難いように思えることを受け入れなくてはならない、それは判る。しかし、ここのところで柔軟な思考が心理的障壁によって妨げられるケースが多いのです。
例
発明者証No.283997。冷却塔の中では空気の流れに渦が生じこれによって水を冷やせる深さが浅くなってしまうことがある。冷却効率を高くするために、塔内の複数の箇所に温度センサーを設置し、水温の状態に応じて冷却塔に入れる水の量を調節する。
発明者証No.167229。コンベアの自動起動装置。特異点:コンベアモーター起動時の電力を節約するために、コンベアが稼働している時にモーターが必要とする電力を測定し、コンベアが停止する時にはその出力を記憶させ、再び起動する時に起動用モーターにコンベア上の物質の重量に比例するシグナルを送る。
発明者証No.239245。製品取り出し口の温度と圧力に応じて還流分の量を調整する、蒸留塔による精製プロセスの自動制御法。特異点:3つの要素からなる混合物の組成を安定させるために、取り出し口の製品の比重に基づいて追加の補正を行う。
『厳密な学としての創造性』、1979、p.89、ではこの方法は次のように規定されています:
例
発明者証No.177436。溶融金属に電流を流す方法。特異点:電流損失を減少させるために、電流は水で冷却された電極から媒体となる他の溶融金属を経由させて目的の金属へと流す。中間に入れる金属は目的の金属よりも融点が低く、密度と沸点が高いものを用いる。
発明者証No.178005。物体の表面を大気による腐食から保護するために揮発性の阻害剤を塗布する方法。特異点:複雑な形状をした内側の表面に均一に塗布するために、熱した空気を阻害剤で飽和させて吹き付ける。
例
発明者証No.261207。内側を耐摩耗性プレートで内張りしたショットブラスト装置。特異点:内張りの耐久性を高めるためにプレートを磁石にして表面にショットの保護膜が形成されるようにしてある。稼働中にショットが装置の内側の面に当たることによって表面のショット層は常に更新される。
発明者証No.307584。組み立て式の部材を使って灌漑用水路を作る方法。特異点:水路が一部完成した後に次の部材を組み立て位置まで運ぶことを容易にするため、部材の側面を一時的にシートで包んでおく。完成した部分に水を入れると、シートで覆われた次の部材は水路に浮かべて組み立て位置まで移動させることができる。
発明者証No.108625。半導体ダイオードの冷却法。特異点:ヒートバランスを改善するために半導体熱電素子を使うが、素子に供給する電流はダイオードを流れる同じ電流の回路に組み入れる。
例
発明者証No.86560。アートパネルの表面に描かれた測量術の実物教材。特異点:パネルを使って画像に描かれた地域の測量を行うために、画像はトータルステーションによる実測データに従って描かれていて、地域の中の代表的な箇所には小さな測量用ロッドが置かれている。
時として物理的に両立させることが出来ない2つの物体を(測定や検査のために)両立させなくてはならない場合があります。このような場合には光学的コピーを利用することが適切です。X線写真を立体的に読み取る問題はこの方法で解決されました。通常のX線写真では身体の表面からどれだけ深いところに病原があるのか判断することは出来ません。ステレオ写真を撮れば立体映像を得ることができますが、それでも目測で深さを読み取ることしかできません。身体の中には物差しは置いてないのです。ですから〈両立できないもの——照射を受けた人の身体と物差し——を両立させる〉ことが必要なのです。
ノヴォシビリスクの発明家F.I.アクショーノフは光学的併置法を用いてこの問題を解決しました。アクショーノフの方法はX線ステレオ写真の立体映像を立体格子の立体映像と重ね合わせることです。医師は立体的寸法を表している格子が患者の身体の中にある様子を見ることになります。
