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現代のTRIZ

I.L.ヴィケンチエフ「「研究者」の育成について」

イーゴリ・レオナルドヴィッチ・ヴィケンチエフ (Игорь Леонардович Викентьев) の論文を紹介します。当サイトでは三本目の紹介です。

著者は1957年生。1998年にアルトシューラが認定した65人のTRIZマスターの一人です。

この論文は、すでに紹介した「TRIZ教育の生理心理的基礎」「TRIZ教育のステップと教育上のテクニック」と重なっている部分もありますが、自分の頭で考える人を育てる上での要点といった形でまとめられた文章です。小・中学生に教える際に使う問題の例など、 TRIZを教える人にも、技術者に限らず革新的なアイデアを得るために学びたい人にも参考になる点が多いとおもいます。

この論文には著作権があります。
日本語の翻訳の著作権はサイト管理者にあります。
無断転載は禁止いたします。

原題:О подготовке исследовке исследователей
所収:Березиная В.Г., Викентьев И.Л., Модестов С.Ю. Детство Творческой Личности: Встреча с Чудом. Наставники. Достойная цель.— Спб: "ТРИЗ-ШАНС", 1995.— с. 30-40, 51-57.
現在の原文掲示箇所: http://www.triz-chance.ru/researchers.html

「研究者」の育成について

『創造的な人の子供時代:不思議との出会い、良い指導者、有意義な目標』より
© И.Л. Викентьев, Система "ТРИЗ-ШАНС", 1995 г.

V.G.ベレズィーナ/I.L.ヴィケンチエフ/S.Y.モジェーストフ『創造的な人の子供時代:不思議との出会い、良い指導者、有意義な目標』(サンクトペテルブルグ、TRIZ-チャンス、1995年)の内容の一部を紹介します。(30-40頁および51-57頁)

ここに紹介する章は I.L.ヴィケンチエフが若い「研究者」「開発技術者」を対象に行った試験的な研究に基づいて書いた部分です。著者は才能のある子供、天才の教育、能力の高い子供といった言葉は使っていませんがこういったテーマに関心のある皆さんにも興味を持っていただけるかもしれません。

なお、文中でCPはCreative Personalityを指すこととします。

 本章の内容はイントロダクションの部分で触れられている「創造的な性格の形成についての研究」というほど包括的なものではありません。しかし、CPの伝記の研究よりも子供たちを実際に教えた経験に大きく依拠している点で独自の長所をもっていると思います。この章の目的は同じ目的を持つ同僚に私たちの経験を伝えることです。

 本書の著者の一人 I.L.ヴィケンチエフは1986年から「キーロフ工場」付属の「キーロフっ子」文化センターのサークルで小・中学生を対象としてTRIZの基礎を教えました。サークルのクラスに入る入学試験はありません。参加者に唯一求めたのは勉強して成長したいという最低限の希望を持っていることです。

 ここでは、クラスの生徒の多くがTRIZを使って簡単な技術分野の問題(こうした問題の一部は参考文献3で公開されています。また、付録1「TRIZ学校で小・中学生に教える際に用いる典型的な問題の例」でも紹介しています)を着実に解けるようになると、教師は上級生が(サークル内のコンクール用に教師が考え出した問題ではない)現実の研究上の問題を解くことができるか見極める新しい課題に取り組み始めます。本物の大人の研究者を相手に競うわけです。

 研究対象として選んだのは自然科学的なアプローチの物理学や生物学の現象ではなく、宣伝や報道の分野のテクニックの研究です。

 この対象を選択したのには訳があります。まず、サークルの参加者にとって自分が考えていることを正確に伝えられることは常に有益です。他方で、この作業に必要なのは新聞や雑誌のファイル、筆記のための用紙、そして自分の頭だけで、他には何も要りません。この企画の一部、6人の生徒と行った学習については既に印刷物になって公開されています。しかし、こうして選択した研究対象の難しさは——白状しなくてはなりませんが——参加者の力量を超えることがわかりました。そこで、より限定された宣伝用の文章の構成を課題とすることにしました。私たちが犯した失敗や、ジャーナリズムや広告宣伝に用いられている方法についての共同研究の観察結果は本章で以下に紹介されます。

 教えた通りにすれば確実に解決策の見つかる問題を素材とした授業の過程で、まず1つの状況が明らかになりました。心の中に葛藤、コンプレクス、学習に集中することを妨げる感情の高まりといったものを抱えた状態では、子供たち(大人でも同じことですが)は学習中に定められた手順に沿って考えることを妨げられ、創造性が求められる問題を安定して解決することはできないということです。研究者を養成するには、事前に心理療法が必要なのです。ところで、この言葉を恐れないようにしましょう。社会が問題を抱えているときには、CPが出現するとしても偶然のことで、むしろなんらかの間違いで生まれることがあるということでしかないのです。

 私たちは1つの矛盾に直面しています。生徒たちには、一方で、日常生活の有り様、学校、マスコミによって画一的な思考と行動様式が押し付けられ、他方サークルでは問題をじっくり考え抜くこと、方法に従って学習することが求めれます。(ところで、CPの伝記を読むと穏やかで創造的な環境は、しばしば孤独な生活や母親や指導者による子供への心遣いによって作り出されていることがわかります。正直に言って、工場の寮に付設された文化センターではこうしたことはあまり現実的ではありません。)

