日本語で本格的にTRIZを学びたい人のためのサイト

入門

A.S.トカレフ「40の発明原理適用例」

ここに挙げるA.S.トカレフの資料はアルトシューラによる40の発明原理を単一の課題に対してそれぞれどのように適用することができるかを示しています。ここでは駐車場を降雪の障害から守る課題が取り上げられていますが、もちろん、紹介されている例によって現実の問題を解決できるとしているわけではありません。これらの例はなにより発明原理がどのような思考操作を示唆しているのかを示す説明として興味深いと言えます。アルトシューラが40の方法のリストを発表して以来今日までの長い間にこのツールの実践的な使い方については一定の経験が積み重ねられてきました。その一方で発明原理の学習では、通常、種々の技術分野に取材した限られた数の事例による説明が行われてきました。圧倒的に多くの場合こうした説明用の事例となっている技術開発を行った当の技術者は発明原理を実際に使ったわけではありません。これら2つの要因(説明用の事例の数が限られていることと、実際に発明原理を使って行われた説明用事例の数が極めて少ないこと)は発明原理が実践に役だつ思考法の体系であるという説得を難しくしています。この資料はこの問題に部分的に対処する目的でここに紹介するものです。発明原理の全体像を1つの課題をめぐって説明できることが教師の役にたつものと思います。

{ロシアのTRIZ研究サイト "Методолог" http://www.metodolog.ru の}管理人

{ }内翻訳者。以下同じ。

この論文には著作権があります。
日本語の翻訳の著作権はサイト管理者にあります。
無断転載は禁止いたします。

(原文:http://www.metodolog.ru/00863/00863.html

40の発明原理適用例

A.S.トカレフ

私立モスクワ技術創造大学
2005/2006期
卒業論文2部
TRIZのツールを適用した課題集

「技術矛盾解消法」(アルトシューラによって提唱されたもの。詳細は http://www.trizstudy.com/altshuller1973.html を参照。{以下通称に従い「発明原理ターム」とします})はTRIZの主要な要素の1つです。発明原理は技術開発上の課題に対する解決策を大量に分析しそれを一般化することによって得られたものです。今日では技術開発のみならずビジネス、広告宣伝の分野でも活用されています。

ここでは以下の問題に関連して発明原理を検討します。

問題:

冬期の駐車場は降雪によって車や人の通行が困難になります。

分析的に解決することができるのは課題ですから、方法の適用に先立ってまず問題を課題の形に捉え直す必要があります。問題タームとはそれを問題と捉えた人が持つ否定的な感覚です。一方で課題タームは当初の状況と求められる結果がどのようであるかを含むものです。従って、まず問題解決の方向性をおおまかにでも決めておかなくてはなりません。続いてそれを課題設定の形に具体化することになります。我々のケースでは次のような問題解決の方向が考えられます:

  1. 歩行者および車の移動手段を改良する。現在、人用にはスキー、カンジキ、そり、スノーモービル、自動車用には冬用タイヤ、チェーン、無限軌道がある。これらを改良するアプローチが考えられる。
  2. 降った雪を取り除く。現状の除雪方法としては、除雪自動車(ブレードで雪を斜め横にどかして走る)、除雪車(ローターで雪を掻き上げて横または後ろ方向に投げとばす)、ダンプトラック(除雪車の飛ばした雪を積んで他の場所に持って行く)、融雪ステーション(ダンプトラックが運んできた雪を溶かす)、融雪材(雪に混ぜて溶かす化学品)がある。これらの改良に取り組むアプローチが考えられる。
  3. 道路、歩道に雪が降らないようにする。現状の手段としては屋根、ノキやヒサシがこれにあたる。

ここでは、この中から3.で触れた既存の手段(これを技術システムタームととらえます)の改良を検討することにします。

降雪に対する対策としてヒサシ{屋根の一種とみなし以下「屋根」とします}を用いることは古くからあることですが、現在の社会ではコストを低く抑えることも考慮に入れる必要があります。ここから新たに、次のより限定された問題を取り出すことができます。「駐車場に屋根をつけて雪が降り込まないようにしようとすると建設コストがかかってしまう。」これは次の管理上の矛盾タームと捉えることができます:

  • 屋根のコストを下げなくてはならない。
  • しかし、その方法がわからない。

この形ではまだ課題と呼ぶことはできません。出発点となる情報が与えられていませんし、望む結果も特徴付けられていません。この管理上の矛盾を技術的な課題の形にするためには条件を具体的にしなくてはなりません。そのためには解決策の対象あるいは基礎となる技術システムを特定する必要があります。ただし、結果として得られる解決策が現存の技術システムと似通ったものでなくてはいけないわけではありません。

出発点とする技術システムは「柱を立ててそこに屋根をのせたもの」ということにします。

発明原理を適用して解決する対象になる技術的矛盾タームを取り出すには、対象の技術システムにおいて相矛盾する状況を同時に存立させることを求めている技術的なニーズを明らかにしなくてはなりません。技術システムの主機能から「駐車場の床に雪が降らないこと」という1つの技術的ニーズをとりだすことができます。「コストが低いこと」というニーズはそのまま屋根の技術的な仕様を示唆するわけではありませんから技術的ニーズということはできません。ですから「コストが低いこと」というニーズは技術的には何を求めているのかを明らかにして矛盾を取り出さなくてはなりません。私たちのケースで「コストが低いこと」に対応する技術的ニーズをどう捉えるか複数のバリエーションを考えることができます。幾つか検討してみましょう。

