2013年の暮れにモスクワで連続開催されたTRIZセミナーの詳細プログラムの日本語訳を当サイトにアップすることについて著作権者の了解が得られたので掲載します。このセミナーの主催者はモスクワ市役所ですが、運営を担当したのはモスクワを拠点として活発に活動している中堅TRIZマスターのアレクサンドル・クドゥリャフツェフが中心となっている非営利パートナーシップです (www.metodolog.ru)。古典的TRIZとは一味も二味も違う現代のTRIZのあり方の一端が窺えると思います。
この文書には著作権があります。
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無断転載は禁止いたします。
2013.11.11掲載
掲載責任者:Metodologサイト content manager
このセミナーはモスクワ市の中小企業の従業員並びにモスクワ市で学ぶ大学生・大学院生のために開催するものです。
セミナーで32時間学ぶことによってイノベーション活動をサポートする各種ツールを学び、その多くを実用レベルまでマスターすることができます。このセミナーではモスクワ市の諸企業が提起する問題や参加者自身が持ち寄る問題を学習の素材とします。セミナーの講師は非営利パートナーシップ「実用的発明センター」に所属するコンサルタントです。参加者には教科書が配布されます。参加料は無料です。
このセミナーを終了した参加者は、80時間コースの第二ステップセミナーへの参加資格が得られます。第二ステップセミナーでは様々な手法を用いて独力で技術的難問を解決する知識と技能を獲得することができます。
No. | グループ名 | 教室所在地 | 時間 | 開催日 |
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1 | キタイゴーラド | -省略- | 土、10:00–18:00 | 11/2 – 11/30 |
2 | スレーチェンカ | -省略- | 火・木、18:00–21:00 | 11/5 – 12/5 |
3 | バウマンスカヤ | -省略- | 火・木、18:00–21:00 | 11/7 – 12/5 |
4 | ソーコル | -省略- | 土、13:00–19:00 | 11/9 – 12/1 |
5 | トゥシンスカヤ | -省略- | 水、10:00–17:30 | 11/13 – 12/4 |
6 | パクローフカ | -省略- | 12/2–5、10:00–17:30 | 12/2 – 12/5 |
セミナーへの参加を希望したものの、なんらかの理由で参加できなかった志願者を対象として現在No.7グループを編成中です。セミナーは1月第3週より始まります。教室の場所と詳細な開催時間は別途掲示します。
セミナー・プログラム「TRIZ:革新的企業創生のツール」は中小企業の従業員、管理職、有望な事業テーマを探している起業家、学生のために内容に優れ効率的な学習を提供するために作られました。
イノベーションを計画的に進めるには、創造活動そのものを計画的に遂行できることが前提とされ、さらにその前提として創造活動を段階ごとに区分し、それぞれの段階で何をどのように行うべきか理解していることが求められます。このような教育は通常長期間費やしてGEN3-ID{アメリカのGen3パートナーズが使っている方法体系}のような複雑な作業手順を習得する形態で行われます。中小企業における研修は長期の修学を想定していないため、従来は中小企業の人材育成を目的として上記のような教育を行うことはできませんでした。GEN3-IDでは膨大な数の手法が使われているため、今回はこのセミナーのために問題状況の分析や新しい方策を探す作業で最大の価値を発揮する手法を選別し改良しました。
今回のセミナーで使う方法は民間企業で行った一連の研修を通じて検証されています。
提起された課題に対して問題状況の分析ならびに新しいアイデアの探索プロセスを確実に遂行できるように参加者の能力と技能を育成する。具体的には:
「TRIZ:革新的企業創生のツール」セミナーをしかるべく学んだ参加者は以下を習得するはずです:
改良対象システムの進化の諸段階、イノベーションプロセスに携わるメンバーの役割、イノベーションプロセスの創造的ステップの内容と構造、それを実行する上でのロードマップの可能なバリエーション
既知の市場動向に基づいて技術的な課題をしかるべく設定し、既存の製品・装置・部品・技術の分析を通じて弱点や余剰箇所を特定し、これらの知識を用いて最も有望な発展の方向を選択することができる。機能を実現する上で可能性のある複数の選択肢を明らかにし、あるモノに使われている作動原理を他のモノに移植することができる。チームの一員として新しいアイデア探索に従事し、そのチームの作業を計画・運用することができる。
改良対象のシステムを分析し、新しいアイデアを探索する作業を方法的にサポートする主要なツール。検討対象の機能図、フロー図を描く技術、余剰部分を明らかにしそれを取り除く手順。
No. | テーマ |
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1 | イノヴェーション活動および創造性開発をサポートする方法的手段の一般的特徴。 |