 TRIZの原則では、2つの要請があってそれらを両立させることができない場合に、もっとも簡単な対処法は2つの要請を順番に満たすことです。従って、生徒の置かれた環境を大きく変化させることはできないならば、教師としては力を尽くして授業の中で落ち着いた信頼感に満ちた環境を作り出すしかありません。しかし、義務教育の学校とは逆で、生徒たちは一様に、おそらくは無意識のうちに、サークルの教師は「民主的で」なんでも許してくれるはずだと思い込んでいます。

 もう1つ新たな問題があることがわかりました。サークルの生徒たちと教師との間の相互信頼の関係は維持しなくてはなりません。その一方で、短時間のうちに子供たちを創造的な学習に取り組める心構えに引き込まなくてはなりません。

 これを実現するために、私たちはいつも芝居がかった儀式のような仕組みを使うことにしました。サークルの教室への入り方、仲間同士の挨拶、授業を始めるときの決まったやり方、質問への回答の仕方:(「うーんと……、えーと……、なんていうか……」ではなく)「私はこう思います……」「私の考えでは……」——こうしたことの詳細は生徒たちの書いた参考文献4を参照してください。つまり、ルーチン、作法に従った、格好良く魅力的な行動様式です。しかも、教師の指示に従ったやり方です。それだけ? そうではありません。最大の秘密は別の点です。一旦こうした行動様式がクラスに徹底すると、今度は何かを変化させます。座席の配置、個々の生徒の役割、使う言葉、動作などを変化させます。その理由を、簡単に言うならば、生徒たちはこうしたルーチンを身につけることより、むしろ、1つの状態から別の状態に移行すること、日常的に親しんでいる学校でのふらふらした心構えから、スマートなビジネススタイルに移行すること、駆け足のリズムから、私たちのサークルのウオームアップのようなペースに、急がずに難しい問題を検討するむしろゆっくりすぎるほどのリズムに移行することを学ぶのです。サークルの教師は子供たちの学校や家庭の環境を変える力はありません、その代わりに、サークルでの週に何時間かの授業が子供たちにとって他とは全く別の時間、際立った(素晴らしい)時間となるようにと心がけました。

 しかし、生徒たちの感情の状態を大人が指導して変化させるのは、研究者の育成の入り口でしかありません。次の段階は(成果としてはるかに劣ることになったのですが)「標準的な状態」から自分の感情を(最終的には、どのような状態へも)自覚的にコントロールすることへの移行です。

 古代ギリシアの時代に7人の賢人がデルフォイ神殿の壁に書かれた「己自身を知れ」という言葉で三日間の会合を締めくくったといいます。「キーロフっ子」サークルの教師はこの極めて有名な格言の意味の深さをTRIZに出会って初めて感じ取ることができました。私たちが、霊感によってではなく、着実に難問を解決してゆき、創造的な状態に入り込むことも、——同様に重要なのですが——そこから抜け出すこともできる、優れた研究者を本当に育成したければ、私たちはその人に自分の意図、思考、行動を意識すること、一言で言えば振り返って反省すること、を教えなくてはなりません。なぜそれがそれほどまでに重要なのでしょうか。もしも科学(あるいは芸術)に取り組むことが単に自己実現の手段であり、注目の的となり、学問ではなく個人的な問題を解決することだとしたら、それは、ゆっくりとしかし確実に人格を損ない、結局は仕事も失敗に終わることだからです。

 研究者は社会が問題を解決する主要な手段だといえます。しかし、同時に研究者は自分自身の問題を抱えた人間でもあります。性、経済、社会的なステータスといった問題は研究者の主な仕事だけによるのでなく、また、それに大きく依存せず解決されることが望ましいと言えます。

例49
マーシャは驚くほど長くスマートな足と魅力的な眼差しによってホールの男性を感嘆させながら「アラを出せ!」という声に意味ありげに「アラは来るわ!」と答えた。彼女ほど著名なスターがスキャンダルを避けることができないのは当然と言える。マーシャ・ラスプーチナは{大先輩にあたる大物歌手の}{訳注}アラ・ボリーソブナが若い夫と一緒に泊まった{サンクトペテルブルグの新しい高級ホテル}ネフスキーパレスのプレジデンシャル・スイートをひどく妬んで、{同じサンクトペテルブルグの古い高級ホテル}アストリアにとっていた部屋が自分ほど高い地位の者にはふさわしくないと、手袋を変えるように取り替えた。提供された車もマーシャのお気に召さなかった。シベリアの歌姫マーシャの機嫌は議員御用達の高級車チャイカがやってきてようやくおさまった。コンサートの後、{前述の大先輩}アラ・プガチョーバと違いマーシャはすぐ近くのモスクワ駅まで歩くことを拒み同じチャイカで送らせた。

訳注:{ }内翻訳者。以下同じ。

 ですから、自分を肯定できる分野は複数持っていることが望ましいと言えます。また、そうしたものが複数あったにしてもしばしば自問自答することは有益です(自分自身を欺くことがないように「なぜ?」と)。

  • 私は科学的な研究をして問題を解決する仕事をしているのだろうか、それともそのふりをしているだけだろうか? もし、ふりをしているとすれば、誰に向かって、なんのために? 何かのためにふりをしているなら、他のやり方でもっとシンプルにできないだろうか?
  • 私は、科学的な研究をして実際に問題を解決しているのだろうか、それとも自分の生き方を正当化したい、褒められたい、同情されたいと思っているのだろうか? だとしたら、私は何をしているのだろう、自分のため、他の人たちのため、それとも両方のため?
  • 何が怖いんだ? 何が問題を解くことを難しくしているんだろう? 私は自分の感情に溺れているんじゃないだろうか、それが問題の解決を難しくしているんじゃないか?

