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この論文はThe Official G.Altshuller foundationの許可に基づいて掲載されたものです。(下記のURLはファウンデーションのサイトにリンクされています)
This paper was published with the permission of the Official G.Altshuller foundation
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G.S.アルトシューラ「技術的矛盾除去の模範的方法」
『発明のアルゴリズム』
モスクワ:労働者出版、1973年、pp.141-177
(Альтшуллер Г.С. — Основные приемы устранения технических противоречий при решении изобретательских задач.
— Алгоритм изобретения.
М.: Рабочий, 1973. с.141-177.)
この論文の著作権はThe Official G.Altshuller foundationにあります。
日本語の翻訳の著作権はサイト管理者にあります。
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G.S.アルトシューラ
模範的方法のリストは技術者が日常的に使う一種のハンドブックです。といっても、独特のハンドブックで、技術者はこのリストを基礎とし、新しい技術・特許に関する出版物を参考にして自分で補充してゆかなくてはなりません。
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訳注:一般的な日本語訳は英語からの再訳で「40の発明原理」とされています。ここではロシア語の語義に近い訳語をあてました。なお、模範的方法のリストには複数のバージョンがあります。アルトシューラ・ファウンデーションのサイトに掲載されている本バージョンはアルトシューラの初期の主著『発明のアルゴリズム』の1973年版に掲載されているものです。
例
USA特許No.2859791。12の独立したセクションで出来ているニューマチックタイヤ。
セクションに分けたのは信頼性を向上させるためです。しかし、それはこのように強力な方法を採用した唯一の理由というわけではまったくありません。分割は現代の技術品の進化に見られる主要な傾向の1つなのです。
追加の例
著作権証明No.168195。半円形のカッティング・エッジがついたエキスカベータのバケット。特異点:カッティング・エッジの交換時間を短縮し、作業を容易にするためにバケットからエッジ部分を取り外せるようにし、かつ、エッジ自体をセクションに分割してある。
著作権証明No.184219。鉱山での装薬による岩盤の連続破砕の方法。特異点:岩を細かく破砕するために装薬を小単位に分けて表層の連続破砕を行う
例
著作権証明No.153533。X線防護具。特異点:胸部などのX線撮影の際に患者の頭、肩帯、脊椎、脊髄、生殖腺を電離放射線から保護するためにX線不透過性の素材で作られた障壁と脊椎に対応した垂直の軸を備えている。
このアイデアが合理的なことは明らかです。
この発明は照射が最も有害な部分を取り出してその部分を覆っています。本件の申請は1962年に行われていますが、簡単で必要性のある発明ですから、これよりはるかに早い時期に申請されてもよかったものです。
私たちは様々な物体を捉える上で従来から一体として捉えられたお互いに引き離すことの出来ない部分のまとまりとして見ることに慣れてしまっています。例えばヘリコプターというまとまりには燃料タンクが含まれています。実際、普通のヘリコプターは燃料を運ばないわけにはゆきません。
しかし、決まったコースを飛行するヘリコプターでは燃料を地上に置いておくことも可能です。電動ヘリコプターでしたら、エンジンの替わりにモーターを使うわけですから燃料タンクは不要です。
著作権証明No.257301では<タンク>に相当するものが人間から取り外されています。(図9[訳注]参照)
図9
抽出の原理:以前、坑内の緊急救護隊員は冷却装置を背負って動き回っていましたが、現在は冷却装置は身につけるのではなく別置き式になっています。
訳注:図の番号は原文のママです(『発明のアルゴリズム』1973年版の図番です)
追加の例
鳥との衝突は大きな航空機事故につながることがあります。USAでは飛行場から鳥を追い払うために実に多様な方法が特許化されています(機械仕掛けのかかし、ナフタリンの散布、などなど)。最善の方法は驚いて鳴く鳥の声を録音しておいて大音量で放送することでした。
鳥から鳴き声を取り出すという解決策はもちろん普通ではありません。しかし、抽出の原理としては典型的な適用例です。
例
著作権証明No.256708。坑内の採掘場の粉塵を抑える方法。特異点:採掘場で発生した粉塵が換気の流れによって拡散することを抑えるため水を使って細かい霧を発生させることと通常サイズの水滴による散水とを併用する。その際、コーン状に発生させた霧の周囲を散水の水滴で覆うようにする。
著作権証明No.280328。米粒の乾燥法。特異点:米粒のひび割れを減らすために乾燥の前に米粒を大きさによって分別し、大きさごとに別の基準によって乾燥する。
部分的性質の原理は多くの機械の進化の歴史に明らかに反映されています。機械は徐々に部分に分かれてゆき、各部分に最適の部分的状態が形成されてきました。
最初の蒸気機関はシリンダーだけで、それがボイラーとコンデンサーの役割も果たしていました。シリンダーの中に直接水を入れます。火を使ってシリンダーを熱すると水が沸騰し、蒸気がピストンを押し上げます。その後で火床を取り除き、シリンダーに冷水を撒きます。蒸気が凝結して、大気の圧力によってピストンが下がります。
後の発明家が蒸気機関のシリンダーからボイラーを分離することを思いつきました。これによって燃料の消費量が大きく減りました。
しかし、ボイラーで作られた蒸気は相変わらずシリンダーの中で凝結させていて、これが燃料の膨大な浪費につながっていました。次の一歩が必要です。シリンダーからコンデンサーを分離させるのです。
このアイデアを提起し実行に移したのはジェイムス・ワットです。彼は次のように話しています:
問題についてあらゆる観点から検討した結果、私は次の結論に到達しました―完全な蒸気機関を作るためにはシリンダーは常に入ってくる蒸気と同じ高温に保たれていなくてはならない。しかし、真空を作るために行う蒸気の凝結は30度以下の温度で行わなくてはならない―