一般的に言って、多くの場合物体そのものを操作するよりも物体の光学的コピーを扱う方が便利です。カナダのクルーター・ポールという会社では鉄道で輸送される木材の写真による秤量法を使っています。同社の資料によれば写真による秤量の早さは手作業の5–60倍で、秤量結果を正確に計算した場合と比較した誤差は1–2%以内です。
発明者証No.180829。立体的な部品の中の空洞表面の検査法。部品の内側に光の反射の少ない液体を入れ、少しずつ水位を変化させてはその状態を一枚のフィルムに重ね撮りしてゆきます。写真には同心円のような線が写ることになります。この写真をスライドなどで拡大して図面に基づく理論的な線と比較すると、極めて正確に部品の形状の誤差を判定することができます。
例
無菌のルールでは注射針の付いた注射器の煮沸は45分以上行うことになっています。一方で、多くの場合薬品の投与は出来るだけ急いで行わなくてはなりません。全ソ連邦医療機器装置研究所では使い捨てパイプ注射器を開発しました。この注射器の胴はプラスチック製の肉厚の薄い容器です。先には消毒済みの針がついていてキャップでカバーされています。パイプ注射器には工場で充填された薬品が入って密閉されています。この注射器は即座に使うことができます。注射に必要な準備は針のキャップを取るだけです。注射すると胴の中の薬品が投薬され、使用済みのパイプ注射器は廃棄されます。
USA特許No.3430629。吸い取り紙のような詰め物の入った使い捨ておむつ。
同種の特許は多数あります:使い捨て温度計、ゴミ袋、歯ブラシなど。
例
発明者証No.163559。土工ツール、例えばボーリング機械のビット、の摩耗管理法。特異点:管理を容易にするため摩耗のシグナルとしてビットの中にエタンチオールなどの強いにおいを持った化学品を入れたアンプルを組み込んでおく。
発明者証No.154459。摩耗しないボルト・セット(図20)。セットはネジみぞ2にコイルが巻かれているボルト1と、ネジみぞにコイル4が巻かれているナット3からなる。ボルトとナットとの間にはすきまが作ってある。ナットは工作機械または装置の駆動部に固定されている。コイル2と4に電流が流れると周囲に磁場が発生する。磁場によってボルト、ナットそれぞれに規定位置を維持する力がはたらく。なお、ボルトとナットとのコイルが同じ位置にある時に磁束は最大となる。
ボルトが回転するとボルトとナットとにそれぞれ巻かれたコイルの巻き位置が相対的にずれ、磁束線にゆがみが発生する。その結果、コイルの巻き位置同士の関係を当初の状態に戻そうとする応力が生じる。この応力がナットとそれに固定された駆動部品、装置を動かせる。
このボルトセットでは電磁場の働きによって締め付け力が生じるため部品は殆ど摩耗しないので極めて長い寿命が得られる。
「ある工場で極めて精密な加工を行いました。研磨加工により直径0.5mmの穴の内壁を研磨したのです。
この加工のために直径0.2mmの小さい工具を作りダイアモンドの粉末をまぶしました。
工具は空気タービンで秒速1000回転で動きます。さらに、工具は穴の周囲を1分間に150回廻ります。作業者は肉眼で加工箇所を見ることができないので、工具がいつ部品に触れているのか判りません。このため、加工時間が長過ぎたり、短すぎたりします。どちらの場合も部品は不良品になってしまいます。
専用の自動加工機を設計するところまでゆきました。しかし、ある発明家が簡単な解決法を発見しました。部品と加工機との間を絶縁し、電池の一方の極を部品に、他方を加工機に繋げます。この回路をアンプとスピーカーにつなげます。工具が部品と接触するとスピーカーが〈叫びます〉。この音によって、研磨の開始と、研磨の状況——音調が変化することによって——とを判断することが可能です。」
発明者証No.261372。触媒が移動するシステムで、触媒反応などのプロセスを行う方法。特異点:適用範囲を広くするために移動する磁場を作り、触媒に磁性を持たせる。