 こうした心理的な面からの失敗と同時に、(特に始めたばかりの)研究者は次のような典型的な学問上の失敗について知識を持っておくことことが望まれます。

  • 研究上の問題について、最初に頭に浮かんだつまらないアイデアに取り憑かれること(こうしたアイデアは捨てて、考察を先に進めなくてはなりません。簡単に思いつく初期のアイデアは多くの場合誰もが思いつく型どおりのもので、有効性の低いアイデアだからです。)
  • アイデアを性急に口に出したり公表したりしてしまい、抱えている問題を徹底的に考え抜かないままで終わること。挙げ句の果てに、そのアイデアが上手く行かないと誰彼となく他人の責任にして、大切な自分は悪くないと言い張る。
  • アイデアの良いところばかりを探して、欠陥や疑問点を無視する
  • 自分自身で考えることをしないで、書籍の検討に没頭しては、次から次に問題に潜む最大の秘密を読み取ろうとする。
  • 自分の労力に対してしかるべき賞賛を期待する。
  • 始めた研究をなん度もやり直し、考え直してやり遂げることをしようとしない、することができない。(注:一般的な教育では仕事をやり遂げ、更に手を加え、磨きをかけることではなく、試験に合格することが求められています。)

指針 1

研究に取り掛かる以前に、次のことが望まれます:

  1. 日常的で気持ちの緩んだ精神状態から、集中して、方法を意識してプロとして思考し、それに際して、創造的な精神状態に移行し、——最も重要なのですが——また元に戻ることができるようになっていること。
  2. 自分が犯しやすい失敗を知り、自分の動機、思考、行動を反省できること。

 先に進んで、研究者の育成そのものについて説明したいとおもいます。

 誰もが認める事実ですが、創造的な構想を考えるときには、考えるための技術や、構想を仕上げる方法について考えてはいけません。そこを考えてしまうと、研究者はそちらの方に精力を使い果たしてしまったり、当初の課題の方が未解決のままで終わってしまうことになります。ですから、現代の研究者はTRIZのような、問題解決に自由に活用できる技術を使いこなせることが必要となります。

 こうした目的のためにサークルで使った主な方法を下記に列挙しておきます:

  • 創造性を求められる問題について、急がず、ゆっくりと検討する(整理して考える)。例えば、ごく簡単な練習問題についても、教師は60秒間は回答を受け付けない。(生徒が様々なアイデアを考え、初期に思いついた雑なアイデアを捨てるための余裕を与えるため)
  • 一回の授業に数多く、しばしば15〜20の練習問題を使用する(こうした問題のイメージは付録1でご覧いただけます。)

例50
参考:優れた理論物理学者レフ・ランダウについて、雑誌を読む際に分野には一切こだわらなかった、就学中の若い時には物理学上の問題を解決する方法を意識しないために教科書に載っている問題を何百と解いた、膨大な量の物理雑誌を読んだ、それまでに得られていた様々な物理量を自分で計算し直した、などの神話が広く知られています。(参考文献6、p.203

  • よく知られているシステムについて、それと反対のシステム、上位システム、下位システムを挙げる。
  • 練習用の問題をTRIZの様々な手法(モデル)を使って、TRIZの専門用語にこだわらないで、検討してみる。比喩的に言えば、1つの理念を音楽、造形美術、線画など様々なジャンルで表現するようなことです。これは、以前に始めた教育の方向性を継続して、ある心のあり方から別のあり方に移行するだけでなく、思考上の1つのツール(モデル、ジャンル、方法)から別のツールに自由に移行することを学ばせるものです。なお、もちろん研究者はTRIZの主な方法を暗記していなくてはなりません。
  • 既に解決した問題を分析し、解決策に至る過程での誤り、解決策に到達する別の経路を明らかにする。別の経路が見つかった場合にはそれを方法の形に一般化する。得られた解決策を活用する新しい用途を探す。
  • 情報が不十分な状況で、難しい練習問題を解く。あるいは、課題を設定する前に、生徒たちは情報の信憑性を評価することを求められる。実践的な問題の解決策を検討し、得られた解決策の有効性の検証(マーケティング)を行う(参考文献1

 ここで、通常の教育に関連する問題に1つ触れておきたいと思います。それは、モチベーション、あるいはストレートに表現すれば「教育計画に織り込まれてしまっている、生徒にとって不必要で、彼らが嫌がる科目をどうやって学ばせるか」という問題です。私たちのサークルにはそういった問題はありませんでした。そうなることに最も効果的だったものが2つあります。第一は、出欠は自由ということです。創造性は強制しなくても教えることができますし、強制せず、学ぶのが好きだから学ぶようにするべきです。第二は、初めて自分で解決した問題、初めて作った動く試作品、本物の大人の技術者の賞賛といったことが自然に、さらに成長したい気持ちを引き出してくれます。 20世紀末は創造ということが普通の生き方になっている時代です。(99.9%の人々について、慣れ親しんだ行動や思考の習慣が創造のレベルまで到達するのを妨げていることは別の事情です)