グラスゴー近郊でのことでした。私は半日程散歩に出かけました。素晴らしい天気でした。蒸気機関について考えながら、旧い洗濯屋の傍らを通ってゲルダの家に近づいたとき、頭に考えが浮かびました。蒸気は流動性のある物体なのだから何も無い所に向かって流れようとする。シリンダーと空気を薄くした容器との間に道をつけてやれば、蒸気はその容器に流れてゆく。そうすればシリンダーを冷やす必要は無くなる。ホフハウスに行きつく前に私の頭の中ではすべて決着がついていたのです。
『厳密な学としての創造性』、1979、p.85、ではこの方法を次のように規定しています:
各種の機械は生まれた時には対称形です。これが機械というものの伝統的な形なのです。このため、対称形であることに関連して難しくなっている問題の多くは、対称形を崩すことによって解決できるものです。
例
2つの口金の位置をずらした万力。通常のものと異なり、長尺の部品を縦方向に固定することが可能です。
自動車の2つの前照灯は全く同一の条件で役割を果たしているわけではありません。助手席側は明るく遠くを照らすことが必要ですが、運転席側は対向車の運転者の眼をくらませないように配慮が必要です。条件が異なっているのに長い間左右の前照灯に全く同じものが取り付けられていました。左右の前照灯を非対称にするアイデアが採用されたのは比較的最近のことです。運転席側は25m程度先の道を照らしますが、助手席側はこれよりずっと遠くを照らすようになっています。
USA特許No.3435875。非対称形のタイヤ。一方の側のサイドウォールの強度と歩道の縁石と接触した場合の耐性とを高くしてある。
著作権証明No.242325。固体原料を側面から投入する鋳鉄溶解用電気炉。特異点:連続溶解を可能とするために底面が非対称に形作られ、原料投入口に向かって深く、広くなっている。(図10)
図10
非対称の原理:電気炉の電極。原料を連続して投入できるように、投入口に近いところに空間が出来るように中央から外れた位置に電極が取り付けられている。
例 著作権証明No.235547。ローターとアームのあるロータリー・エキスカベータ。特異点:凍土の掘削の負荷を軽減するするために、土を加熱するバーナーが設置されている。バーナーは、例えば、 ローターの両側の側面に取り付ける。(図11)
図11
組み合わせの原理:ロータリー・エキスカベータで作業を行う際に、従来はあらかじめ凍土を加熱するためにエキスカベータを止める必要があった。エキスカベータのローターそのものにバーナーを取り付けた。
著作権証明No.134155。沈没船内の空気だまりに取り残された人々を救出するために用いる潜水装置。特異点:潜水士による救出作業を容易にするために、潜水具は1つあるいは2つの潜水ヘルメットあるいはマスクとなっていて潜水士の潜水服に接続して空気を取り入れるためのホース並びにカップリングが取り付けられている。(図12)
図12
組み合わせの原理が使われているもう1つの例
例
日本では石油精製能力をもったタンカーの建設が計画されています。これにより、輸送中に原油の精製を行うことが可能になります。
著作権証明No.160100。タバコの葉などの原料を乾燥機まで水の流れによって運ぶ搬送装置。特異点:搬送中に葉を洗浄しまた色を定着させるために80−85℃に熱した水を使って搬送する。
著作権証明No.264466。誘電体基盤に円筒形の薄膜を作りその上に記憶媒体を形成する。特異点:記憶媒体の構造を簡素化するために薄膜自体に書き込み読み取り出来る機能を持たせる。
例
著作権証明No.186781。半波長単位の部品をつなぎ合わせて作る超音波凝縮装置。特異点:装置の長さを短くし、かつ、強度を得るために半波長分の部品を円筒形に作り、お互いに入れ子にする。(図13)
図13
入れ子の原理:コンパクトな超音波凝縮装置。1と2は円筒になっている。
著作権証明No.110596。粘度の異なる複数の石油製品を水に浮かべるフローティング容器内で保管・搬送する方法。特異点:粘度の高い製品の温度を低下させずに保管するために、フローティング容器中の粘度の高い製品を入れるセクションを、粘度の低い製品を入れるセクションの中に入れ子で配置する。
著作権証明No.272705。タンクと左右の計量スクリューからなる施肥装置。特異点:施肥を行う幅を調整するために左右の計量スクリューはそれぞれ2つの部分に分かれて2つが入れ子になるようになっている。(図14)
図14
もう1つの<入れ子>:左右の計量スクリューの間の幅を調整するために、つなぎ目を入れ子にする構造にしてある。
例
著作権証明No.187700。油井掘削時に発射・爆破装置を降ろしたり引き上げたりする方法。特異点:発射作業、爆破作業の単コストを下げ、容易にするために、装置を降ろす際には自重によって自由落下するようにし、地上に挙げる際には装置に組み付けたジェットエンジンの力で上げるようにする。
巨大な発電用タービンを作った際にベアリングにかかるローターの荷重を最小限に引き下げることが検討されました。ローターに強力な電磁石を組み込んで磁力によって荷重を相殺するという解決策が発見されました。
時によって、求められるのが逆の課題ということがあります。重量の不足を補う課題です。坑内で使用する電気機関車を開発する際には明らかな矛盾に直面します。牽引力を大きくするためには機関車の自重を大きくする必要があります。しかし、列車の総重量を減らすためには機関車をできるだけ軽くしなくてはなりません。レニングラード鉱山大学のグループはこの技術的矛盾を取り除き、機関車の生産性を1.5倍引き上げる装置を開発し稼働を成功させました。動輪に強力な電磁石を取り付けて車輪とレールとを結びつける磁場を発生させるのです。車輪とレール間のグリップは大幅に向上する一方で、機関車の重量はむしろ小さくなりました。
『厳密な学としての創造性』、1979、p.86、ではこの方法を次のように規定しています:
事前反作用の原理
例
著作権証明No.84355。タービンのディスクは加熱した半加工素材の段階でパレットに乗せて回転させます。加熱された素材は冷えるに従って縮小します。しかし(まだ展性を失っていない内は)回転による遠心力によって素材はプレスによって引き延ばすような力を受けます。十分に冷えると、素材の中に縮もうとする応力が生じます。
プレストレス・コンクリートの技術は全てこの原理に基づくものです。引き延ばしの応力の下でコンクリートが良い性能を示すようにあらかじめ引き固めておくわけです。これは建設産業において機械産業よりも進んだ方法が使用されている唯一の例というわけではまったくありません。機械産業で事前応力の仕組みが使用されている例はまだ極めてまれです。とはいえ、この原理を応用することによって膨大な成果が得られる可能性があります。