屋根のコストは基本的に材料のコストと建設工賃のコストとの和です。通常の建設作業では工賃のコストは材料のコストに比例します。他方で、工賃のコストはまたもや技術的な仕様とは言えませんので、これに基づいて解決策に向かって前進するわけにはいきません。材料のコストはカバーする駐車場の面積、これは発注者が決めることになります、に比例するといえます。次に、柱と屋根という構造に目を向けましょう。屋根の面積も駐車場の面積に比例します。最後に残った技術的仕様としては屋根の厚さ、柱の数と配置、柱の断面積をあげることができます。

ここで特に強調しておくべきことは、これまでにあげてきた特性(例えば、屋根の厚さ)は今後私たちが新しいアイデアを「釣り上げる」ためのいわば「エサ」なのであって、何を選んだかということが課題の解決に決定的な意味を持つというわけではないという点です。どんな特性を選ぶか、それについてどんな技術的ニーズを設定するかによって課題を解決する道筋に様々な可能性が生じますが、どの道筋を通っても解決策までたどり着かなくてはなりません。もしある状況で選んだ「エサ」では現実的なアイデアを「釣り上げる」ことができないとわかったら、別のエサ(例えば、屋根の単位面積当たりの柱の数)、第3のエサとうまくゆくまで選んでゆくことになります。さらに言えば、下に示されることですが、結果として得られる解決策が、当初選んだ諸特性とも、当初の技術システムの構造ともほとんど共通性を持たないことはしばしばあります。

ここでは屋根の厚さという特性を選択することにします。単位面積当たりの屋根の素材のコストを最小限にするには屋根の厚さを最小限にしなくてはなりません。こうして「低コスト」という経済的な基準を「最低限の屋根の厚さ」という技術的な特性に置き換えることができました。

ここまでくると技術的矛盾を定式に沿って次のように規定することができます:

  • 屋根の厚さを厚くすると雪の重さを支えることができる、しかしコストが大変高くなってしまう。
  • 屋根の厚さを薄くするとコストを低くできる、しかし、雪の重さを支えきれず壊れてしまう。

こうして、{矛盾解決の鍵となる}対立関係にある対タームを取り出すことができました。このうち技術システムに含まれるものは屋根だけですから、課題を達成する過程で変化させるものは基本的にはこの屋根ということになります。(ケースによっては、発明原理を適用する対象を「雪」とすることもありえます。この場合には、雪そのものが厚く積もった雪の有害な影響と戦う我々の目的を達成するための資源であるととらえるわけです。)

注意深い読者はお気付きのことと思いますが、ここまで検討してきた中には屋根の有益な機能に関連する矛盾の要素である相互に対立する特性の対がもう1つあります。それは、雪を通さないことと雪の重みを支えることとです。この2つは同じことのように見えますが次の違いがあります。「雪の重みを支えること」は雪が屋根の上に積み重なって常に屋根の上に在ることを想定しています。「雪を通さないこと」はこれより広い意味をもち、駐車場を守る屋根の機能を正確に述べている以外には雪がどうする、どうなるということについて予め何も規定していません。つまり、雪を支えることについては触れていません。屋根の厚さを必要にしているのは通常のやりかただと支えなければならない雪の重さだということを考慮すると「雪の重さを支えること」が矛盾の焦点になっていることがわかります。「雪の重さを支えること」を度外視すれば、屋根を厚くして頑丈さを増やす理由は見つからなくなります。

以下、上の課題の解決を目的として発明原理を使う例を、発明原理ごとにすべて取り上げてゆきます。

以下の例は次のようになっています。

  • 発明原理の名前
  • 発明原理の内容(考え方)
  • ここで取り上げた課題に発明原理を適用するアプローチ
  • そこから導き出される解決策アイデア

発明原理の名前と内容はアルトシューラによるもの(http://www.trizstudy.com/altshuller1973.html)です。アルトシューラは発明原理の適用の仕方についてコメントしていませんので思考法を扱った他の方法に関する著作(ヘーフェレのメモ帳法 http://www.trizstudy.com/aboutobzor.html#haefele)からとって用いました。注釈をつけておかなくてはなりませんが、以下に挙げる発明原理の適用の仕方、いわんやそこから得られた解決策アイデアは唯一可能な考え方というわけでなくたんに1つの例でしかありません。現実のケースで発明原理を適用して得られる考え方は経験、知見、空想、資源をみるものの見方、状況の特性、その他の使う人の心の中で生じる様々なプロセスによって左右されます。

発明原理1. 分割(細分化)の原理

  1. 物体を相互に独立した部分に分ける。
  2. 物体を分解可能にする。
  3. 物体の分割の度合いを大きくする。

適用アプローチ:

屋根を数多くの小さな部分に分けて一つづつ専用の柱に乗せます。柱が雪の重さを支えてくれるので屋根は薄くできます。

解決策アイデア:

駐車場の屋根を小さな屋根に分割してそれぞれ専用の支柱で支えるようにします。このアイデアを採用すると、支柱の数が非常に多くなる問題が直ちに生じますからこのアイデアは中間的なアイデアに過ぎません。解決策アイデアのイメージ

発明原理2. 抽出の原理

  • 物体から障害となっている部分(障害となっている特性)を取り去る、または逆に必要な部分(必要な特性)だけを取り外す。

適用アプローチ:

障害となっているのは屋根の厚さです。厚さが必要なのは屋根に曲げの負荷がかかり材料にかかる応力が大きくなるからです。もし負荷を張力だけにできれば応力はずっと小さくなります。

解決策アイデア:

建物あるいは支柱に固定した数多くの細いワイヤーによって屋根を吊り下げます。解決策アイデアのイメージ

発明原理3. 部分的性質の原理

  1. 物体(あるいは外部環境、外部の作用)の均一な構造を変えて不均一にする。
  2. 物体のさまざまな部分がそれぞれ異なる機能を持つ(実現する)ようにする。
  3. 物体の各部分が、その部分の役割に最も適した状態となるようにする。

適用アプローチ:

屋根には雪を通さないことと雪の重さを支えることとの2つの機能がありますから、その2つをそれぞれの機能に特化した別々の要素に振り当てます。

解決策アイデア:

屋根を2つの層から作り1つの層は雪を通さない機能を、2つ目は重量を支える機能をもつようにします。解決策アイデアのイメージ

発明原理4. 非対称の原理

  1. 物体を対称形から非対称な形に変化させる。
  2. 物体がすでに非対称形となっている場合には、非対称の度合いを大きくする。

適用アプローチ:

当初の技術システムは支柱の上に載った平面です。平面を斜めにすることによって非対称にすることができます。

解決策アイデア:

屋根を斜めに傾けます。これによって屋根の単位面積当たりの荷重を小さくします。また、傾けることによって雪は屋根の上に積み重ならずに滑り落ち、これも荷重を小さくします。解決策アイデアのイメージ

発明原理5. 組み合わせの原理

  1. 複数の同種の物体、あるいは、類似の操作を施すことになっている物体を一体化する。
  2. 複数の同種、あるいは、類似の操作を時間的に合体させる。

適用アプローチ:

隣り合った屋根を組み合わせて一体化し、これによって支柱の数を減らし、また、屋根を強固にします。

解決策アイデア:

屋根全体を一体構造にし、利用できるものはなんでも(建物、建物の柱、キオスクなど)使って支柱の代わりにします。解決策アイデアのイメージ

発明原理6. 汎用性の原理

  • 物体が複数の異なる機能を実現するようにし、それによって他のものの必要性をなくす。

適用アプローチ:

屋根が{本来の機能に}追加して他の機能を持つようにします。例えば、床の機能。

解決策アイデア:

駐車場の上に階を追加してオフィスや倉庫として利用します。解決策アイデアのイメージ

発明原理7. 入れ子の原理

  1. ある物体を別の物体の中に入れ、その第2の物体をさらにまた第3の物体の中に入れる、等々繰り返す。
  2. ある物体が、別の物体の中(の空間)を通り抜けるようにする。

適用アプローチ:

屋根をもうひとつ別の屋根の中に入れます。

解決策アイデア:

陸橋、橋、建物の床下など既存の構造物の下に駐車場を作る。あるいは地下に作ります。解決策アイデアのイメージ

発明原理8. つりあいの原理

  1. ある物体の重量を、揚力を持った別の物体と一体化させることによって相殺する。
  2. ある物体の重量を環境との相互作用(空力学、水力学、その他の力)によって相殺する。

適用アプローチ:

雪そのものあるいは屋根を何か揚力を持った持ったものと一体化させることによって雪の重さを相殺します。

解決策アイデア:

屋根を雪の重さを支える気球あるいは飛行船に結びつけます。解決策アイデアのイメージ

発明原理9. 事前反作用の原理

  1. 稼動しているときに生じる許容しがたい応力、または望ましくない応力と逆向きの応力を、物体に前もって加えておく。
  2. 課題の条件として何らかの作用を行わなくてはならない場合には、事前に反対の作用を行っておく。

適用アプローチ:

使われている状態でかかる力に反対向きの力を屋根の中に作り込むように考えなくてはなりません。

解決策アイデア:

屋根を複数の層から作ってその構造の中に屋根が使われている状態で雪の重さで生じる荷重に対抗する事前の応力を作りこんでおきます。

適用アプローチ:

屋根の中に事前の応力を作りこんでおいてその力を使って積もった雪を跳ね飛ばすことができるようにします。

解決策アイデア:

屋根をスプリングの力でピンと張る帆布(折りたたみ式ベットやトランポリンの要領)で作っておきます。雪が降る前に帆布の屋根の中央部分をロープで引いて床に固定しておきます。雪が積もったらロープの固定を解放します。スプリングの力で帆布の屋根が跳ね上がって雪を投げとばします。解決策アイデアのイメージ