 ここまでは既に完成されている思考モデル、方法、問題解決法について書いてきました。しかし、学問の課題は何よりもまず研究している現象について自分で新しいモデルを創り出すことにあります。これに関連して次の点に触れておかなくてはなりません。 19世紀、20世紀のヨーロッパの優れた科学者の伝記によると、彼らは家庭生活において、あるいは学生時代にマルクス主義の文献に関心を持ったことがあるといえます。私たちはそうしたことが書かれていることを単に過去のイデオロギーの遺産ではないと考えたいのです。それどころか、問題はマルクス主義なのではなく、一般的でない、むしろ禁断的な世界観にあるのです。(なんらかの精神的な問題を抱えた人々は、ごく自然にこうしたものの見方をするようになります)

 テイーンエージャーを相手に教えた経験に基づいて、TRIZにしろ他の何かにしろ一点張りの狂信者を育ててしまわないためには、身の回りのものや研究対象とする現象について複数の多様なモデルを使いこなすことを初めから教えておくことが極めて有益だと私は確信しています。

例51
当時のハーバード大学は哲学研究が盛んな場所でした。ウォルター・リップマン(将来の「アメリカ政治学の父」、注:I.L.ヴィケンチエフ )の場合、哲学は1908年の秋のある朝、大学2年生だった彼の住む質素な家の戸口に灰色の髭をした立派な身なりの老人、当時のアメリカ哲学の大立者の一人ウィリアム・ジェームズ教授、が立ってドアをノックするという形で訪れました。教授は家に入ってきてリップマンが学生新聞に素晴らしい記事を書いたことを祝福してくれたのですが、この予期せぬ訪問がきっかけとなってジェームズの家で決まって紅茶を飲みながら、永遠の真理から日常的な出来事に至るあらゆる問題について議論する一週間にわたる対話が始まることになりました。老いた哲学者はこの生き生きとした極めて感受性に富む崇拝者に惹かれ、一方で、初めてのお茶の後で「私の大学生活で最高の出来事」と両親に書き送っているように、この対話はリップマンにとって真の学びの場となったのです。参考文献8、p.13

 このように、1つの問題について様々な見方を自由に使い分けること、ある現象について1つのモデルから別のモデル移行すること、公的に認められた真理を複数の可能性の中の1つと捉えられること、こうしたことは研究者となり研究者であり続ける上で有益なことなのです。

 このような狙いから、1年目のクラスの12–14才の生徒を対象とするトレーニングでは、次のような手段を用いました:

  1. 教師は生徒のアイデア、レポート、学習状況やその成果を多様な基準を使って評価する。例えば、感覚的評価(前のモノより「こちらの方が良い、悪い」、「先生の好みだ、好みじゃない」)、合理的評価(新規性、使いやすさ、有益生、再現性、など)。レポートや成果についてのより詳細な評価基準については書籍の形(参考文献2)で公表しました。必要に応じて、具体的な問題に対応する特製の評価基準を作るようにします。(大きな理論や概念を生みだしたダーウィン、メンデレーエフ、ボーア、パブロフなどの学者が、怒りっぽいパブロフを含めて、当時の人々の評価として優しい人だと受け取られている事実は、ある意味で教訓的です。どんな意味で優しかったのでしょう。大きな一般性をもった理論を打ち立てる際は、疑問が残っている時に、事実を曲げず、自分の考えや意見は正しいのだと自分に言い聞かせるようなことはせず、自分に対して正直でなくてはなりません。大きな理論は提唱者一人が実験しただけで創られることはありません。敵意や偏見のない他の人の観点に立ってみるほうが大きな理論は生みだしやすいのです。)
  2. 教師が説明の中に故意に間違いを入れて生徒たちに発見させる。生徒が教師の言うことを批判的に聞くことに慣れてくると、教師は自分の説明の根拠を示し、生徒たちを説得し、しばしば自分が間違っていたことに同意しなくてはならなくなり、こうなると「間違いの織り込み」はもはや不要となります。生徒たちは教師の言い間違いや考えの足りない点に敏感に反応し、こうしたコメントを通じて教師を育ててくれるようになります。ここまでくると、学習は教師対生徒という関係よりも、仲間同士がお互いに協力し合う関係になってきます。
  3. 突っ込んだ質問をすることを教える。例えばクラスに招いたゲストに対して普通ならば「新しいご本(研究、企画)はどんな内容かお話いただけますか?」と質問するところを、サークルの生徒たちは「新しいご本(研究、企画)はどんな点で類似のものと違うのでしょうか。どの点が優れていて、どの点で劣りますか。研究の中で未解決として提起されている問題はどんなことですか。創られたモノが遠い将来もたらすかもしれない悪影響としてはどんなことがありますか?」等々の質問をするようになります。

注:こうした手段、時に「教師の間違い探し」や「突っ込んだ質問」は教師が惰性に陥いることなく成長し続けることを助けてくれます。回想録によれば、著名な映画監督のミハイル・ロンムは自分が教える生徒たちに向かって「私が皆さんにとって必要なのより、もっと多く、皆さんが私にとって必要なんですよ」と言っていたとのことです。