外径を大きくしないでシャフトを頑丈にするにはどうしたら良いでしょうか。これに対する回答は図15に示されています。シフトは何本ものパイプを重ねて組み合わせた構造になっていますが、それぞれのパイプには規定の角度だけねじりが加えられています。別の言い方をすると、シャフトはそれが実際に使用される時に被る変形と反対向きの変形を予め加えられていることになります。使用時に外部から加わる力は、まず、事前に加えられている変形を打ち消し、そこから初めてシャフトに対して<普通の状態で>加えることになる変形の力をかけはじめるわけです。コンポジットシャフトの重量は同じ強度の通常の均一素材のシャフトに比べて半分です。
図15
事前応力の原理:コンポジットシャフトを形作っているパイプはシャフトが使用される時に生じる変形と逆の向きに予めねじられてあります。
『厳密な学としての創造性』、1979、p.86、ではこの方法の名前は次のようになっています:
先取り作用の原理
例
著作権証明No.61056。様々な果樹などで枝を地面にさす挿し木を行いますが、多くが枝に養分が十分に蓄えられていない理由によって根付きません。当該の発明では、挿し木をする枝を事前に養分を含む液につけて養分を補給した上で挿し木を行います。
著作権証明No.162919。ワイヤーソーを用いてギプスを取り外す方法.特異点:ギプスの取り外しの際に患者が傷つくことを避け、また、取り外しを容易にするために、ギプスを付ける際に予め適当な潤滑剤で潤滑を施したポリエチレン製などのパイプを予めギプスの包帯の下に入れておく。パイプにワイヤーソーを入れて身体の側から外に向かってギプスを切ってゆくことが出来るので、身体に傷をつける心配がない。
この原理が使用されている面白い例。木を伐採する前に行う木質への着色。着色料は皮の下に沁み込み、樹液によって幹全体に運ばれます。
例
著作権証明No.264626。添加剤を用いて化学化合物の毒性作用を低下させる方法。特異点:化学品および化学品の変化によって発生する物質による毒害の危険を低減させるために、当初の化学品を生産する際に添加剤を加えておく。
著作権証明No.297361。植物による遮断帯を設けて森林火災の広がりを避ける方法。特異点:遮断帯をつくる植物の耐火性を高めるために植物の燃焼を遅らせる物質を、生物学的に生じさせる、あるいは化学品として、土壌に含ませるようにする。
USA特許No.2879821。自動車のタイヤに硬い金属ディスクを組み込んでおき、タイヤがパンクした際にトレッドを傷つけずに走行を続けることができるようにする。
事前対策の原理は信頼性向上以外の目的でも利用することができます。原理の特徴を示す例として次のものがあります。米国の図書館で図書の紛失が頻発することに関連して、発明家エマニュエル・トリキリスは本の装丁の中に磁気を帯びた金属片を隠しておくことを発案しました。貸し出しの際には図書館員が図書を専用の装置(電気の巻き線)にかざして金属片の磁気を消去します。来館者が手続きをしないで本を持ち出そうとすると入り口に設置した磁気感応装置が帯磁した金属片に反応します。
スイスの山岳救助ステーションではクレバスに落ちた人を早期に発見するために同様の方法を用いています。現在ではスキー客やクレバスの多い地域の住人は小さな磁石を身につけています。事故発生時には3メートルの積雪があっても検知装置が磁石を検知するので遭難者の発見が容易になります。
例
著作権証明No.264769。プレス金型の交換装置。この装置ではプレス機械のテーブルに組み付けた回転するリングに金型を取り付けるようになっている。
著作権証明No.110661。コンテナを荷台に載せず、油圧装置で持ち上げて支持ブラケットに固定するタイプのコンテナ運搬車。この車はクレーンを必要とせず、また、通常より背の高いコンテナを運搬することができる。
例
著作権証明No.184649。研磨性環境における振動による金属製品の 研磨。特異点:研磨作業を容易にするために金属製品を振動させて研磨のための振動を発生させる。
著作権証明No.109942。この発明は肉厚の薄い大物部品を鋳造によってつくることに伴う重要な問題を解決している。こうした部品の鋳造では湯は上から鋳型に注入し硬化は下から上に積上ってゆくことが望ましい。湯は上部から雨が降るように鋳型に流し込まれることになるが、投入時の落差は15cm以内でなくてはならない。これを越えると湯の金属が燃焼してしまう、あるいは、金属にガスが混入することになる。それでは、鋳型の高さが2−3mある場合にはどうすればよいか。鋳型の下側から湯を注入するとはじめに入れた湯がその場で硬化してしまい、鋳型の上まで上がってゆかない。
発明家はこの問題を簡単な方法で見事に解決しています:湯はパイプによって鋳型の底に流し込まれます。底に湯が溜まるに従って鋳型が下がってゆくようにします。こうすることによって、湯はそこで金属が硬化する高さに次々と流し込まれることになります。
図16
逆の原理:鋳型に湯を注入する通常のやりかたと異なり、鋳型の方が動きます。鋳型に注入される湯の方は注入された位置から移動しません。
鋳物をつくる際には、いつでも金属の方が動く一方で、鋳型の方は固定されています。上の例ではこれが全て反対になっています。鋳型の方が動いて、そこの注入された金属は動きません。これによって「両立不可能なことを両立させている」―鋳型に湯を安定して注入することと、金属が下から順に硬化してゆくことと―雨が降るように湯を鋳型に注入する場合と同じように。
例
ドイツ連邦特許No.1085073。パイプを溶接して格子を作る装置。金属の小さな球を回転させて、それがエレクトロードの役割を果たす。
著作権証明No.262045。岩盤破砕用電極を備えたトンネル掘削機の作業機。特異点:硬い岩盤を破砕する効率を高めるために、破砕用電極は絶縁された軸の回りを自由に回転するくさび形のプーリーの形に作られている。
著作権証明No.260874。摩耗したタイヤのトレッドなどのゴムからコードのワイヤーを分離する方法。トレッドを炭化水素中に保持すること、高圧の液体の流れでそのトレッドを加工すること、ワイヤーを機械的にすき取ること、それを切断することを含む。特異点:効率を向上させるためにトレッドの加工はゴムの分子間の結合が弱くなるスピードで回転させながら行う。
『厳密な学としての創造性』、1979、p.87、ではこの方法に次の細目が含まれています:
c. 物体が全体として動かない場合には、動くように、移動するようにする。
例