発明原理10. 先取り作用の原理

  1. 物体に加える必要のある変更を事前に(全部、あるいは部分的に)実行しておく。
  2. 物体がもっとも都合のよい位置から、かつ、そこに持っていく時間をかけずに作用することができるように、その物体を事前にしかるべく配置しておく。

適用アプローチ:

降ってくる雪の量を前もって減らしておきます。

解決策アイデア:

大きな扇風機を使って降ってゆる雪を駐車場の外に吹き飛ばします。解決策アイデアのイメージ

発明原理11. 事前対策の原理

  • 物体の信頼性があまり高くない場合に、事前に応急手段を準備しておくことによって対処する。

適用アプローチ:

屋根の信頼性が低いということは屋根が壊れることを意味します。従って、屋根が壊れた場合に起きる結果に予め対策を講じておきます。

解決策アイデア:

屋根は平均的な負荷を想定して作っておいて、壊れた場合に備えて屋根の層をもうひとつ作っておきます。解決策アイデアのイメージ

発明原理12. 等位性の原理

  • 物体を上げたり下げたりする必要がないように、作業条件を変える。

適用アプローチ:

雪が屋根の上に降らないように、雪が雲から離れないようにします。

解決策アイデア:

雪雲をなくしてしまいます。あるいは、雪は他のところに降るようにします。解決策アイデアのイメージ

発明原理13. 逆(リバース)の原理

  1. 課題の条件によって求められる作用ではなく、その反対の作用を実行する。(たとえば、物体を冷やすかわりに熱する)。
  2. 物体(あるいはその外部環境)の動く部分を動かなくし、逆に、動かない部分を動くようにする。
  3. 物体を上下逆転させる。

適用アプローチ:

雪と屋根とがつくるシステムを逆にします。雪が屋根を支えるようにします。

解決策アイデア:

屋根を網状の構造にしてその網から密度を詰めて大量の糸を吊り下げておきます。雪は糸に張り付き、次いで雪の粒同士がくっついて自動的に下に落ちなくなります。解決策アイデアのイメージ

発明原理14. 直から曲への原理

  1. 物体の直線部分を曲線に、平面部分を球面に、立方体・直方体の形をしているものを球形構造に変化させる。
  2. 円筒、球、らせんを利用する。
  3. 回転運動に変える。遠心力を使う。

適用アプローチ:

平面の屋根を変えて曲面屋根にします。

解決策アイデア:

屋根を半球あるいはシリンダを2つに割った形のキューポラにします。これによって屋根の単位面積当たりの荷重が小さくなります。同時に雪が屋根から落ちやすくなります。

適用アプローチ:

屋根が回転するようにします。

解決策アイデア:

回転するディスクの形の屋根にします。回転による遠心力によって屋根から雪がふるい落とされるので屋根の荷重は小さくなります。同時に回転する力によって屋根に引っ張りの応力がかかるため、それが雪の重さによる荷重に対抗してくれます。解決策アイデアのイメージ

発明原理15. 可変性の原理

  1. 物体(または外部環境)の特性が、作業の各段階で最適な状態に変化するようにする。
  2. 物体を部分に分けて、各部分がお互いに対して位置を変えることができるようにする。
  3. 物体が全体として動かない場合には、動くように、移動するようにする。

適用アプローチ:

屋根が動くようにします。

解決策アイデア:

屋根を水平に移動するコンベアベルトにします。雪が降り始めたらコンベアベルトを動かし始めます。屋根に乗った雪は一方の端で下に落として処理します。解決策アイデアのイメージ

発明原理16. 部分的処理・過剰処理の原理

  • 必要な効果をちょうど100%得ることが難しい場合には、「ちょっと少なめ」または「ちょっと多め」の結果を得るようにする。こうすることによって課題ははるかに簡単になる。

適用アプローチ:

「ちょっと少なめ」ということは屋根は降った雪全ての重さを支えなくても良いようにするということを意味します。

解決策アイデア:

たくさん隙間が空いた屋根にします。これによって材料を節約することができます。屋根から少し雪が落ちるだけなら駐車場内の車の走行に深刻な問題は生じませんし、{路面に落ちた雪は}タイヤの圧力や排気ガスの熱で溶けてしまいます。解決策アイデアのイメージ

発明原理17. 他次元移行の原理

  1. 物体が線にそって運動(または移動)することに関連する問題は、その物体が2つの次元に(つまり面に沿って)位置を変えることができるようにすることによって解決できる。同様に、物体が面に沿って運動(または移動)することに関連する問題は、3次元の空間に移行することによって解決される。
  2. 単層の物体を多層構造にする。
  3. 物体を傾ける、または「横」にする。
  4. 面の裏側を利用する。
  5. 隣接する面、あるいは現在の反対側の面への投影を利用する。

適用アプローチ:

屋根を単一平面の層だけでなく上下に重なった複数の層から作ります。

解決策アイデア:

屋根を複数の層のネットとします。上下に重なるネットとネットとの間には少し距離をおきます。ネットの網目は上の方が粗く下に行くほど細かくします。降った雪は上のネットから少しずつ下に降りて行きます。こうして雪の重さは縦に重なったネットそれぞれに分散してかかるので1つの層あたりの荷重が小さくなります。解決策アイデアのイメージ

発明原理18. 機械的振動の原理

  1. 物体に揺れる動きをさせる。
  2. すでに揺れている場合には、振動の周波数を大きくする(場合によって、超音波レベルまで)。
  3. 共振周波数を使う。
  4. 機械的振動に替えて圧力振動を利用する。
  5. 超音波振動を電磁場と組み合わせて利用する。

適用アプローチ:

屋根に振動する動きを加えます。

解決策アイデア:

屋根が上下に振動するようにします。振動の動的な力が雪の重さを支えてくれます。また、これに加えて屋根を少し傾けておけば雪は少しずつ滑り落ちて行きます。解決策アイデアのイメージ

発明原理19. 周期的作用の原理

  1. 連続的作用を周期的作用(間欠的作用)に変化させる。
  2. すでに周期的な作用の場合は、周期を変化させる。
  3. 間欠的な作用の間の休止時間を利用して、ほかの作用を行う。

適用アプローチ:

屋根が雪の重さを一時的に支え、また、一時的に支えないようにします。屋根の上の雪は定期的に取り除かれます。定期的に清掃をおこなう装置を屋根の上に設置しなくてはなりません。

解決策アイデア:

屋根の上に気体で膨らませるクッションを設置して、定期的に急激にガスを吹き込みます。急激に膨らんだクッションが雪を跳ね飛ばし屋根の上を軽くします。解決策アイデアのイメージ

発明原理20. 有益作用連続化の原理

  1. 作業を絶え間なく行う(物体のすべての部分が、常に全力で作動する)
  2. アイドル時間や中間動作をなくす。

適用アプローチ:

この発明原理に従えば屋根は常に最大荷重を受けていなくてはなりません。しかし雪は時々降るものですからこの発明原理の考え方では荷重を追加しなくてはならないことになります。例えば、他の場所の雪を持ってきて載せることにすれば屋根を厚くすることの妥当性が生まれます。

解決策アイデア:

厚い屋根を作って雪の置き場にします。他の箇所の雪を持ってきて積み上げます。解決策アイデアのイメージ

発明原理21. 瞬時の作業の原理

  • あるプロセスの全体、またはそのいくつかのステップ(たとえば、有害なステップ、危険なステップ)を極めて早くおこなう。

適用アプローチ:

有害な作用は雪が屋根に荷重をかけることですから、雪をすばやく屋根から下さなくてはなりません。雪下ろしの作業は大変で場合によっては危険です。雪下ろしの作業を極めて早く行うことに着目して、屋根の雪を定期的に取り除きます。

解決策アイデア:

駐車場の屋根を開閉式にしておきます。駐車場の一部を順番に駐車禁止にしてその上の屋根を開いて雪を一気に床におとします。おとした雪は道路の雪を清掃する装置あるいはベルトコンベアで移動して融雪ステーションに運びます。解決策アイデアのイメージ

発明原理22. 毒を薬にの原理

  1. 有害な要因(特に、環境との間の有害な作用)を利用して肯定的な効果を得る。
  2. 有害な要因を、ほかの有害な要因と組み合わせることによって取り除く。
  3. 有害な要因を、結果としてもはや有害でない水準まで強くする。

適用アプローチ:

有害な要因は雪です。それを強くするということは雪の量を増やすことです。雪の量を増やして地面に届くまでにすれば雪が自分で自分の重さを支えることになります。

解決策アイデア:

円柱を逆さにして頂点を地面につけた形の屋根を作ります。円柱の中に溜まった雪は部分的に上の雪の荷重を支えることになります。解決策アイデアのイメージ

発明原理23. フィードバックの原理

  1. フィードバックを導入する。
  2. すでにフィードバックが使われているときには、フィードバックを変化させる。

適用アプローチ:

私たちのケースでフィードバックを考えたい関係として次のものがあります:「雪の量が多ければ多いだけ屋根の厚さは厚くしなくてはならない、あるいは、雪の量が多ければ多いだけ雪を早く取り除かなくてはならない。」以前に得られた傾いた屋根のアイデアを変形します。

解決策アイデア:

雪の量が多くなるとその荷重で屋根の傾きが大きくなるようにします。解決策アイデアのイメージ

発明原理24. 仲介者の原理

  1. 中間的存在を利用して作用を媒介あるいは伝達させる。
  2. 物体に、一時的に他の(簡単に取り外せる)ものを取り付ける。

適用アプローチ:

屋根が雪の荷重を支えるのを助けてくれるものと一時的に一体化させます。

解決策アイデア:

屋根の上に大量の雪が積もった時に一時的に支柱を追加して屋根を支えさせます。屋根の上の雪を取り除いたら支柱は取り去ります。解決策アイデアのイメージ

発明原理25. セルフサービスの原理

  1. 物体に自分に対する補助的作用、修理作用を実行させる。
  2. 廃棄物(エネルギー、物質)を利用する。

適用アプローチ:

屋根が自分で自分にサービスを提供しなくてはなりません。屋根は(課題の条件により)雪を通しませんから、提供しなくてはならないサービスとは雪を取り除くことになります。屋根から雪を取り除く仕組みを屋根につけなくてはなりません。できれば、雪そのものを利用してそれができることが望まれます。

解決策アイデア:

バネでできた板をウロコ状に並べて屋根を作ります。ウロコの上に雪が積もるにつれてバネが曲がって反発力が蓄積されます。限界に達するとバネが伸びて上に載った雪を屋根の外に跳ね飛ばします。解決策アイデアのイメージ

発明原理26. コピーの原理

  1. 手の届かない、複雑な、高価な、扱いにくい、壊れやすいなどの問題がある物体の代わりとして、その物体を簡便にした安価なコピーを利用する。
  2. ある物体、または複数の物体からなる仕組みをその光学的コピー(像)で置き換える。その際、サイズの変化(拡大、縮小)も利用する。
  3. すでに可視光のコピーが使われている場合には、赤外線または紫外線のコピーを使う。

適用アプローチ:

屋根の光学的コピーはホログラムです。ホログラムにはレーザー光を使います。レーザー光が十分に大きければそのようなレーザー光線の屋根が自分で雪を溶かしてしまいます。

解決策アイデア:

レーザー光線を照射して水平に「屋根」を作ります。レーザー光の出力を十分に大きくして降ってくる雪が溶けてしまうようにします。解決策アイデアのイメージ

発明原理27. 高コスト長寿命から低コスト短寿命へ

  • 高価な物体を安価な物体の集合に変更する。その際、何らかの特性(たとえば耐久性)を犠牲にする。

適用アプローチ:

屋根を一回限りの屋根にします。雪が降るごとに使い捨てとします。

解決策アイデア:

屋根の表面を絨毯のようにしてその上に雪が降るようにします。雪が降ったら絨毯を巻き取って融雪ステーションに持って行って溶かすか、暖かい季節までそのまま保管します。絨毯を巻き取った後には別の絨毯を敷きます。解決策アイデアのイメージ

発明原理28. 機械的構造の転換

  1. 機械的なシステムを光学的原理、音あるいは香りを利用したシステムに変化させる。
  2. 物体間の作用に電気、磁気、電磁場を利用する。
  3. 動きの無い作用を移動する作用に、常に一定の作用を時間によって変化する作用に、無作為な作用から一定の構造を持った作用に変化させる。
  4. エネルギー作用と強磁性粒子とを組み合わせて用いる。

適用アプローチ:

雪の荷重を支える力として静電気あるいは磁気の力を使います。

解決策アイデア:

屋根に降る前の雪を静電気で帯電させるかあるいは磁気を帯びさせるようにして、静電気あるいは磁力によって雪の重さを支える、あるいは、降ってくる軌道を変化させます。解決策アイデアのイメージ

発明原理29. 気体・液体の利用

  • 物体の固体部品(部分)の代わりに、気体または液体を利用する:気体・液体で満たされ、ふくらんだ部品、エアクッション、流体力学的効果。

適用アプローチ:

気体などで膨らませる構造を屋根に組み込みます。

解決策アイデア:

気体で膨らませるクッションのようなものによって屋根を作ります。この場合、雪の重さは基本的に気体が支えることになる一方、クッションの素材の膜にかかる荷重は張力のみでありかなり小さくなる。訳注1解決策アイデアのイメージ

発明原理30. 柔軟なカバー・薄膜の利用

  1. 通常の構造に代えて、柔軟な殻や薄膜を利用する。
  2. 物体を柔軟な殻や薄膜によって、外部環境から隔離する。

適用アプローチ:

当初の課題で屋根を厚さを持たない平面と想定したので、この発明原理に真っ向から取り組んでも新しいことは出てきません。したがって、状況を少し別の角度から捉えます。膜というのは必ずしも一体となった物質の膜ではなく、空気の膜と捉えることも可能です。

解決策アイデア:

屋根の表面全体にわたって空気を吹き出すノズルを設置します。雪はノズルから吹き出す空気の層の上に乗ることになり、さらに、ノズルの方向や屋根に傾きをつければ雪は屋根から横方向に吹き飛ばされます。解決策アイデアのイメージ

発明原理31. 多孔性材料の利用

  1. 物体を多孔性の材料で作る、あるいは多孔性の要素(インサート、カバーなど)を追加する。
  2. 物体がすでに多孔性になっている場合には、その穴のなかに事前に何らかの物質を入れておく。

適用アプローチ:

屋根は多孔性の構造となっていなくてはなりません。

解決策アイデア:

雪を通さないくらい細かい目でワイヤーネットを編んだものを屋根にします。材料の使用量を減らすことができます。

解決策アイデア2:

大粒の穴をもった多孔性の軽い素材で屋根を作ります。穴に入り込んだ雪が固まってがっしりとした構造体になります。解決策アイデアのイメージ

発明原理32. 色の差の原理

  1. 物体、あるいはその外部環境の着色を変更する。
  2. 物体、あるいはその外部環境の透明度を変更する。
  3. 見えにくい物体、または観察が難しいプロセスを観測するために、着色添加物を使用する。
  4. 着色添加物がすでに使われている場合には、トレーサ原子を使用する。