  1. 未解決の問題があることを平然と受け入れる。なんらかの問題の解決が難しい(つまり、差し当たり解決策が思い当たらない)としても、言い訳を探したりなんらかの権威に頼るなどして、その問題から逃げたり、ごまかしたりしないようにする。自分のためを思うなら、しかるべく、平然と未解決の問題を確認し、整理し(書き留めておいて)、折に触れて立ち戻って考えてみるようにしなくてはなりません。(例えば、チャールズ・ダーウィンはそのようにしていたと言われます。)具体的には、キーワードを書き留めておいたり、(未解決の)「問題リスト」にスケッチを描いておいたりということになります。こうした「問題リスト」は定期的に取り出して考えてみるようにすると良いでしょう。仕事や散歩の際に問題を1つ頭に入れておくなどして、自分を未解決の問題で「充電」しておくようにしなくてはいけません。「問題リスト」に関わる間違った取り扱いの典型的なケースは、無意識のうちに、リストをどこかにやってしまい、問題を解決することから免れようとする気持ちになってしまうことです。このようにして、脳というものは働かされること、考えることに抵抗するのです。考えること(問題を解決すること)を逃げるもう1つのあり方は、読書によって秘密の答えを探そうとしたり、誰か答えを知っている人に聞いてみようとすることです。
  2. 研究が袋小路におちいって(どうしても解決できない問題があって)も全く動じないこと。この場合には、研究を中断し、すこし「熱を冷まし」、その研究と離れた分野の別の研究に切り替えたり(スポーツや旅行など)感情が高まる機会を作ったりしてから、もう一度その問題に取り組んでみると良いでしょう。

サークルでの学習が2年目に入ると以上に加えて:

  1. 授業ごとに生徒が「葛藤学」「ストーリーの構築」「ティーンエージャーの自殺の原因」「様々な文化とセックス」といった広いテーマについてレポートを発表し、続いてクラスでレポートの主旨と形式についての総括や個々の論点について議論する。ここで、上の例51で触れたウィリアム・ジェームズが学生を相手に繰り返し語っていた「人は自ら今日までに明らかにした真理に基づいて生きなければならないが、明日にはその真理が間違っていると言う心構えが無くてはならない。」{原文:“we have to live today by what truth we can get today and be ready tomorrow to call it falsehood” William James}という言葉を紹介すると面白いと思います。
  2. 広報宣伝やジャーナリズムに関わる問題への対策案作りについてのレポートと議論については参考資料5で紹介しています。

 以上の手段をしっかりと理解して手を打ったとしても、実際の研究の過程では常に失敗が生じてしまいます。そうした失敗のあるものについてはあらかじめ知識を持っておく必要があります。そこで、研究について学び始めた当初の生徒が冒しやすい典型的な失敗のリストを以下に挙げておきます。

  • なんとかして「世界の公式」、つまり、あらゆること、あらゆるモノについて説明をつけてしまうモデルを発見したいという止みがたい欲求。多くの若者が、そういったモデルを発見することができないために、偽りの安らぎを与えてくれる宗教や神秘主義に入って行くのはごく自然なことです。(私たちのサークルでは、そのようなことはありませんでした。)
  • どのように難しい仕事でも、必ず最初から、素早く、天才的な形で成果を挙げようとする。(ところが、既に書いてきたことですが、良い仕事を仕上げようとしたら、じっくりと考えて、仕上げの手間をかけ、しかも何度もやり直しをすることができなくてはならないのです。)
  • 初めにうまくいった研究の細かい改良をおこなう。(奇妙かもしれませんが、——創造性を養う上での——最善の忠告は初めにやりかけた仕事を放棄して、それと異なる分野の問題に取り組むようにすることです。もう1つの忠告は、同時に様々な分野のテーマと取り組み始めることです。これは「1つのモデルによって自分に限界をつけてしまうこと」つまり、ドグマチズムを避けるには良い方法です。)
  • 自己陶酔。新しい目標を持たないこと。

指針 2

他の章で既に述べられたこととの重複をはぶいて、研究者の育成過程で生徒たちに教えたいことを下記します。

  1. 研究に用いる様々なツール(TRIZ、システム分析、破壊工作分析{AFD}、論理学、各種の評価基準)を完全に自由に使いこなし、状況に応じてこうしたツールを変形したり、相互補完的に組み合わせたりする能力
  2. 自分や他人の失敗に気づき、訂正する能力。ここには、教師を建設的に批判して更に成長させること、一度発見したアイデアを他の形で活用すること、頭に浮かんだ考えを——たとえその帰結が自分に都合の悪いことでも——徹底的に考え抜くことが含まれます。(心理学者のA.N.レオンチェフが言っていることですが「意識されたことのないことが、偶然、意識にのぼることはない」からです。)
  3. 既知の認知モデルを用いるだけで無く、自分で新しいモデルを作って使うこと
  4. 自分で発明や発見をすることに楽しみを見出すこと

まとめ(一般論)

 文献に書かれていることを概括すると、CPの出現を早い段階で(一切保証するわけではありませんが)促進するのは高い(見せかけでない)識見を持った指導者だということが確認できます。その識見には次が含まれます:

  1. 生徒、周囲の人々、世界への愛
  2. 創造的な世界観、日常的な水準もふくめ創造的で大胆な行動
  3. 生徒とその知識を自由に成長させたいという思いとそれを実現する力
  4. 生徒の成長に対する個人的な責任感。アルトシューラとビョールトキンの研究に基づく仮説によれば、将来CPとなる子供の成長の早い時期では少なくとも次の2つの特質を持った「不思議との出会い」が大切とされます。
    • 通常の環境の中の普通でないこと
    • 「子供騙しでなく」「自然発生的なこと」。文献から見えてくるのですが、人格形成のこれより遅い時期、創造的な人が自分が生きてゆく方向を選択するにいたる過程にはしばしば、なんらかの形で相互に結びついて一体となった一連の奇跡的な出来事が起きています。こうした出来事は、一方では、人間がほとんど意識するかしないかというところで起きていて、他方ではその人の関心と響き合うところを持っています。ということは、そうした出来事を筋の通った形で説明することはできません。ところが、将来のCPは新しい真理の探求の乗り出さざるを得なくなるのです。

 上級生を対象とするTRIZの授業を通じて得られた実験的なデータによれば(意思の力で目的を達成しようと努力できる、集中することができる、くつろぐことができる、などの)一般的な能力の他に次のことを生徒に教えることが望まれます:

  1. 日常的な状態から、熟慮、創造、集中といった状態への切り替えができること、そして、一番大切なのはその逆の切り替えもできること
  2. 自分がよく冒す失敗を冷静に認めることができること、自分が何をしようとしていたか、何を考えたか、何をしたか反省することができること

 難問の解決に挑む、膨大な研究を行うといったより深い仕事をするためには、生徒に次のことを(TRIZも用いて)教えることが望まれます:

  1. 研究に用いる(TRIZまたは別の学問や分野から採用した)様々な思考ツールを完全に自由に使いこなし、状況に応じてそれを変形する。自分自身の失敗を認めることができる。すでに発見したアイデアを活用する別の用途を見つけることができる。
  2. 全く同じ出来事、現象について、感覚的に、あるいは論理的にと自由に切り替えて検討することができる。同じ現象に対して相互補完的な様々な研究モデルを適用することができる。既存の理論やモデルを建設的に批判できる、また、教師を言葉でだけでなく行為において更に成長させることができる。

付録1
TRIZ学校で小・中学生に教える際に用いる典型的な問題の例

 教育技術の観点から暫定的に、TRIZの教育に用いる問題を3つのタイプに分類することができます:

 ここでは、TRIZのルールに従った問題の解決ステップ、実践的な問題解決に関連する実験データの紹介は割愛します。これらは、ご自身で情報を探索していただければ見つけていただけます。ここでの目的は、単に典型的な問題とはどんなものかというイメージを持っていただくという別のことだからです。

 以下に、それぞれのタイプの問題がどんなものか紹介いたします(問題1とは、V.I.チモーホフとD.N.トリフォーノフが小・中学生の学習に推奨している問題です)。

練習用の問題

以下の各問題には原文内に解答例が紹介されているものもありますが、当ページでははじめはその内容を隠しておくようにしました。設置したボタンをクリックすると表示される仕組みです。 Javascriptを使用していますので、Javascriptが無効になっているとボタンが使用できません。その場合はページ末尾をごらんください。(翻訳者)

問題1
ヒヒとみかん

 南アフリカのトランスバール地方の農民がみかんを栽培していましたが、ここ数年ヒヒの群れがやってきて収穫がほとんど台無しという状態です。どうしたら良いでしょうか?

解答例(これだけが正解というわけではありません)

農民はみかんの木の間にレモンの木を植えました。ヒヒは甘いみかんを食べるつもりが酸っぱいので驚きました。実験を始めてほぼ半年たつとヒヒはその農園に関心を持たなくなってしまいました。

問題2
競馬で「ドーピング」

 コロンビアの首都ボゴタの競馬場で、一頭の馬がスタートと同時にダッシュをかけてそのまま一着でゴールしてしまいました。審判は何かがおかしいと考えました。ところが、ドーピング検査では何も見つかりません。馬の動きからすると{ボゴダの競馬では禁止されていた}拍車を使ったように見えますが、拍車も見つかりません。どうやって馬を全速力で走らせたのでしょうか?

解答例

やはり極めて巧妙に「拍車」が使われたのでした。ジョッキーは鞍の下にドライアイスのかけらを入れておいたのです。冷たくて痛いので馬は全速で駆け出しました。ドライアイスはゴールに入った後で溶けてなくなってしまったわけです。

問題3
爆発から守る

 ダムの取り壊しなどで水中で爆発を起こさせると、魚が死んでしまうことは避けられません。原因は猛烈な衝撃波です。爆発が魚にもたらす被害を軽減させる簡単な方法をいくつか提案してください(方策は複数考えられます)。

解答例
  1. 大きな爆発ではなく、小さな爆発を何度か起こして目的を達成するようにする。これなら被害はそれほど大きくない
  2. 実際の爆発を起こさせる前に「合図」となる小規模な爆発を起こして魚を驚かせて遠くに退避させる
  3. ダムなどの底にパイプを通し、そこから空気を送り出して水中に泡のカーテンを作る。これによって衝撃波が砕かれて部分的に力を失う