著作権証明No.317390。水泳用のゴム製ひれ足。特異点:泳ぐ早さ、距離に応じた泳ぎ方に対応させてひれ先の硬さを調節できるように、ひれの内側に縦方向の空洞が作られ、その中は安定性が高く圧力によって体積が変化しない液体で充填されている。液体にかける圧力は必要に応じて陸上あるいは水中で変化させることができる。
著作権証明No.161247。船体が円筒形をした貨物船。特異点:満載した際の喫水を浅くすることが可能なように、船体は2つの半円筒で出来ていて、間はヒンジで連結されて開け閉めができるようになっている。
ソ連特許No.174748。メーンフレームが球形ヒンジでつながれた2つの部分で出来ていて、油圧シリンダによってフレーム同士を回転させることができる。こうような自動車は高い走行性能をもつ。
著作権証明No.162580。中に導電性の油脂を詰めたパイプの束となっているケーブルの製造方法。パイプに予め物質を入れておいて、それをまとめてケーブルを作るが、パイプに入っている物質はケーブルの完成後取り除くことになる。工程を容易にするためにパイプに入れる物質はパラフィンとする。ケーブル製造後はパラフィンを溶かしてパイプから流しだせば良い。
例
著作権証明No.181897。薬品(例えばヨウ化銀)を用いて雹を発生させる雲を結晶化させる雹害対策法。特異点:薬品の消費、散布コストを削減するために雲全体に散布せず、雹粒の大きい局部的な部分に限定して散布を行う。
著作権証明No.262333。タンクと計量機構を備えた金属粉末の計量装置。特異点:計量機構に安定した量の粉末が供給されるようにするため、タンクの内部に粉末取り込み用ロートと電磁ポンプの力で粉末をロートに(過剰気味に)供給する搬送機構が組み込まれている。(図17参照)
図17
過剰処理の原理:パイプ1から粉末が安定した量で供給されるようにするために、ロート2には過剰な量が供給されるようにしておく。過剰な量はタンク3にこぼれ落ちて、ロート2は常に縁まで一杯に粉末が入っていることになる。
例
著作権証明No.150938。半導体ダイオード。特異点:ダイオードの容量を増加させるために、半導体プレートの径を増加させずにpn接合と抵抗接点とを立体形状に成型する。面接合から立体接合に移行することによって従来と同じサイズのダイオードで半導体プレートの接合面を拡大することが可能となり、これによりpn接合から得られる容量が増加する。
油井掘削用のビットの改良に長期間取り組んだ有名なソ連の発明家D.キセリョフは自著『設計者の探索』の中で次のように語っています。「ビットにもベアリングにもそれぞれ決まった許容荷重というものがあります。ですから、それぞれ数を増やすことができれば、一個当たりにかかる荷重が減少して稼働条件が改善され摩耗を減少させることができます。私はまさにこの観点から考えて、ベアリングの配置の仕方を様々検討していたのです。しかし、ビットのサイズ、必要な数のボールやローラーを配置することのできる空間が小さいことが障害になっていました。私は今突然解決策を発見したのです。解決策はそこにあるのです。2層に設置することによって決まった面積の中に置けるベアリングの<要素>の数を増やすことが可能なのです。寝台車に入れられる人や荷物と同じことです。私は笑い出してしまいました。何ヶ月もむなしく捜していた解決策はこんなに簡単なことだったのです。
著作権証明No.180555。水平トンネルの鉱山におけるトロッコの入れ替え自動化法。特異点:屋根や入れ替え線を廃止し、空の車両を必要に応じて90度回転させて荷を積んだ列車の上を通して運ぶ。
著作権証明No.259449。磁気テープ式欠陥検出装置。特異点:連続使用時間を延長するためにエンドレステープの両面に磁性体を塗布しメビウスの輪を形成させる。
著作権証明No.244783。年間を通じて野菜栽培を行う温室。特異点:太陽光線による植物への照射環境を改善するために北側に凹型反射面を持ったスクリーンを設置する。
例
著作権証明No.220380。フラックス層のもとでエレクトロードを低周波振動させて行う異種あるいは同種金属の振動アーク溶接法。特異点:溶接品質を向上させる目的で低周波振動に重ねて超音波による例えば20キロヘルツ程度の高周波振動をかける。
著作権証明No.307896。ノコギリを使用せず、体積を変化させる用具を使って行う木材切断法。特異点:用具を木材に入れる際に必要な力を小さくするために切断される木材の固有振動数に近い振動インパルスをもった用具を使用する。
USA特許No.3239283。静止摩擦は精密機械の感度を大きく低下させ、針、振り子などの動く部品がベアリングの中でスムースに動くことを妨げる。これを避けるために、ベアリングを振動させ、装置の部品が相互の間で常に揺れ動くようにする。この振動の原動力としてはしばしば電動モーターが使用される。これに伴って、装置の動きは相当程度複雑化し、また、重量も増加する。アメリカの発明家ジョン・ブローズとウィリアム・ラウベンドルファーは新しいベアリングを開発した。このベアリングのブッシュは圧電材料で作られ、両側が導電性のフォイルで覆われている。フォイルには電極が溶接されていてそこに交流電流を流すことによって振動を生じさせる。
著作権証明No.244272。磁場を使って空気中の埃をしずめる方法。特異点:空気に音波振動と磁場とを同時に加える。
例
著作権証明No.267772。アール溶接の状態を観察するために照明で照らす方法は知られている。しかし、照明によって固体および融けた金属はよく見えるようになるが、プラズマガス状のアークが見えにくくなってしまう(明らかに技術的矛盾です)。新たなアイデアの特異点:照明の明るさをゼロからアークの明るさ以上まで定期的に変動させる。これによって、アークそのもののと、エレクトロードの溶解や固化した金属の状態の観察とを両立させることができる。
著作権証明No.302622。加熱により熱電対に異常および起電力の有無を検査する方法。特異点:検査時間を短縮するために熱電対にパルス電流を流して加熱し、パルスとパルスとの間に熱による起電の有無を確認する。
例
著作権証明No.126440。油井の掘削に2セットの掘削パイプを用いる方法。2−3本の油井を同時に掘削する際にはそれぞれ独立して使用する複数のシャフトと2つの掘削パイプを用いる。掘削パイプは摩耗したビットを交換するために定期的に上げ下げするが、一本で掘削している間にもう一本のビットを交換する。
著作権証明No.268926。船舶による砂糖原料の輸送法。特異点:空の航行を利用して輸送コストを低減するためにタンカーを使用する。石油製品などの液体貨物を降ろした後で内部を片付け、洗剤で処理した後に砂糖原料を積む。
例