適用アプローチ:

屋根あるいは雪の色を変えます。

解決策アイデア:

降った雪に黒いインクをかけます。これによって日光の熱で雪の溶ける速度が早くなります。解決策アイデアのイメージ

発明原理33. 同質性の原理

  • 与えられた物体と反応してしまう物体は、始めの物体と同じ(または、よく似た特性をもった)材料で作る。

適用アプローチ:

屋根を雪で作らなくてはなりません。

解決策アイデア:

氷あるいはその冬初めて降った雪を使って屋根を作ります。あるいは、前もって屋根に製氷装置をつけておきます。解決策アイデアのイメージ

発明原理34. 廃棄と再生の原理

  1. 物体の一部ですでに役割を果たしたもの、あるいは不要になったものは、作業の過程で廃棄(溶解、揮発させるなどで)する、あるいは変化させる。
  2. 物体の消耗部分が、作業の過程でただちに再生されるようにする。

適用アプローチ:

屋根は雪が駐車場の雪に落ちないようにするという自分の機能を終えたら無くなってしまわなくてはなりません。ということは、屋根は雪と一緒に無くなってしまうことになります。この状況は連続的な流れを想起させます。

解決策アイデア:

傾いた屋根の上を暖かい水が流れるようにします。流れている水の上に降ってきた雪は水と一緒に流れていってしまいます。解決策アイデアのイメージ

発明原理35. 物体の物理的・化学的特性の変更

  1. 物体の集合状態を変化させる。
  2. 濃度や密度を変化させる。
  3. 柔軟性の程度を変化させる。
  4. 温度を変化させる。

適用アプローチ:

雪の集合状態を変化させます。

解決策アイデア:

屋根を温めてその上に積もった雪に熱を伝えます。雪は水に変わって自分で流れ落ちてしまいますので屋根にかかる荷重が小さくなります。解決策アイデアのイメージ

発明原理36. 相変化の利用

  • 相変化の際に生じる現象を利用する。たとえば、体積の変化、熱の発散または吸収など。

適用アプローチ:

長い間積もっている雪は徐々に硬く壊れにくくなります。屋根の強度を高めるためにこの現象を利用します。

解決策アイデア:

厚いアーチ形状の屋根を作り、上側には放射状の溝をつけておきます。降った雪は溝に入り込み、幾何学的な中心に近づくに従って強く圧縮されて外部からかかる圧縮荷重に耐えられるようになります。解決策アイデアのイメージ

発明原理37. 熱膨張の利用

  1. 材料の熱膨張(あるいは収縮)を利用する。
  2. 熱膨張がすでに利用されている場合には、膨張係数の異なる複数の材料を使用する。

適用アプローチ:

屋根の素材の熱膨張を屋根にかかる荷重の平均化に利用します。

解決策アイデア:

熱膨張係数の異なる2つの素材を使って屋根を2層に作ります。雪が降ると屋根の表面付近の温度分布が変化します。使われている素材の熱膨張係数に差があるため、温度分布の変化は屋根全体に応力を生じさせます。この応力を雪の重さに対抗する力として利用します。解決策アイデアのイメージ

発明原理38. 強い酸化剤の利用

  1. 空気中の酸素の濃度を高くする。
  2. 酸素濃度の高い空気を酸素そのものに置き換える。
  3. 空気または酸素を電離放射によってイオン化させる。
  4. オゾンの混じった酸素を使用する。
  5. オゾンの混じった(あるいはイオン化された)酸素をオゾンに置き換える。

この発明原理の主な目的は生じているプロセスの強さを増すことです。

適用アプローチ:

雪が溶けるプロセスを強めます。

解決策アイデア:

屋根の表面に雪を溶かすあるいは液状にする作用を持った化学品を供給します。解決策アイデアのイメージ

発明原理39. 不活性な環境の利用

  1. 通常の環境を不活性な環境に置き換える。
  2. 作用を真空状態で行う。

適用アプローチ:

「不活性」とは反応を起こさないということです。従って雪が屋根と反応しないようにしなくてはなりません。例えば、雪が屋根に全くあるいはほとんど張り付かないようにする、あるいは雪の比重を極めて小さくするなどが考えられます。雪を蒸気に変化させればこれが可能になります。

解決策アイデア:

雪が降ってきて屋根に触れたとたんに熱ヒーターあるいはマイクロ波発生装置によって蒸気に変化させます。解決策アイデアのイメージ

発明原理40. 複合材料の利用

  • 均一な材料を複合材料に置き換える。

解決策アイデア:

複合材料の素材で屋根を作ります。解決策アイデアのイメージ

{考察}訳注2

これまでに紹介したアイデアは基本的に2つのグループに分類することができます:

  • 屋根が荷重を支える能力を高めるアイデアのグループと、
  • 雪の荷重を軽減するアイデアのグループ

です。初めの段階で「雪を担うこと」と課題としていたら、2番目のグループの多くのアイデアは有効性が期待されるにもかかわらず得られなかっただろうという点に注意してください。