発明者証No.144500。表面放熱による熱交換器の管状部品の熱交換性能の向上。特異点:放熱効率を向上させるために、熱を持った物体の流れに強磁性体粒子を混ぜて、回転磁場によって主に交換機の壁に近い部分で動かして、流れを乱したり流速の変化を生じさせる。
フランス特許No.1499276。ドラムタンブリングや振動タンブリングで部品を処理する場合、処理の後で部品と研磨製コンパウンドとを分ける作業がある。部品が大きい場合はこの作業は容易である。磁性のある部品の場合は磁石を使って分けることができる。しかし、部品に磁性が無く、大きさがコンパウンドの粒子と替わらない場合はどうするか。この発明ではコンパウンドに磁性を持たせることによって解決する。研磨性粒子と切り子などの強磁性粒子とをプレスで固める、あるいは焼結、あるいは研磨性粒子の中の空洞に強磁性粒子をつめるなどの方法がある。
例
巨大な煙突に代えて隙間の空いた構造を使う。中空のらせんの巻の部分にノズルをつけそこから圧搾空気を吹き出し煙突の〈壁〉を形成させる。
発明者証No.243809。発明の目的:排気送風量の改善と排気拡散高度の増加。煙突の胴を円錐状のらせんをなすパイプ1で作り、その巻き部分にノズル2をつけ、中空の支柱3に固定する。支柱の末端はコンプレッサー4につながれている。
コンプレッサー4を始動させると、圧力をかけられた空気が支柱3の空洞を通って胴のらせんの巻き部分に流れてゆき、ノズルから吹き出される。これによって、空気の〈壁〉が形成される。
発明者証No.312630。サイズの大きい物体を噴霧式で塗装し、吸引ベンチレータで溶媒・ペンキの排気を行う方法。特異点:塗装のために使用する面積を減らすために、塗装する物体の周囲をその物体より高い位置まで空気カーテンで取り囲み、屋外吸引ベンチレータを使って最上部に渦巻きを形成させる。
この発明はその前のものと同じ矛盾を克服しています。パイプ形状の固体の物体に代わって空気の壁を使うという解決策が似ているのはそのためです。
発明者証No.244675(?)。球状のタンクを乗せる台座。特異点:タンクの外殻に対する圧力を下げるために台座は弾力性のある素材で作り、ふたはタンクの外殻の形状に沿った凹面形につくる。台座の本体は中空にして中を液体で満たす。
これと双子のように似ているもう1つの発明。発明者証No.243177。やぐらの支柱から土台にかかる荷重を伝える仕組み。特異点:荷重が土台に均一にかかるようにするために、この装置は平らで漏れないように密封されている液体入り容器となっている。
「AがBに対して均等に圧力をかけるようにする必要があるとすれば、AとBとの間に液体のクッションを入れなさい。」全く同じタイプの解決策に対して今後さらにいくつの発明者証が発行されるのか興味深いことです。
例
アメリカの研究者は、植物が葉からの蒸発で水分を失うことを防ぐために、葉にポリエチレンの〈雨〉をかけることを行っています。葉の上にはごく薄いポリエチレンの膜が形成されます。植物はこのポリエチレンの〈毛布〉にくるまれても生きることができます。これは、ポリエチレンの膜が酸素や炭酸ガスを水よりもはるかによく通すためです。
発明者証No.312826。液液抽出(分液)法。特異点:物質移動を促進するために一方の層の液体を固体表面に沿ったフィルムによって移動させ、他方の層はその上の気体層を通して流すようにする。
機械はいつでも稠密な(貫通できない)材料で作られてきました。中空の材料を使うことによって容易に解決可能な問題でも、思考の慣性からしばしば全ての構成要素や構造を稠密なままにし、特別な装置やシステムを新たに導入することによって解決しようとしてしまいます。ところが、細胞に始まって人体に及ぶまでの例にみるように、高度に有機的な機械では部分が貫通可能になっているものです。
内部で物質を移動させることは多くの機械に備わっている重要な機能の1つです。〈大まかな〉機械ではこの機能をパイプ、ポンプなどをつかって実現しますが、〈繊細な〉機械では多孔性の物質と分子間力をつかって実現します。
例