著作権証明No.241484。ガス流のもとで行う金属素材の急速加熱法。特異点:生産性の向上と脱炭の減少のため、ガスが素材に接する全工程を通じてガス流の速度を秒速200m以上とする。
著作権証明No.112889。甲板積載式木材運搬船は専用装置を用いて船体を傾斜させて荷下ろしを行う。全ての木材を水中に落とすには船体を大きく傾ける必要があるがこれには危険を伴う。本件の提案は船体を傾ける角度は小さくし、ただし急激に傾けることによって動的な力が生じ、小さな傾き角にもかかわらずこの力によって木材は落ちてしまう。
ドイツ連邦特許No.1134821。プラクチック製の大径で肉の薄いパイプを切断する方法。装置の特徴。パイプが変形する余裕が無いまでにカッターが早く動いて切断する。
例
ソ連科学アカデミー準会員のP.バラグジンは「学者の道」(『レニングラード・アルマニャック』、1953年、No.5)という文のなかで次のことを書いています。彼は1920年代に高周波電流を金属の加熱に使うことに取り組みました。実験の結果高周波電流では金属は表面しか加熱されないことが判りました。高周波を素材の深いところまで「追い立てる」ことはどうしても出来なかったので、実験は中止されました。その後、バラグジンはこの「否定的現象」を活用しようとしなかったことを何度も悔いることになりました。高周波を金属の焼き入れ(表面処理)に使うことは、このアイデアが実際に取り上げられるよりも何年も以前に可能だったはずなのです。
もう一人の優れた発明家の運命は、電気火花の金属加工への活用によって、これと異なるように展開しました。
B.R.ラザレンコとI.N.ラザレンコは金属の電食という問題と戦っていました。リレーの接点のところで電流が金属を<食べて>しまうのですが、これに対する対策がどうにもうまくゆかないのです。硬合金を使っても超硬合金を使っても良い結果を得ることができません。研究者達はコンタクトを様々な液体に浸けてみましたが、破壊が一層促進されるだけでした。
2人はあるときこの「否定的な現象」をどこかで有効に活用できることに気づきました。研究は違う方向に向かうことになったのです。彼らは1943年に金属の放電加工技術によって著作権証明を得ることになりました。
著作権証明No.142511。図18はジョー・クラッシャーの2つの部品の接合部を示しています。接点は鋳鉄でできた球形となっているため動かすことができます。部品の先端の頚部はこの構造の弱点です。通常この箇所が破損します。もちろん破損を防止する対策を講じることは可能です。しかし、この箇所をわざと<破損させ>たらどうでしょうか。すると接点は円筒形のブッシュに変化します。こうなるともう<破損>させることは不可能です(図18)。
図18
毒を薬にの原理
著作権証明No.152492。地中に埋設したケーブルを霜柱によって地割れが生ずることによって発生する損傷から保護するために、前もってケーブル埋設個所の両側に狭い溝(地割れ)を掘っておきます(図19)。
図19
埋設ケーブルを霜による地割れから保護する人工的<地割れ>、つまり溝
この原理自体は簡単なものです。許し難いことを許さなくてはならない、そういった場合もあるのです。この点で発明家の思考はしばしば心理的障害に出会うことになるのです。
例
著作権証明No.283997。冷却塔の中では空気の流れに渦が生まれてこれによって水の冷やせる深さが浅くなってしまうことがある。冷却効率を高くするために、塔内の複数の箇所に温度センサーを設置し、水温の状態に応じて冷却塔に入れる水の量を調節する。
著作権証明No.167229。コンベアの自動起動装置。特異点:コンベアモーターの起動時の電力を節約するために、コンベアが稼働時にモーターによって求められる電力を測定し、その出力をコンベア停止時に固定し、また、コンベアが起動する時にコンベア上の物質の重量に比例するシグナルを起動用モーターに伝達する。
著作権証明No.239245。製品取り出し口の温度と圧力に応じて還流分の量を調整することによる蒸留塔を使った精製プロセスの自動調節法。特異点:3つの要素からなる混合物の組成を安定させるために、取り出し口の製品の比重に基づく補正を追加する。
『厳密な学としての創造性』、1979、p.89、ではこの方法は次のように規定されています:
例
著作権証明No.177436。溶融金属に電流を流す方法。特異点:電流損失を減少させるために目的の金属に流す電流を、他の溶融金属を経由することによって冷却した電極によって供給する。中間に入れる金属は目的の金属よりも融点が低く、密度と沸点が高いものを用いる。
著作権証明No.178005。大気による腐食から保護したい表面に揮発性の阻害剤を塗布する方法。特異点:複雑な形状をした内側の表面に均一に塗布するために、熱した空気を阻害剤で飽和させて吹き付ける。
例
著作権証明No.178005。内側を耐摩耗性プレートで内張りしたショットブラスト装置。特異点:内張りの耐久性を高めるためにプレートを磁石にして表面にショットの保護膜が形成されるようにしてある。稼働中にショットが装置の内側の面に当たることがあるが、それによって表面のショット層は常に更新される。
著作権証明No.307584。灌漑用水路を組み立て式の部材を使って作る方法。特異点:水路が一部完成した後に次の部材の輸送を容易にするために、部材の側面を一時的にシートで包んでおく。完成した部分に水を入れると、シートで覆われた次の部材は組み立て位置まで水路に浮かべて運んで来ることができる。
著作権証明No.108625。半導体ダイオードの冷却法。特異点:ヒートバランスを改善するために反動耐熱伝素子を使うが、素子に供給する電流はダイオードを流れる同じ電流の回路に組み入れる。
例
著作権証明No.86560。アートパネルの表面に描かれた測量術の実物教材。特異点:パネルを使って画像に描かれた地域の測量を行うために、画像はトータルステーションによる測量データに従って描かれていて、地域の中の代表的な箇所には小さな測量用ロッドが置かれている。
時として物理的に両立させることが出来ない2つの物体を(測定や検査のために)両立させなくてはならない場合があります。このような場合には工学的コピーを利用することが適切です。X線写真を立体的に読み取る問題はこの方法で解決されました。通常のX線写真では身体の表面からどれだけ深いところに病原があるのか判断することは出来ません。ステレオ写真を撮れば立体映像を得ることができますが、それでも目測で深さを読み取ることしかできません。身体の中には物差しは置いてないのです。ですから<両立できないもの―照射を受けた人の身体と物差し―を両立させる>ことが必要なのです。