実践的な問題

問題4
タイヤへの塗料付着防止

 キーロフ工場の検査基準では出荷時のトラクターのタイヤには車体色である黄色あるいは赤の塗料が付着していてはいけないことになっていますが、車体検査の後にエアスプレーを使って手作業で仕上げ塗装をする際にどうしてもタイヤに塗料がついてしまいます。

現在キーロフ工場で実際に使っている方法:
  1. 溶剤を使って手作業で塗料を落とす
  2. 黄色や赤の塗料の上にタイヤと同じ黒の塗料を塗って隠す
  3. 仕上げ塗装の際にタイヤを布で覆って保護する。ただし、何回か塗装をすると布に塗料がつき、その塗料がタイヤについてしまうことがある
  4. 仕上げ塗装の前にタイヤを外し、塗装が済んでからもう一度はかせるという案を検討中
生徒たちの試験的なアイデア:

仕上げ塗装の前にタイヤの塗料がつく恐れのある箇所を泡で覆い、塗装が済んで塗料が乾いてから泡を洗い流す。

問題5
鉄道のポイント(分岐器)を雪から守る

 寒い時期に鉄道のポイントに雪が詰まったり凍りついて動かなくなってしまうことがあります。

実際に使われている方策:
  1. 手作業で雪や氷を取り除く
  2. 送風機で風を送って雪を吹き飛ばす
  3. 電熱線を使って加熱する(5mの長さの分岐器)
  4. 上記1–3の組み合わせ
生徒たちの試験的なアイデア:

ポイントの間にフォームラバーのような多孔性物質に古いオイルなどを沁み込ませたものを置いておく。

フォームラバーは柔らかいのでポイントの動きの邪魔はしないが、ポイントの間に雪が入り込むことは防いでくれる。オイルを沁み込ませておくのは水が沁み込んで低温時にフォームラバーそのものが凍りつくことを避けるため。

{参考:日本では、上記の他に温水ジェット、融雪マット、ポイントに屋根をかけるなどの方法も使われています}

研究的な問題

問題6

{螺旋とは回転しながら回転軸と垂直方向に上がって行く曲線です。}産業で活用されている螺旋の中で最も多いのは紀元前287–212年頃に生きていたとされるアルキメデスの作った螺旋{水平面の投影図が等間隔に中心軸から広がって行く螺旋}です。特許情報を見ると20世紀以上経った現在でも螺旋の形態はアルキメデスが考えた時代から大きくは変わっていないように見受けられます。

そこで課題です:

アルキメデスの螺旋と異なる螺旋を少なくとも10個考え出して、それを産業、日常生活でどのように利用することができるか考えてください。サークルのリーダーに相談しても結構です。授業中に全員で議論する中で見つかった螺旋は3–4個までは使っても結構です(活用アイデアは自分で考える)。

考え方のヒント:

ツヴィッキの形態素分析と技術システムの進化の法則の組み合わせ

問題7

研究的な問題には最終的な正解というものはありませんから、以下では問題の条件だけ紹介して、読者の皆さんに自分で解決する機会を差し上げることにしたいと思います。

課題1

 次の表現について考え、その表現を「肯定的に(ほめるために)使った場合」と「否定的に(けなすために)使った場合」の模範例を作ってください。そして、肯定的例・否定的例の作り方を考えてください。

 また、どちらの模範にも当てはまらない例外(の使い方)を探してください。

  • 「同義語 — びっこの女神」
  • 「この馬は『アラビアの名馬』のようだ。水を運ぶのを嫌がる」
  • 「アメリカを追った者」
  • 「馬鹿とは、はまり込んだ車だ」
  • 「巨大なものが動き、波をかきわけた」
  • 「砕けた情熱」
  • 「ただ剣を振り上げただけでなく、勝った」
  • 「こうした市場の状況は『製材機のおがくずの山』と言える」
  • 「この友情は、次の曲がり角までだ」
  • 「しかし、彼らは舷側を剥ぎ取ると、あらかじめ選んだコースに沿って進んだ」
課題2

 上のタイプの比喩作りを手順を踏んだ方法の形に整理してください。

付録2

I.M.ヴョールトキン「創造的な人とは」(抜粋){ロシア語サイトへのリンク}
http://www.triz-chance.ru/researchers_pril2.html

