MATRIZの歴史

国際TRIZ協会の創設と発展

　国際TRIZ協会 (MATRIZ) は1997年、G.S. アルトシューラによって設立されました。国際社会においてTRIZが調和の取れた発展をとげることが目的でした。現在ではロシアにおいても世界全体でも、最も広く認知されたTRIZ専門家の団体となりました。MATRIZにはロシア、USA、EU、アジア、オーストラリア（「各地のTRIZ協会」のページをご覧ください）で68の団体が登録しています。MATRIZは1970年代から90年代までのTRIZ発展の歴史のうえに設立されました。

１．TRIZ団体設立のための基盤整備

　1960年代の初めから、G.S. アルトシューラはソ連におけるTRIZコミュニティのまとめ役でありリーダーでした。70年代には、彼は発明方法研究所 (ОЛМИ) およびアゼルバイジャン発明創造学校 (АзОИИТ) を設立します。この種の学校はソ連邦のほかの都市、レニングラード｛現サンクト=ペテルブルグ｝、ペトロザヴォーツク、ドニプロペトロウシク、チェリャビンスク、キシニョフ、クラスノヤルスク、モスクワ、ミンスク、オブニンスク、などにも設立されました。70年代から80年代にかけては、ソ連邦全体を対象としたTRIZに関するセミナーや大会が、ノボシビルスク、ミアス、モスクワなどの都市で定期的に開催されるようになりました。中でもペトロザヴォーツクでは、1980年、1982年、1985年、1987年、1989年と、TRIZの大会が最も数多く開催されました。これらの大会では単にTRIZの方法体系が形作られただけでなく、TRIZコミュニティもまた、こうした大会を通じて形成されたのです。

　こうして、80年代の末には、ソ連邦におけるTRIZ団体設立の基盤——専門家集団、学校、研究チーム、情報センター（初めはモスクワ、後にチェリャビンスク）、セミナー、大会——はすでに形成されていたのです。このようにコミュニティが拡大すると、組織・団体間の調整が必要となります。そこで1988年にTRIZアドバイザーの制度がつくられました。G.S. アルトシューラは1988年4月、「TRIZガイド '88」および「TRIZおよびTRTL｛創造的人格形成理論｝アドバイザーについて」と題された書簡の中でアドバイザーのリストを公表しています。この書簡の中で彼は「アドバイザーには無償のボランティアとして働いてもらいます。彼らが経験をつんだ一年後には、アドバイザーの地位を見直すことができるでしょう」と書いています。その結果として一年後に設立されたのがTRIZ協会でした。

２．TRIZ協会 — TRIZ団体を公的組織へ

　1989年、TRIZの定期総会がペトロザヴォーツクで開催されました。ソ連邦の50の都市とフィンランドのトゥルク市のTRIZ団体の代表が参加したこの総会はTRIZ協会の基本方針策定会議となりました。139名の人々が、この作業に参加し、G.S. アルトシューラが協会の会長に選出されます。理事会メンバーも同時に選出されましたが、その中には『TRIZジャーナル』の編集者や、チェリャビンスク地区総合学術図書館 (ЧОУНБ) の中に設置された情報アーカイブの責任者も含まれていました。『TRIZジャーナル』はTRIZ協会の機関誌となりました。

　1990年にアルトシューラはTRIZ協会の協力を得て、バクーからペトロザヴォーツクに移り住みました。1991年には、TRIZ協会理事会の拠点もノヴォシビルスク（V.S. ラードシュキン方）からペトロザヴォーツク（A.B. セリューツキー方）へと移され、同時に法人の登録地もカレリア共和国に移されました。

　TRIZ諸団体の中で最も活動的であったメンバーがTRIZ協会の設立および発展の基礎を築いたのです。

　TRIZ協会が活動をしていた期間にはアルトシューラの参加を得て、4回の会合と4回の総会がペトロザヴォーツクで開催されました（1991年、1993年、1995年、1997年）。そのほかにも、協会はトレーニングセミナーを開催し、定期的に情報通信を配布したほか、チェリャビンスク地区総合学術図書館内の情報アーカイブもさらに充実させました。『TRIZジャーナル』は1990年から1997年までの間に15回発行されました（1992年、TRIZ協会理事会はTRIZジャーナル編集部を母体として、この雑誌の発行を確実に行うために株式会社「プロートヴァ＝プリン」の設立を決定しました。詳細については1992年発行の『TRIZジャーナル』#3.2.92をご覧ください）。

３．TRIZ協会を母体に国際TRIZ協会を設立

　1992年よりTRIZ協会は国際TRIZ協会設立へむけての作業を開始しました。1992年11月17日から19日まで、ペトロザヴォーツクでTRIZ協会理事会の会合が開かれました。そこで以下のことが決定されました：「T.L. クラーショヴァを責任者として、可能な限り早くTRIZ協会を国際組織として登録することを目指す。この目的のために、クラーショヴァは外国から必要な情報をすべて集めること」。この決定を念頭に1992年以降、TRIZジャーナルでは「TRIZ協会」と「国際TRIZ協会」の二つの名前が用いられるようになりました。