ノヴォシビリスクの発明家F.I.アクショーノフは光学的併置法を用いてこの問題を解決しました。アクショーノフの方法はX線ステレオ写真の立体映像を立体格子の立体映像と重ね合わせることです。医師は立体的寸法を表している格子が患者の身体の中にある様子を見ることになります。
一般的に言って多くの場合、物体そのものを操作するよりも物体の光学的コピーを扱う方が有利です。カナダのクルーター・ポールという会社では鉄道で輸送される木材の写真による秤量法を使っています。同社の資料によれば写真による秤量の早さは手作業の50−60倍で、秤量結果を正確に計算した場合と比較した誤差は1−2%以内です。
著作権証明No.180829。立体的な部品の中の空洞表面の検査法。部品の内側に光を反射しにくい液体を入れ、少しずつ水位を変化させてはその状態を一枚のフィルムに重ね撮りしてゆきます。写真には同心円のような線が写ることになります。この写真をスライドなどで拡大して図面に基づく理論的な線と比較すると、極めて正確に部品の形状の誤差を判定することができます。
例
無菌のルールでは注射針の付いた注射器の煮沸は45分以上行うことになっています。一方で、多くの場合薬品の投与は出来るだけ急いで行わなくてはなりません。全ソ連邦医療機器装置研究所では使い捨てパイプ注射器を開発しました。プラスチック製で肉厚の薄い容器で首には消毒済みの針がついていてキャップでカバーされています。パイプ注射器の胴には工場で薬品が充填され密閉されています。このような注射器ならばほんの数秒で使うことができます。必要なのは針を覆っているキャップを取るだけです。注射すると胴の中の薬品が投薬され、その後使ったパイプ注射器は廃棄されます。
USA特許No.3430629。吸い取り紙のような詰め物の入った使い捨ておむつ。
同種の特許は多数あります:使い捨て温度計、ゴミ袋、歯ブラシなど。
例
著作権証明No.163559。土工ツール、例えばボーリング機械のビット、の摩耗管理法。特異点:管理を容易にするため摩耗のシグナルとしてビットの中にエタンチオールなどの強いにおいを持った化学品を入れたアンプルを組み込んでおく。
著作権証明No.154459。摩耗しないボルト・セット(図20)。セットはネジみぞ2にコイルが巻かれているボルト1と、ネジみぞにコイル4が巻かれているナット3からなる。ボルトとナットとの間にはすきまが作ってある。ナットは工作機械または装置の駆動部に固定されている。コイル2と4に電流が流れると周囲に磁場が発生する。磁場によるロックはボルト、ナットそれぞれ独立して生じる。なお、ボルトとナットとのコイルが同じ位置にある時に磁束は最大となる。
ボルトが回転するとボルトとナットとにそれぞれ巻かれたコイルの巻き位置が相対的にずれた磁束線にゆがみが発生する。その結果、コイルの巻き位置同士の関係を当初の状態に戻そうとする応力が生じる。この応力がナットとそれに固定された駆動部品、装置を動かせる。
図20
このボルトセットでは電磁場の働きによってナットは摩擦なしに動く
ボルトとナットとの間にすきまがあることによってボルトセットの寿命は大幅に延びるため、実質的に無摩耗部品と考えられます。
「ある工場で芸術的に精密な加工をしました。研磨加工により直径0.5mmの穴の壁を研磨したのです。
この加工のためにごく直径0.2mmの小さい工具を作りダイアモンドの粉末をまぶしました。
工具は空気タービンで秒速1000回転で動きます。工具は穴の周囲を1分間に150回廻ります。作業者には加工箇所を見ることができません。工具がいつ部品に触れたか判りません。このため、下降時間が長過ぎたり、短すぎたりします。どちらの場合でも部品は不良品になってしまいます。
専用の自動加工機を設計するところまでゆきました。しかし、ある発明家が簡単な解決法を発見しました。部品を加工機から絶縁し、電池の一方の極を部品に、他方を加工機に繋げます。この回路をアンプとスピーカーにつなげます。こんどは工具が部品と接触するとスピーカーが<叫びます>。この叫ぶ加工機の出す音によって、研磨がいつ始まったかと、研磨の状況―音調が変化することで―とを判断することが可能です。」
著作権証明No.154459。移動する触媒を使って、触媒反応などのプロセスを行う方法。特異点:適用範囲を広くするために移動する磁場を作り、触媒に磁性を持たせる。
著作権証明No.144500。表面放熱による熱交換器の管状部品の熱交換性能の向上。特異点:放熱効率を向上させるために、熱を持った物体の流れに強磁性体粒子を混ぜて、回転磁場によって主に交換機の壁に近い部分で動かして、流れを乱したり流速の変化を生じさせる。
フランス特許No.1499276。ドラムタンブリングや振動タンブリングで部品を処理した後は部品と研磨製コンパウンドとを分ける作業がある。部品が大きい場合はこの作業は容易である。磁性のある部品の場合は磁石を使って分けることができる。しかし、部品に磁性が無く、大きさがコンパウンドの粒子と替わらない場合はどうするか。この発明ではコンパウンドに磁性を持たせることによって解決する。研磨性粒子と切り子などの強磁性粒子とをプレスで固める、あるいは焼結、あるいは?磨性粒子の中の空洞に強磁性粒子をつめるなどの方法がある。
例
図21
巨大な煙突に代わって隙間の空いた構造を使う。中空のらせんの巻の部分にノズルをつけそこから圧搾空気を吹き出し煙突の<壁>を形成させる。
著作権証明No.243809。発明の目的:排気送風量の改善と排気拡散高度の増加。煙突の胴を円錐状のらせんをなすパイプ1で作り、その巻き部分にノズル2をつけ、中空の支柱3に固定する。支柱の末端はコンプレッサー4につながれている。
コンプレッサー4を始動させると、圧力をかけられた空気が支柱3の空洞を通って胴のらせんの巻き部分に流れてゆき、ノズルから吹き出される。これによって、空気の<壁>が形成される。
著作権証明No.312630。サイズの大きい物体を噴霧式で塗装し、吸引ベンチレータで溶媒・ペンキの排気を行う方法。特異点:塗装に必要な面積を減らす目的で、塗装する物体の周囲をその物体より高い位置まで空気のカーテンで取り囲み、屋外吸引ベンチレータを使って最上部に渦巻きを形成させる。
この発明はその前のものと同じ矛盾を克服しています。パイプ形状の固体の物体に代わって空気の壁を使うという、解決策が似通っているのはそのためです。
著作権証明No.244675。球状のタンクを乗せる土台のある支柱。特異点:タンクの外殻に対する圧力を下げるためにタンクの土台は弾力のある素材で作られ、タンクの外殻の形状に沿った凹面形のふたを持ち、内部を液体で満たされた容器でできている。
これと双子のように似ているもう1つの発明。著作権証明No.243177。やぐらの支柱から土台に荷重を伝える仕組み。特異点:荷重が土台に均一にかかるようにするために、この装置は平らで漏れないように密封されている液体入り容器となっている。