全ての発明原理が同じように有効な解決策アイデアに結びついたわけではなく、また幾つかの発明原理からは似通ったアイデアが生まれたことをはっきりと見てとることができます。発明原理を使った作業を最適化するために「技術的矛盾除去方法の適用表」{以下、一般的に用いられている「矛盾表」とします}が作られ、実際の矛盾を解決するためには全ての発明原理を使うのでなく特定のものだけを使うことが推奨されています。

矛盾表の助けを借りて発明原理を選ぶには、改良したい特性とその結果悪化してしまう特性という2つの特性を選ぶ必要があります。私たちもこれをすることとして、初めに規定しておいた技術的矛盾を思い出しましょう:

  • 屋根の厚さを厚くすると雪の重さを支えることができる、しかしコストが大変高くなってしまう。
  • 屋根の厚さを薄くするとコストを低くできる、しかし、雪の重さを支えきれず壊れてしまう。

ところが、アルトシューラの矛盾表の特性選択肢には「厚さ」とか「コスト」といった用語はありません。従って、検討している技術的な課題の性格を踏まえて、こうした用語の適切な代替となる特性を見つけなくてはなりません。すぐに気づくことは{矛盾表の特性のリストの中には}代替となりそうな特性の名前が複数考えられることです。こうした中から2つ検討してみましょう。

代替特性案 No.1

事前の分析で明らかになったように「コスト」の代わりとしては屋根に使用する「素材の量」が考えられます。矛盾表にはこの用語も見当たりませんが「動かないモノの体積」という特性があります。屋根を相対的に均一な構造と想定した場合には、素材の密度は一定と想定して、素材の重量を「動かないモノ(屋根)の体積」に置き換えることができます。

用語「厚さ」は一次元の大きさを表す特性ですから「動かないモノの長さ」に置き換えることができるかもしれません。

すると課題の条件によれば「動かないモノの長さ」を変化させなくてはならないが、その結果「動かないモノの体積」が悪化するということになります。矛盾表を使って発明原理を探すと3514が推奨されることになります。この発明原理を適用して得られるアイデアは上に示した通りです。

代替特性案 No.2

矛盾のうちの「屋根の厚さを薄くするとコストを低くできる、しかし、雪の重さを支えきれず壊れてしまう」という部分を検討しましょう。用語「厚さ」は上と同じに「動かないモノの長さ」に置き換えます。「重さを支える」という用語は「頑丈さ」で代替できるかもしれません。こうして、「動かないモノの長さ」(厚さ)を変えようとすると「頑丈さ」が悪化するとなります。しかし、矛盾表はこの矛盾に対する推奨発明原理を示唆していません訳注3。もう一度、用語を検討しなおさなくてはなりません。

「厚さ」という用語を矛盾表が指定する「何を変化させる必要があるか」という問いに対応させるために読み替え操作を何度か繰り返えすと「動かないモノの体積」で代替させることができそうです。興味深いのは直前の案ではこの用語は「何が悪化するか」の方で現れていたことです。結局、対立する特性のセットとしては「動かないモノの体積」を変えなくてはならないが、その際「頑丈さ」が悪化するとなって、推奨される発明原理は141715となります。

ここで推奨されている発明原理には案No.1で推奨されていたものは1つも含まれないことを容易に見てとれます。つまり、課題を矛盾表の用語にどのように対応させるかによって同一の矛盾について全く異なった発明原理が推奨されることがあるということになります。したがって、課題に現れてくる用語を矛盾表で使われている用語に置き換える作業は慎重に行い、間違いなく対応していると言えない場合には、できるだけたくさんのアイデアを得るには考えられる可能性を全て試してみる必要があります。実際には、これをやっていると結局全ての発明原理を検討することになりがちです。

全体の結果を次のようにまとめることができます:

  1. 技術的矛盾を解決するために推奨される発明原理は思考を活性化させて既知の技術の枠を超えることを目指すものです。
  2. 発明原理を用いることで得られる解決策アイデアの質は使う人の見識によっても、また根気強さによっても左右されます。
  3. 推奨される発明原理を矛盾表を使って選ぶ際には、使用者が実際の状況を矛盾表で使われている用語に読み替える技術にどれほど習熟しているかによって選択の妥当性が左右されます。
  4. 矛盾表でキーとして使われている(特性を表す)用語のリストは十分ではないかもしれません。矛盾表の拡張と現在の表で空欄となっている箇所を穴埋めする作業が求められます。

訳注:

:著者は一般論として曲げの応力よりも引っ張りの応力の方が対策を講じやすいと言いたいのではないかと思われます。

:この見出しは訳者が追加したものです。

:原文の著者の思い違いと思われます。矛盾表は発明原理15142826を推奨しています。よって、発明原理14は案No.1、案No.2に共通して推奨されていることになります。

原文
Токарев А.С.
Примеры применения приемов устранения технических противоречий.
http://www.metodolog.ru/00863/00863.html
(ただし、今回の翻訳にあたり、一部、著者による修正が加えられました)

———— END of this page, and copyright - TRIZ Juku - all rights reserved. ————

Menu
(HELP)