　1993年から1994年にかけて、TRIZ協会は会長との間で国際TRIZ協会の定款や登録手続きについてやり取りを重ねました；定款の複数の試案や入会契約の書式、国際TRIZ協会の登録書類の草稿など、多くの書類が作成されました。この間、法制の変化やTRIZ協会の組織、幹部の人事に変更があったことにより膨大な作業が必要となり、その結果、国際TRIZ協会が国際組織として正式に登録されたのは1999年のことでした。

　TRIZ協会は後に国際TRIZ協会が行うことになる多くの活動——認定制度や磁気メディアによるTRIZ関係資料の集積などなど——への道を切り拓いたのです。

４．「国際TRIZ協会」 — 「TRIZ協会」の後継組織

　TRIZ協会ではその組織の変革が強く求められるようになったため、その第五回会合において国際TRIZ協会の設立が決定されます。1997年9月、G.S. アルトシューラはTRIZ協会の全会員に向けた手紙の中で次のように書いています：「複雑な法的問題を解決すべき時がきました。TRIZ協会第五回会合（1997年7月11日、ペトロザヴォーツク）において OO MA TRIZ（非営利法人「国際TRIZ協会」）が、新しいロシアの法律に沿って設立されることになりました」。続けてアルトシューラは組織の構成や国際TRIZ協会の活動の基本方針を説明しています。各地方の組織が再編のための時間を得られるよう、しばらくの間は国際TRIZ協会とTRIZ協会を並存させることが計画されていました。その間に多くの国際TRIZ協会の地方組織が設立されたのです（例えば、非営利法人「TRIZカレリア」の設立議事録〔1997年7月2日〕をご参照ください）。G.S. アルトシューラはまた、組織の日々の活動を確実に進めるためにTRIZ協会の事務局長を任命しました。

　国際TRIZ協会会長G.S. アルトシューラは地方組織の発展に向けた努力を続けました。彼はこの件については、1997年12月の手紙で説明しています。1998年2月には、アルトシューラは14の地方組織が設立されたことを紹介し、国際TRIZ協会の活動、とりわけ国際TRIZ協会としての資格認定やTRIZマスター認定を活発化させるよう指示を与えています。

　当時アルトシューラがどのような活動を行っていたかを知るための資料は豊富にあります。例えば1998年2月21日には、彼はV.V. ミトロファーノフのTRIZマスター認定を承認し認定証を渡していますが、そのために彼が使用したのはTRIZ協会のレターヘッドでした。同時に彼は国際TRIZ協会を代表してミトロファーノフを心から祝福する手紙を送っています（1998年2月）。このことから、この時期に彼がTRIZ協会と国際TRIZ協会の双方の代表として活動していたことは明らかです。1998年3月に彼は国際TRIZ協会の会長として講習会のプログラムを採択しています。同年5月にアルトシューラは地方組織の育成が進んでいることを書き記すと同時に、国際TRIZ協会の資格認定やTRIZマスター認定についての詳細な指示も行っています。亡くなる直前の9月にも、アルトシューラは国際TRIZ協会の代表として最後の手紙を準備していました。この手紙の中で彼は、国際TRIZ協会の資格認定・TRIZマスター認定の内容についてさらに詳細に記述し、TRIZマスターの候補者リストも作成しています。この手紙は多くの人に配布するようV.N. ジュラーヴレヴァに託されました。TRIZマスター認定証はすべて国際TRIZ協会のレターヘッドに印刷され、G.S. アルトシューラと国際TRIZ協会事務局のL.D. コマルチョーヴァが署名しています。

　1998年9月、アルトシューラの弟子たちはペトロザヴォーツクに集まり、最後のお別れをしました。彼らはアルトシューラの始めた事業を受け継ぎ、彼の記憶を心に刻むことを誓いました。国際TRIZ協会はアルトシューラの誕生日である10月15日を国際TRIZデーと定め、現在でも毎年お祝いをしています。国際TRIZ協会の公的な登録作業も進められ（1998-1999議事録）、その結果1999年9月16日、国際TRIZ協会（MATRIZ）はロシア連邦法務省に正式に登録されました。

　1999年には、TRIZ協会から国際TRIZ協会へ知的その他すべての資産を移管することに関する一般協定が調印されました。

　国際TRIZ協会は常に、アルトシューラの業績を引き継いだ人々との敬意のこもった関係を維持するために最大限の努力を払ってきました。2003年には国際TRIZ協会はアルトシューラの業績の後継者の方々とともに、『アイデア発見』と題されたG.S. アルトシューラの著作を刊行しました。

　また、同2003年、ペトロザヴォーツクのアルトシューラの旧宅に、彼を記念するプレートが設置されました。

　国際TRIZ協会のスタッフもまた、国際TRIZ協会がTRIZ協会を受け継いだ証となっています。そのことは、TRIZの調和のとれた発展を促す国際TRIZ協会の活動に役立っています。現在、世界においてTRIZの発展させていくために必要な組織と権威を持つ公的団体はほかにはありません。

５．MATRIZの現在

（準備中）

M. ルビン

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