発明者証No.262092。容器の中に入っている製品からでる固体や粘着性の粒子の沈殿によって容器の内側表面が汚染されないように保護する方法。特異点:表面の保護性能を改善し容器内のエネルギー消費をおさえるために、容器の内壁を多孔性材料で作りその穴を通して沈殿を生じない液体を押し出す。その際、沈殿を生じない液体を押し出す圧力が容器内部の圧力より大きいようにする。
発明者証No.283264。耐熱素材を利用して溶融金属に添加物を加える方法。特異点:添加物がうまく混ざるようにするため、多孔性の耐熱素材に予め添加物をしみ込ませておき、それを溶融金属の中に沈める。
発明者証No.187135。モーターを蒸発熱によって冷却する仕組み。特異点:モーターの個々の構造要素を多孔性の材料、例えば多孔性の粉末鋼、で作り液状の冷却剤をしみ込ませておく。モーターが動き始めると冷却剤が蒸発して短時間で高性能でかつ均一にモーターを冷却する。
例
金属工場の鍛造ショップや鋳造ショップでは作業者を熱から守る必要のある箇所ではどこでもウォーターカーテンが使われています。ウォーターカーテンは眼に見えない(赤外線の)照射から作業者を守ってくれますが、溶融金属が発する眼もくらむ程明るい照射はウォーターカーテンの薄い水の膜によってはほとんど妨げられずに透過してしまいます。ポーランドの労働安全研究所の研究員はこうした照射から作業者を守るためにウォーターカーテンの水に着色するアイデアを提案しました。着色されたウォーターカーテンは依然として透明ですが、熱の照射は全く透さず、可視光のエネルギーも必要な水準まで弱くしてくれます。
発明者証No.165645。写真の定着液に着色剤を混入させる。着色剤は感光層に可逆的に浸透するが写真の台紙やセルロイドに色をつけることはない。着色剤は定着処理後の水洗の際に感光層から洗い流されるが、その速度はチオ硫酸ナトリウムが洗い流される速度と同じかそれよりやや早い。写真の画像に着色剤の色が残っているか否かによって、水洗が完全にすんだかどうかを知ることができるので、現像作業を効率化することができる。
例
ドイツ連邦特許No.957599。溶融金属の中に設置した音波発生装置からでる音波あるいは超音波によってその溶融金属に作用を加える鋳造用の樋。特異点:音波発生装置のうち溶融金属と直接接触する部分は作用を与える金属と同じ金属、あるいはその金属の合金要素によって作る。その部分は溶融金属の熱によって部分的に溶かされるが、音波発生装置の他の部分は強制冷却を行い損傷されないようにする。
発明者証No.234800。冷却を要するすべり軸受の潤滑法。特異点:高温での潤滑性能を改善するために、軸受のライナーと素材と同じ素材を潤滑物質として使用する。
発明者証No.180340。溶解した粒子の塵を気体から取り除く気体浄化法。特異点:浄化性能を改善するため、塵となっている粒子が化学反応を起こす媒体のなかに気体を吹き込む。
発明者証No.259298。溶接したいキャップ部を母材との間に少し間隔を明けて置き、そこに接合材入れた後にキャップ部を加熱して接合する異種金属溶接法。特異点:溶接品質を改善するために接合材は溶接する2つの金属の合金を用いる。
例
USA特許No.3174550。航空機が緊急着陸した場合に特殊な化学品の反応によって燃料が泡状で不燃性の状態になるように変化させる。
USA特許No.3160950。ロケット発射時のショックで精密な部品が損傷を受けないように発泡物質で保護し、その発泡物質はクッションとしての役割を果たした後に宇宙で揮発してしまう素材でつくる。
この原理は可変性の原理がさらに発展したものだということは容易に見てとることができると思います。作用プロセスの最中に物体が変化します。しかも、大きく変化します。航空機が飛行中に翼の形を変化させる、これが可変性の原理です。ロケットの飛行中に燃焼しつくした一段目、二段目を捨てる、これが廃棄の原理です。
以下は類似の発明です。