「AがBに対して均等に圧力をかけるようにする必要があるとすれば、AとBとの間に液体のクッションを入れなさい。」全く同じタイプの解決策に対してあと幾つ著作権証明が発行されるのか興味深いことです。
例
アメリカの研究者は、植物が葉からの蒸発によって水分を失うことを防ぐために、葉にポリエチレンの<雨>をかけることを行っています。葉の上にはごく薄いポリエチレンの膜が形成されます。こうしてポリエチレンの<毛布>にくるまれても、植物は生きてゆくことが可能です。これは、ポリエチレンの膜が酸素や炭酸ガスを水よりもはるかに容易に通すためです。
著作権証明No.312826。液液抽出(分液)法。特異点:物質移動を促進するために一方の層液体を固体表面に沿ったフィルムによって移動させられる他方の層の表面上の気体層を通して流すようにする。
機械はいつでも稠密な(貫通できない)材料で作られてきました。中空の材料を使うことによって容易に解決可能な問題でも、思考の慣性からしばしば全ての構成要素や構造を稠密なままにして、特別な装置やシステムを新たに導入することによって解決しようとしてしまいます。ところが、細胞に始まって人体に及ぶまでの例にみるように、高度に有機的な機械では貫通可能であることがつきものです。
内部で物質を移動させることは多くの機械に備わっている重要な機能の1つです。<大まかな>機械ではこの機能をパイプ、ポンプなどをつかって実現しますが、<繊細な>機械では多孔性の物質と分子間力をつかって実現します。
例
著作権証明No.262092。容器の中に入っている製品からでる固体や粘着性の粒子の沈殿から容器の内側表面を保護する方法。特異点:表面の保護性能を改善し多孔性材料で作られた容器内のエネルギー消費をおさえるために、沈殿を生じない液体を容器内の圧力より大きい圧力によって容器の壁を通して押し出す。
著作権証明No.283264。耐火性素材を利用して溶融金属に添加物を加える方法。特異点:添加物を加える条件を改善するために多孔性の耐火素材に予め添加物を含ませておいて、それを溶融金属の中に沈める。
著作権証明No.187135。モーターを蒸発熱によって冷却する仕組み。特異点:モーターの個々の構造要素を多孔性の材料、例えば多孔性の粉末鋼、で作り液状の冷却剤をしみ込ませておく。モーターが動き始めると冷却剤が蒸発して短時間で高性能でかつ均一にモーターを冷却する。
例
金属工場の鍛造ショップや鋳造ショップでは作業者を熱から守る必要のある箇所ではどこでもウォーターカーテンが使われています。ウォーターカーテンは眼に見えない(赤外線の)照射から作業者を守ってくれますが、溶融金属が発する眼もくらむ程明るい照射はウォーターカーテンの薄い水の膜をほとんど妨げられること無く透過してしまいます。ポーランドの労働安全研究所の研究員はこの照射から作業者を守るためにウォーターカーテンの水に着色するアイデアを提案しました。着色されたウォーターカーテンは依然として透明ですが、熱の照射は全く透さず、可視光のエネルギーを必要な水準まで弱くしてくれます。
著作権証明No.165645。写真の定着液に着色剤を混入させる。着色剤は感光層に可逆的に浸透するが写真の台紙やセルロイドに色をつけることはない。定着処理後の水洗の際に着色剤は感光層から洗い流されるが、その速度はチオ硫酸ナトリウムが洗い流される速度と同じかそれよりやや早い。写真の画像に着色剤の色が残っているか否かが、水洗が完全に出来たかどうかを示しすので、現像作業が効率化された。
例
ドイツ連邦特許No.957599。溶融金属の中に設置した音波発生装置からでる音波あるいは超音波によってその溶融金属に作用を加える鋳造用の樋。特異点:音波発生装置のうち溶融金属と直接接触する部分は作用を与える金属と同じ金属、あるいはその金属の合金要素によって作る。その部分は溶融金属によって部分的に溶かされるが、音波発生装置の他の部分は強制冷却を行い影響損傷を受けない。
著作権証明No.234800。冷却を要するすべり軸受の潤滑法。特異点:高温における潤滑性能を改善するために、軸受のライナーと素材と同じ素材を潤滑物質として使用する。
著作権証明No.180340。気体から溶融した粒子の塵を取り除く気体浄化法。特異点:浄化性能を改善するため、気体を塵となっている粒子が溶液中で化合を行うのと同じ媒体のなかに吹き込む。
著作権証明No.259298。溶接したいキャップ部を母材との間に少し間隔を明けて置き、そこに挿入する素材を入れた後にキャップ部を加熱して接合する異種金属溶接法。特異点:溶接品質を改善するために挿入する素材として溶接する2つの金属の合金を用いる。
例
USA特許No.3174550。航空機が緊急着陸した場合に特殊な化学品の反応によって燃料が泡状で不燃性の状態に変化する。
USA特許No.3160950。ロケット発射時のショックで精密な部品が損傷を受けないように発泡物質の中に設置し、発泡物質はクッションとしての役割を果たした後に宇宙で揮発してしまう。
この原理は可変性の原理が更に展開したものだということは容易に見てとることができると思います。作用プロセスの最中に物体が変化します。しかも、大きく変化します。航空機が飛行中に翼の形を変化させる、これは可変性の原理です。ロケットが飛行中に燃焼の終わった一段目、二段目を捨てる、これが廃棄の原理です。
以下は類似の発明です。
著作権証明No.222322。ネジ式のマイクロスプリングの製造方法。特異点:作業効率を改善するためにスプリングを弾性の素材をで出来た心棒に巻いて所定の位置にはめ込む。その際、設置箇所に弾性素材を溶かす成分を入れておく。
著作権証明No.235979。ゴム製の球形セパレータ((2種類の液体をパイプを通して移動させる時に2つの液体が混じらないようにする))の製造方法。特異点:ゴムを求めるサイズの球にするためにチョークを細かく砕いて水に混ぜて固めたものを心にする。ゴムを硫化させた後はゴムに針を通して中に液体を入れチョークを溶かして取り除く。
著作権証明No.159783。形鋼製造法。特異点:形鋼圧延機で様々なサイズと形状の形鋼を作るために粉末マグネサイトなどの耐火性素材を中につめて圧延を行い、つめたものを後に取り除く。
同じような発明は何百とあります。その度に同じアイデアを<ゼロから>捜して技術者がどれほど時間を無駄にしてきたのか想像することもできません。すべて基本は同じ方法です。「心型Bを使って物体Aを作りなさい。出来たらBは液体に溶かす、揮発させる、溶解する、化学反応を起こさせるなどして取り除きなさい。」
廃棄の原理の反対が再生の原理です。