参考文献

  1. I.L.ヴィケンチエフ「TRIZ教育のステップと教育上のテクニック」 {当サイト内に翻訳を紹介しています。}
  2. I.L.ヴィケンチエフ「TRIZ関連研究の論評の経験」、『TRIZジャーナル』No.3., 1991, pp.82-87(Викентьев И.Л., Опыт написания отзывов на разработки по ТРИЗ. "Журнал ТРИЗ", 1991 г., № 3, с. 82 - 87.)
     この論文ではTRIZに関する研究論文を分類評価する方法がチェックリストの形で提案されています。
  3. I.L.ヴィケンチエフ「サンクトペテルブルグにおけるTRIZ教育の経験から:小・中学生の発明学習の運営」、トリアッチ市、ボルガ自動車工場研修センター、1990, pp.23-60 (Викентьев И.Л., Опыт обучения теории решения изобретательских задач в Сб.: Организация изобретательской работы школьников. Опыт обучения теории решения изобретательских задач. Учебный центр ВАЗа, Тольятти, 1990 г., с. 23 - 60.)
     本書ではTRIZ、教育の原理、実験的に生徒たちに解かせた7つの実践的な問題、3つの小さな研究的な問題について簡単に説明されています。
  4. S.V.ラーニン、S.Y.モデェストーフ「ティーンエージャーにTRIZを教える際に用いたエクササイズ」、『TRIZジャーナル』No.4., 1991, pp.53-55(Лалин С. В., Модестов С. Ю., Некоторые упражнения, использующиеся при обучении подростков ТРИЗ. "Журнал ТРИЗ", 1992 г., № 4, с. 53 – 55.)
     この論文では「若き発明家」ラボでの学習の際に、独自の雰囲気をつくるのに役立った生理心理的エクササイズが手みじかに紹介されています。
  5. I.L.ヴィケンチエフ「ジャーナリズムのテクニックについてのカードファイル(短縮盤)」、『TRIZジャーナル』No.5., 1992, pp.56-68(Викентьев И.Л., Картотека приемов журналистики (сокращенный вариант), "Журнал ТРИЗ", 1992 г., № 5, с. 56 - 68.)
  6. I.M.ハラトニコフ責任編集『レフ・ランダウの思い出』、モスクワ、ナウカ出版、1988(Воспоминания о Л. Д. Ландау/Отв. редактор И.М. Халатников, М., "Наука", 1988 г.)
  7. V.クズネツォフ「フォーチュン、官能、そして騙された俗物について」、『サンクトペテルブルグ新報』1994.7.2(Кузнецов В., О "Фортуне", эротике и обманутом обывателе, газета "Санкт-Петербургские ведомости" от 02.07.1994 г.)
  8. V.O.ペチャトノーフ『ウォルター・リップマンとアメリカの道』、モスクワ、国際関係出版、1994(Печатнов В. О., Уолтер Липпман и пути Америки, М., "Международные отношения", 1994 г.)
  9. I.M.ヴョールトキン「たたかい、探す……創造的な人とは」、A.B.セリューツキー編『論文集 迷宮の糸』、ペトロザヴォーツク、カレリア出版、1988、pp.7-94(Верткин И. М., Бороться и искать... О качествах творческой личности, в Сб.: Нить в лабиринте/ Сост. А.Б. Селюцкий. Петрозаводск, "Карелия", 1988 г., с. 7-94.)
書誌
Викентьев. И.Л.
О подготовке исследовке исследователей.
// Березиная В.Г., Викентьев И.Л., Модестов С.Ю. Детство Творческой Личности: Встреча с Чудом. Наставники. Достойная цель.— Спб: "ТРИЗ-ШАНС", 1995.— с. 30-40, 51-57.
(http://www.triz-chance.ru/researchers.html)

問題の解答例

(練習用の問題)

問題1
ヒヒとみかん
解答例(これだけが正解というわけではありません)

農民はみかんの木の間にレモンの木を植えました。ヒヒは甘いみかんを食べるつもりが酸っぱいのでで驚きました。実験を始めてほぼ半年たつとヒヒはその農園に関心を持たなくなってしまいました。

問題2
競馬で「ドーピング」
解答例

やはり極めて巧妙に「拍車」が使われたのでした。ジョッキーは鞍の下にドライアイスのかけらを入れておいたのです。冷たくて痛いので馬は全速で駆け出しました。ドライアイスはゴールに入った後で溶けてなくなってしまったわけです。

問題3
爆発から守る
解答例
  1. 大きな爆発ではなく、小さな爆発を何度か起こして目的を達成するようにする。これなら被害はそれほど大きくない
  2. 実際の爆発を起こさせる前に「合図」となる小規模な爆発を起こして魚を驚かせて遠くに退避させる
  3. ダムなどの底にパイプを通し、そこから空気を送り出して水中に泡のカーテンを作る。これによって衝撃波が砕かれて部分的に力を失う

(実践的な問題)

問題4
タイヤへの塗料付着防止
現在キーロフ工場で実際に使っている方法:
  1. 溶剤を使って手作業で塗料を落とす
  2. 黄色や赤の塗料の上にタイヤと同じ黒の塗料を塗って隠す
  3. 仕上げ塗装の際にタイヤを布で覆って保護する。ただし、何回か塗装をすると布に塗料がつき、その塗料がタイヤについてしまうことがある
  4. 仕上げ塗装の前にタイヤを外し、塗装が済んでからもう一度はかせるという案を検討中
生徒たちの試験的なアイデア:

仕上げ塗装の前にタイヤの塗料がつく恐れのある箇所を泡で覆い、塗装が済んで塗料が乾いてから泡を洗い流す。

問題5
鉄道のポイント(分岐器)を雪から守る
実際に使われている方策:
  1. 手作業で雪や氷を取り除く
  2. 送風機で風を送って雪を吹き飛ばす
  3. 電熱線を使って加熱する(5mの長さの分岐器)
  4. 上記1–3の組み合わせ
生徒たちの試験的なアイデア:

ポイントの間にフォームラバーのような多孔性物質に古いオイルなどを沁み込ませたものを置いておく。

フォームラバーは柔らかいのでポイントの動きの邪魔はしないが、ポイントの間に雪が入り込むことは防いでくれる。オイルを沁み込ませておくのは水が沁み込んで低温時にフォームラバーそのものが凍りつくことを避けるため。

{参考:日本では、上記の他に温水ジェット、融雪マット、ポイントに屋根をかけるなどの方法も使われています}

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