発明者証No.222322。ネジ式のマイクロスプリングの製造方法。特異点:作業性を改善するため素材のスプリングは弾性素材で出来た心棒に巻いて所定の位置にはめ込む。同時に、スプリングの設置箇所に弾性素材を溶かす成分を入れておく。
発明者証No.235979。ゴム製の球形セパレータ(2種類の液体をパイプを通して移動させる時に2つの液体が混じらないようにする)の製造方法。特異点:必要なサイズのゴム球を得るためにチョークを細かく砕いて水に混ぜて固めたものを心にする。ゴムを硫化させた後、ゴムに針を通して中に液体を入れチョークを溶かして取り除く。
発明者証No.159783。形鋼製造法。特異点:形鋼圧延機で様々なサイズと形状の形鋼を作るために粉末マグネサイトなどの耐熱素材を中につめて圧延を行い、つめたものを後に取り除く。
同じような発明は何百とあります。その度に同じアイデアを〈ゼロから〉捜して技術者がどれほど時間を無駄にしてきたのか想像することもできません。すべて基本は同じ方法です。「心型Bを使って物体Aを作りなさい。出来たらBは液体に溶かす、揮発させる、溶解する、化学反応を起こさせるなどして取り除きなさい。」
廃棄の原理の反対が再生の原理です。
発明者証No.182492。通電性の素材の放電加工の際に加工に用いる電極(特定の形状を必要としないもの)の損耗への対処法。特異点:電極の寿命を延長するために加工の際に電極の作用表面に間断なく金属粉を吹き付ける。
発明者証No.212672。研磨性物質を含む酸性のスラリーをパイプ輸送するとパイプの内面が短期間で摩耗してしまう。パイプの内張を保護することは難しく、手間がかかり、またパイプの外径が太くなることになってしまう。本案によるパイプの保護法ではパイプの内壁に保護層を形成させる。具体的には、輸送される液体に定期的に石灰溶液を混入させる。これによって、パイプの内壁は常に保護されるようになる一方で、形成された保護層は常に研磨性物質によって削り取られるためパイプの内径が大きく減少することはない。
例
発明者証No.265068。気体と粘性の液体との分離法。特異点:分離プロセスを促進するために粘性の液体を装置に入れる前に予め気化させる。
発明者証No.222781。化学肥料、毒性化学品などの飛散しやすい物質の計量供給装置。供給口が開いているカバーに入ったらせんネジという形状をしている。特異点:供給ピッチを変更できるようにらせんネジの表面は弾性素材で作られていて、その内側にはらせんの小径部、大径部それぞれにらせんバネが入っている(図22)。
飛散性物質の計量供給装置のらせんネジ。バネが入った弾性素材で作られていて、ピッチの調整ができる。
例
発明者証No.190855。波形パイプの製造法。(金型の中に入れ)片方の端を密閉したパイプに高圧の水を送り込んで圧力をかけて成型する。特異点:プロセスのコストを削減し、加工時間を短縮するために、水を入れた後にパイプの両端を密封し、その状態で水を凍らせる。
「方法36は方法35のa(物体の集合状態の変化)、方法15(可変性の原理)と何が違うのか」という疑問が生じるかもしれません。35のaは物体が集合状態Aに替わって集合状態Bをとり、そのことによって必要な結果を得ることを意味しています。
方法15の主旨は私たちがある時は状態Aに特有の特性を利用し、ある時には状態Bに特有の特性を利用するということです。
方法36を利用する場合は、状態Aから状態Bへまたはその逆へと可逆的に変化することに伴う現象によって問題を解決します。(直前の例で)パイプの中に始めから氷を送り込んだのではパイプを変形させることは出来ません。求める結果は水が凍る際に体積が増加する効果によって得られるのです。
発明者証No.225851。液体の冷媒が閉回路を周回することによって様々な物体を冷却する方法。特異点:使用する冷媒の量と、エネルギー消費を減らすために、冷媒の一部を固体に変えて得られる混合物によって冷却する。