著作権証明No.182492。通電性の素材の放電加工の際に加工に用いる非成形電極の損耗への対処法。特異点:加工用電極の寿命を延長するために加工の際に電極の作用表面に間断なく金属粉を吹き付ける。
著作権証明No.212672。?磨性物質を含む酸性のスラリーをパイプ輸送するとパイプの内面が短期間で摩耗してしまう。パイプの内張を保護することは難しく、手間がかかり、またパイプの外径が太くなることに無っって仕舞う。本方法によるパイプの保護法ではパイプの内壁に保護層を形成させる。このためは、輸送される液体に定期的に石灰溶液を混入させる。これによって、パイプの内壁は常に保護されるようになる一方で、形成された保護層は常に?磨性物質によって削り取られるためパイプの内径の減少は大きくはならない。
例
著作権証明No.265068。気体と粘性の液体との分離法。特異点:分離プロセスを促進するために粘性の液体を装置に入れる前に予め気化させる。
著作権証明No.222781。化学肥料、毒性化学品などの飛散しやすい物質の計量供給装置。供給口の開いたカバーに入ったらせんネジの形態をしている。特異点:供給ピッチを変更できるようにらせんネジの表面は弾性素材で作られていて、その内側にはらせんの小径部、大径部それぞれにらせんバネが入っている(図22)。
図22
飛散性物質の計量供給装置のらせんネジはバネが入った弾性素材で作られています。そのため、ピッチを調整することが可能です。
例
著作権証明No.190855。波形パイプの製造法。密封したパイプに高圧水で圧力をかけて作る。特異点:プロセスのコストを削減し、加工時間を短縮するために、圧力をかけるために使用する水を凍らせる。
「方法36は方法35のa.(物体の集合状態の変化)、方法15(可変性の原理)と何が違うのか。」という疑問が生じるかもしれません。35のaは物体が集合状態Aに替わって集合状態Bをとり、そのことによって必要な結果を得ることを意味しています。
方法15の主旨は私たちがある時は状態Aに特有の特性を利用し、ある時には状態Bに特有の特性を利用するということです。
方法36を利用する場合は、状態Aから状態Bへまたはその逆に変化することに伴う現象によって問題が解決されます。
著作権証明No.225851。液体の冷媒が閉回路を周回することによって様々な物体を冷却する方法。特異点:使用する冷媒の量と、エネルギー消費を減らすために、冷媒の一部を固体に変えて得られる混合物によって冷却する。
<相変化>は<集合状態の変化>よりも広い概念です。相変化には、例えば、物質の結晶構造の変化も含まれます。例えば錫は白色錫(比重7.31)となることも、灰色錫(比重5.75)となることもあります。18度で生じる変化には体積の大幅な増加が伴います(これは、水が凍る時の変化よりはるかに大幅な増加です;したがってこの変化から得られる力も遥かに大きいのです)。
多形(ポリモルフィズム。同じ組成の化学物質に多くの結晶形が存在すること)は多くの物質が特性として持っています。多形の結晶変化に伴う現象は非常に多くの発明問題を解決するために利用できます。例えば、USA特許No.3156974ではビスマスとセリウムの多形変異を利用しています。
例
著作権証明No.309758。心棒を固定して行うパイプの冷間引抜き加工法。特異点:引抜き後パイプから心棒を抜き出すのにあたってロールにかける必要が無いようにパイプと心棒との間にすきまをつくる目的で、引抜き加工に先立って例えば50−100度に加熱した心棒を使って常温のパイプを引抜く。心棒の抜き出しはパイプと心棒の温度が同一になってから行う。
著作権証明No.312642。種々の素材から同心多層ブッシュの形に成型する熱間鍛造のワーク。特異点:多層ブッシュの各層の間に応力が存在するようにするために、各層ごとに外側に来る素材の熱膨張係数がその内側のものより大きいようにする。
この方法の主旨はマクロレベルの<大まかな>動きから分子レベルでの<繊細な>動きへと移行することにあります。熱膨張によって大きな力や圧力を得ることができます。熱膨張は物体の動きを非常に正確に<調整する>ことを可能にします。
著作権証明No.242127。種結晶のついた支持結晶基盤などの作用体を精密に移動させる装置。特異点:この装置は、出来るだけなめらかに動かすことができるように規定のプログラムによって電気的に加熱・冷却され、熱絶縁チャンバーのサポートに固定されている2つの軸をもっている。
これらの一連の方法の目的はプロセスを激しくすることにあります。粒子状物質の焼結と燃焼の際に酸素濃度を高くした空気を吹き込んで燃焼過程を激化させる方法を例としてあげることができます。ステンレススチールのプラズマアーク切断の際には切断用のガスとして純酸素が用いられます。精錬を行う原材料とするために、イオン化した酸化剤と気体燃料とを用いて鉱石を凝集させるプロセスを激化させます。
これは直前の方法の逆を行う方法といえます。
例
USA特許No.3553820。アルミニウムを基材としタンタル・カーボンファイバーで多層に強化した軽く、頑丈で溶解しにくい製品。この製品は弾性が高いことが特徴であり、空・海艦隊の艦船の材料として用いられる。
著作権証明No.147225。微細な磁性粒子を含むインキを使う筆記法。通常のインキと違い磁性インキは磁場によって制御することができる。
複合材料とは複数の素材によって構成されている材料ですが、どの構成要素も単独では持たない特性をもっています。例えば、方法31が取り上げている多孔性材料は固体と空気とによって構成されています。その構成要素の固体も、空気もどちらも単独では多孔性材料が持つ特性はもっていません。
複合材料は自然の力によって発明され、広範に利用されています。木材はセルロースとリグニンとの複合です。セルロースの繊維は破断にたいしては極めて強いのですが、簡単に折れ曲がってしまいます。リグニンは沢山のセルロースを結び合わせて一体にし、同時に、硬さを与えています。
簡単に溶かすことの出来る物質(例えば仏像の合金)と融けにくい物質の繊維(例えば鋼)とを組み合わせは面白い複合材料です。こうした材料は溶かすことが容易ですが、一旦固まると大きな強度を持ちます。はんだの粒子と繊維とが相互に拡散し合う過程が徐々に進展して、結果として熱によって溶けやすい合金が出来てきます。
もう1つの複合材料はオイルにシリコンの粒子を入れた懸濁液です。電流を流すことによって固化させることができます。
ソース:
G.S.アルトシューラ『発明のアルゴリズム』、モスクワ、労働者出版、1973、pp.141-177.
(Альтшуллер Г.С., Алгоритм изобретения, Москва: Рабочий, 1973, с.141-177.)