2 | 直感に基づいてアイデア探索を行う各種の方法。ブレーンストーミングとシネクティクス。 |
3 | 体系的にアイデア探索を行う各種の方法。網羅的合成法と形態素分析。 |
4 | 論理的にアイデア探索を行う各種の方法。現代TRIZ (Gen3-ID) の手順のロジック。 Gen3-IDによる作業計画の全体構造と各種のバリエーション。 |
5 | 市場ニーズの分析。市場価値のキー指標の分析 (MPV=Main Parameters of Value) |
6 | 製品の一生と製品に関わるステークホルダー・マッッピング。ステークホルダーのグループと各ステークホルダーが持つニーズならびに克服すべき制約の解明。 |
7 | 市場価値指標と市場にある各種製品の機能的・物理的諸特性との関係。 |
8 | 競合製品の比較分析、製品が持つ個々のMPVについて具体的な技術をベースに進化限界を解明。 |
9 | 製品を内側から分析する各種方法の層別。改良対象製品のフロー分析。 |
10 | 改良対象製品の機能分析。 |
11 | 課題の絞り込み。キーとなる有害作用の探索、主たる課題(複数)の解明及び問題設定。 |
12 | 矛盾の解明をベースとする問題設定のモデル。課題解決−矛盾解決スキーム。 |
13 | 構造スキームの不備の解明をベースとする問題設定のモデル。構造スキームの最適化による問題解決。 |
14 | {製品の}進化ベクトルからの逸脱をベースとする問題設定のモデル。進化のトレンドに対応させることによる問題解決。 |
15 | 問題を抱えた機能の特定をベースとする問題設定のモデル。機能的理想のモデル化。問題解決スキームとしての機能の移植。 |
{一行空欄:ここに修了試験が入るのかもしれません} | |
合計32時間 |
現代の企業を進化させる原動力の1つとしての競争。生産および新商品創出の効率を向上させる複数の道。企業の従業員の創造的ポテンシャルを活性化する様々な可能性。従業員が問題記述、分析、解決に用いる共通言語を含むイノベーション活動環境の形成。
イノベーション活動を活発にする各種ツールの分類。具体的には、偶然任せのアイデア探索、体系的アイデア探索、TRIZ(発明問題解決理論)の各種ツール。
直感的アイデア探索をサポートする幾つかの手段。直感的な解決策アイデア探索の考え方、この種の手順の特徴。
エドワード・デ・ボノの「思考のメカニズム」{原表現は "The Mechanism of Mind"}。思考手順と思考モード、挑発的および創造的テクニック。
ブレーンストーミングとそのバリエーション。この方法が登場した背景、概要と実行ステップ。ブレーンストーミングのルール。参加者の役割と行動の特性。参加者の選出。ブレーンストーミング・プロセスの運営方法。得られる結果の特徴{ブレーンストーミングによるアイデアの出方の特性、アイデアの内容の特性などと思われます}。
シネクティクス{1960年代にウィリアム・ゴードンがつくった類比を利用して発想を促す一連の方法。熟練したリーダーのもとで活用すると大きな効果をあげると言われていますが、使いこなすことが難しいと言われています}:この方法の主なツール。使う個人による違い。シネクティクスを使ったグループワークの手順。参加者の選出と事前教育。この方法で用いる類比(アナロジー)の種類。
体系的アイデア探索の各種手段:問題解決に向けたアプローチの概要と特徴。探索スペースを完全にカバーするための手段としてのコンビネーション。
網羅的合成法{ロシアのM.ベーレンスが提唱した方法。対象を一般理念化し、それを全構成要素を分割し、次に構成要素のあらゆる組み合わせを網羅的に検討する}。作業のアルゴリズム、主なルール、各ステップの作業、得られる結果のイメージとその分析。
形態素分析と合成。この方法が作られた背景。形態素表の作り方のバリエーション。この方法の適用例。
機能組み合わせ論。主な作業と作業ルール。主な作業の公式。得られた結果の解釈の仕方。この方法の適用分野。
方向付けを持ってアイデア探索を行う各種方法の特徴。適用分野。目的と相反状態{コンフリクト。通常TRIZでいう「矛盾」}の理念。TRIZの各種ツールの進化の諸段階とその現代版であるGen3-IDおよびDE{アイディエーション社が提唱する未来先取り法}。分析ならびに解決策アイデアの探索に用いる方法的ツールの構造。問題解決のアルゴリズム。目的の達成に向けた手順を追うステップとしてのアルゴリズムの理念。各種アルゴリズムの構造。推奨方策案作りの可能なタイプ。ヒューリステイック・アルゴリズム{結果が保証されているわけではないが、有効性の高い思考手順を指すと思われる}を使った作業の特性。
TRIZの様々なアルゴリズム。アルゴリズムの進化。アルゴリズムの基本構造。この方法の主なロジック:達成すべき課題を不断に変形する。キーとなるステップ{複数}。課題とその記述法。課題モデル。相反状態の典型的構造{複数}。
問題状況の分析に用いる各種のツール。イノベーション実現プロセスのツールによるサポート。ツールによるサポートという理念。ツールの種類:方法的ツール、情報的ツール、思考活性化ツール。ツールによるサポートを行う手順の一般的な流れ。