〈相変化〉は〈集合状態の変化〉よりも広い概念です。相変化には、例えば、物質の結晶構造の変化も含まれます。例えば錫は白色錫(比重7.31)となることも、灰色錫(比重5.75)となることもあります。18度で生じる変化には体積の大幅な増加が伴います(これは、水が凍る時の変化よりはるかに大幅な増加です;したがってこの変化から得られる力も遥かに大きいのです)。{訳注:この変化は大幅な過冷を伴い、白色錫から灰色錫への変化が実際に進むのはマイナス10℃以下になってのことです。}
多形(ポリモルフィズム。同じ組成の化学物質に多くの結晶形が存在すること)は多くの物質が特性として持っています。多形の結晶変化に伴う現象は非常に多くの発明問題を解決するために利用できます。例えば、USA特許No.3156974ではビスマスとセリウムの多形変異を利用しています。
例
発明者証No.309758。心棒を固定して行うパイプの冷間引抜き加工法。特異点:引抜き後パイプから心棒を抜き出す際にロールにかける必要が無いようにパイプと心棒との間にすきまができるよう、引抜き加工に先立って例えば50–100度に加熱した心棒を使って常温のパイプを引抜く。心棒の抜き出しはパイプと心棒の温度が同一になってから行う。
発明者証No.312642。種々の素材から同心多層ブッシュを成型する熱間鍛造のワーク。特異点:多層ブッシュの各層の間に応力が存在するようにするために、各層ごとに外側に来る素材の熱膨張係数がその内側のものより大きいようにする。
この方法の主旨はマクロレベルの〈大まかな〉動きから分子レベルでの〈繊細な〉動きへと移行することにあります。熱膨張によって大きな力や圧力を得ることができます。熱膨張は物体の動きを非常に正確に〈調整する〉ことを可能にします。
発明者証No.242127。種結晶のついた支持結晶基盤などを精密に移動させる装置。特異点:この装置は、出来るだけなめらかに動かすことができるように熱絶縁チャンバーのサポートに固定された2つの軸をもち各軸について規定のプログラムにしたがって電気的に加熱・冷却される。
これらの一連の方法の目的は作用のプロセスを一層激しくすることにあります。例としては、粒子状物質の焼結や焼成の際に酸素濃度を高くした空気を吹き込んで燃焼過程を激化させる方法をあげることができます。ステンレススチールのプラズマアーク切断の際には切断用のガスとして純酸素が用いられます。精錬を行う原材料とするために、イオン化した酸化剤と気体燃料とを用いて鉱石を凝集させるプロセスを激化させます。
例
USA特許No.3553820。アルミニウムを基材としタンタル・カーボンファイバーで多層に強化した軽く、頑丈で溶解しにくい製品。この製品は弾性が高いことが特徴であり、軍用機や軍艦の材料として用いられる。
発明者証No.147225。微細な磁性粒子を含むインキを使う筆記法。通常のインキと違い磁性インキは磁場によって制御することができる。
複合材料とは複数の素材によって構成されている材料ですが、どの構成要素も単独では持たない特性をもっています。例えば、方法31で取り上げている多孔性材料は固体と空気とによって構成されています。構成要素の固体も、空気もどちらも単独では多孔性材料が持つ特性はもっていません。
自然は様々な複合材料を発明し、広範に利用しています。木材はセルロースとリグニンとの複合です。セルロースの繊維は破断にたいしては極めて強いのですが、簡単に折れ曲がってしまいます。リグニンは沢山のセルロースを結び合わせて一体化し、同時に、硬さを与えています。
簡単に溶かすことの出来る物質(例えば仏像の合金)と融けにくい物質の繊維(例えば鋼)との組み合わせは面白い複合材料です。こうした材料は溶かすことが容易ですが、一旦固まると大きな強度を持ちます。はんだの粒子と繊維とが相互に拡散し合う過程が徐々に進展して、結果として熱によって溶けやすい合金が出来てきます。
もう1つの複合材料はオイルにシリコンの粒子を入れた懸濁液です。電流を流すことによって固化させることができます。