製品の主要ユーザー価値 (MPV=Main Parameters of Value) 体系の構築。ユーザー価値という理念。ユーザー価値に基づく市場の特定。市場における製品選択の指標としての主要ユーザー価値 (MPV)。市場のユーザー・消費者を対象とした作業。ユーザー・消費者テストの長所と短所。得られた情報から主要ユーザー価値 (MPV) を抽出する方法。
製品の一生とその諸段階。Sカーブに沿った成長(進化)という理念。製品の成長(進化)の道程における主要なポイント。成長の各段階に固有の主な問題と考えられる対応策。ステークホルダーの理念、主なステークホルダー・グループ。ステークホルダーから提起される要求(ニーズ)と制約、それらをどう考慮するか、どう解釈するか。
製品の開発者と販売者との間の原理的な違い。本質的な違への対処。主要ユーザー価値 (MPV) と製品の機能的・物理的諸特性とをつなぐ手段としての目的=手段ツリーの作成。技術プロセス、装置、物体に関する原因=結果ツリー作る上での注意点。
進化させたい対象の選択。関連するモノの比較評価。ベンチマーキングとその実行方法。様々なタイプのプロジェクトにおけるベンチマーキングの実行ステップ(複数)とその特徴:新しいモノを作る際に、改良対象として選択されたモノの新しさの魅力を大きくすることを目的とする。
今後予測される各種システムの比較考証。代替的システム、お互いに相克関係にあるシステム。得られた情報の既存システム改良上の課題設定への活用。競合するモノ、競合する作動原理が持つ特徴を移植する手順。
改良対象システムのフローモデルの作成。システムにおけるフローという理念。各種のフロー。フロースキームを構成する上での各種ルール。フロースキームの分析、欠陥の発見と課題設定。システム内の「グレーゾーン」、「ボトルネック」の発見。有益フロー、有害フローという理念。対象のモノの改良に関わる課題設定。
改良対象製品の機能を検討する目的。対象のモノの構成要素モデル−対象のモノについて記述(説明)する上で最適な水準の判断基準。対象物内の結びつきの構造、それを解明し視野に入れる上での注意点。構造図と表:それぞれの表現手段が持つ長所・短所。各種機能を定式表現する上での注意点。各種の機能とそれぞれの重要性の定式化。様々な機能の実現可能性の判定。システム構成要素の機能表の作成。定量的分析。
当初の欠陥(複数)の原因・結果分析とそれを取り除く上で考えられる課題(選択肢)設定(複数)。システムの作用の結果として生じる有害作用、ならびに、重要な有害作用。原因・結果リンク作成の目的−重要な有害作用の発見:生じている様々なプロセス間の相互の結びつきの理解。
原因・結果リンクの作り方。よくある失敗。
矛盾への着目。技術的(状況的)矛盾。矛盾–ニーズ–物理的矛盾。操作空間と操作時間。資源——資源の発見と活用。資源の種類。既存の資源と派生的資源。環境の資源。
問題解決の方法{発明原理}という理念。方法のタイプ。{集合として}方法の内容。必要な方法を選択する手順。方法リストを使う作業、方法選択表を使う作業。{集合としての}方法の原理的欠陥とその克服法(複数)。
物理的矛盾を解決する代表的方法(複数)。得られた解決策を更に展開する方法(複数)。
一般的構造モデル{物質場分析のイメージ}という理念。構造モデルの種類と分類。発明問題解決の標準(複数){標準解}。標準を使う作業−問題の記述、{当初の構造モデルから、改良された構造モデルへの}移行のあり方の定式化、得られた結果の解釈。システムを{新規に}合成する標準、システム{の不備}を補足する標準、計測と検出に関わる標準、必要な資源を得るための標準、標準を活用する上での標準。
各種情報フォンドとそれを使う作業。一般解という理念。一般化のレベル。矛盾解決のための方法群。効果便覧{いわゆる「エフェクツ」}——物理的効果集、化学的効果集、幾何学効果集、生物学効果集。
専用コンピュータソフトウエアを使う作業。現在使われているソフトウエアの概況。
ローカル{例えば自社専用}情報フォンドの構築。
進化ベクトルという理念。技術の進化における法則性。秩序立ったプロセスとしての技術の進化。技術システムの存在と進化の法則性。物質、技術的な物、技術プロセスの進化に見られる法則性の解明。モノの適応レベルの向上とそれを可能にしているサブトレンド。システムから人が排除される。システム全体、下位システム、使われている材料それぞれのレベルでの法則性の解明。進化の法則性と市場トレンドとの間の関係。
解明した進化の法則性のシステムの改良、新システムの創出における実践的活用。
問題解決のための機能オリエンテッドサーチ。作業のアルゴリズム。求められる機能を一般化して得られた解決策を具現化するための技術。技術移植のテクニック。解決策のスケール。アナロジーとしたモノに移植した結果を評価する上での問題点(複数)。
機能的理想モデルという技術。システムの階層的機能スキームの作成。スキーム作成上の諸ルール。スキーム作成上の注意点。機能的理想モデル作成手順の実行。機能的理想モデルを作成した結果として表面化する課題の種類。相互間の軋轢が最も大きい要素、プロセスの発見と排除。トリミングの手順。
セミナー中に参加者が自分で作業する時間が設けられます。
本セミナーでは企業の要請に基づいて作成された問題集を使用します。